「MTシステム」とは、キーワードからわかりやすく解説
1. 「MTシステム」とは
MTシステムは、品質工学の長い歴史の中で最も新しい分野で、まだ十分に普及したとは言い難い状態です。 その中身も、マハラノビスの距離を使って標準グループとの遊離度を1変数に集約して判定するMT法、その多重共線問題を解決するために編み出されたMTA/MTS法、多変量のSN比と感度を使って目的特性を予測するT法と矢継ぎ早に提案されたため、分かりにくい点がありました。 画像処理等膨大なデータの判定にも有効ですが、パラメータ設計の実験前に既存のデータから有効な因子に「あたり」をつける時など、威力を発揮します。MTシステムは人間が認識したり予測したりする脳の処理を、コンピュータにさせる技術です。認識や予測の技術は、これまでにも多くの提案や実施例がありますが、MTシステムは企業が現場で活用するには、もってこいの技術です。
2. 「MTシステム」の役割
- (1)無言の計測値にものを言わせる・・・温度、圧力、回転数、振動などの計測値は、そのままでは“無言”の数値です。何を言っているかの情報を引き出す必要があります。
- (2)「次の手」を提示する・・・何を言っているかが分かったら「次にどんな手を打つべきか」を分かる形で提示する必要があります。製品がおかしいのであれば、次の工程に流さない。工程がズレはじめているのであれば、おかしい箇所を見つけて修正を促します。
3. 「MTシステム」の目的
「MTシステム」の目的は、職人技に並ぶことです。職人の五感と判断力および予測能力にコンピュータが並ぶのは、AIでも不可能でしょう。計測項目も計測方法もわからないからです。しかし、工業製品の場合は、ものづくりがパターン化されていること、センサーの精度が人間の感覚より優れることもあります。ということは、総合的に人を超える場合もあるでしょう。熟練者の経験を、そのままMTシステムで置き換えたといういくつかの実績もあります。
職人技に近づくためには、実に気の遠くなる数の実験が必要になります。決めるべき条件項目を組み合わせると、すぐに何万通りになり、途方にくれます。しかし、何万通りは不要です。田口先生によって36通りに簡潔にまとめる方法が用意されています。数理から求められる規則性を利用します。
登山は「どのルートを選ぶか」によって費やすエネルギーが違います。道具立ても大切です。やみくもはダメです。田口先生は、最短で確実に目的を達成する考え方や道具立てを用意してくれました。何万通りの実験を、数十通りで済ませる方法も提案されています。
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