「損失関数/許容差設計」とは、キーワードからわかりやすく解説
1. 「損失関数/許容差設計」とは
損失関数は、設計の狙い値からの差異の二乗に比例して品質コストが上昇するという考え方です。 従前は品質第一と言いながら、近年は強いコストダウン要求によって信頼性が損なわれて発生した問題もあります。 損失関数を活用することによってばらつきや品質を金額換算する事が可能になり、合理的な許容差(仕様)を容易に設定することが可能となります。
2. 「許容差設計」の目的
パラメータ設計は低コストの部品を使って、SN比で機能性や品質特性を改善する手法ですが、品質改善の目的はコスト改善ですから、品質とコストをバランスさせて、品質改善の効果をコストに還元することが最も大切です。
もしパラメータ設計でSN比を 6db改善できれば、ばらつき(標準偏差や劣化係数)が 4倍の低コスト部品や材料を使っても、製品のばらつきは変わらないことになるのです。この場合、半分の 3dbを品質改善に、残り半分の3dbを部品や材料コストの改善に回すことによって、製品の価格を半分にすることができます。許容差設計は、「品質改善の成果をコスト改善に還元させる手法」でもあるのです。
3. 品質改善の成果をコスト改善に還元するプロセス
許容差設計は、製品やプロセスの品質を向上させるために、部品や要素の寸法や特性に対して許容される範囲(許容差)を設定する手法です。この手法は、製品の性能や信頼性を確保しつつ、製造コストを最適化することを目的としています。具体的には、以下のようなプロセスで「品質改善の成果をコスト改善に還元」することができます。
- 品質の向上・・・許容差を適切に設定することで、製品のばらつきを減少させ、品質を向上させます。例えば、部品の寸法が厳密に管理されることで、組み立て時の不具合が減り、製品の信頼性が向上します。
- コストの削減・・・品質が向上すると、製品の不良率が低下し、再加工や返品のコストが削減されます。また、製品の寿命が延びることで、顧客満足度が向上し、リピート購入につながる可能性もあります。
- 効率的な製造・・・許容差設計により、製造プロセスが最適化され、無駄な工程や材料の使用が減ります。これにより、製造コストが削減され、効率的な生産が実現します。
- 市場競争力の向上・・・高品質な製品を提供することで、企業のブランド価値が向上し、市場での競争力が強化されます。これにより、売上が増加し、結果的にコスト改善につながります。
このように、許容差設計は品質とコストのバランスを取るための重要な手法であり、企業にとって持続的な成長を支える要素となります。
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