IEとは?生産管理におけるIE活用のメリットやポイントを解説

 

日本のものづくりは、チームワーク、勤勉性、高度な教育、生産技術力の蓄積などの強みがある一方で、バリューチェーン全体を通じた革新的な企画・設計力や海外市場ニーズへの対応力が弱く、部分最適になりやすい傾向があります。生産の最適化に限定された古典的IEから、バリューチェーン全体の価値を最大限に引き出す新しいIEに進化して、それを担う人材も育成していく必要があります。ここでは、IEとは?生産管理におけるIE活用のメリットやポイントを解説します。

1. IE(インダストリアル・エンジニアリング)とは

IE(Industrial Engineering)とは、1912年に米国テーラーが発表した「科学的管理法」に端を発し、それまで勘と経験で設定していた生産管理、工程管理を論理的に構築し、作業のむだ、むり、むらを除去し、生産性を上げる手法です。後者はさらにテイラー流の作業測定とギルブレイス流の方法研究に分かれます。日本語では「生産工学」などと呼ばれており、今でも、トヨタの生産方式の現場や多くの工場で使われています。

通常は「アイー」とか、そのまま「インダストリアルエンジニアリング」と呼んでいます。「IE」は、無駄のない最善の方法を作り出すための手法です。「生産性向上」と「原価低減」をおこなうことができます。「工程管理」には、必要な知識です。

◆ IE活動とは

IEの手法を使って改善する活動の事を「IE活動」と呼びます。顧客が要望している「性能・品質」の製品や商品・サービスを、最善のコストで、決められた納期までに完成させる必要があります。

設備、作業、レイアウト、管理、運搬、作業工程などを配置や能率、流れ、方法、順序などのデータをIE手法を利用して、科学的に把握を行い、分析することで能率向上の原則、5W1Hに「HowMuch」を加算した「5W2H法」などによって、ロスや無駄を発見したり、最善な方法を検討し改善、能率の向上・維持を行ったりとトータル的な改善を組織として取り組む活動のことです。

 

2. IE手法の種類

(1)工程分析

工程分析は、製造プロセスや業務プロセスを細かく分析し、その中で行われる作業や手順を詳細に把握する手法です。この手法を使うことで、作業の効率化や生産性向上のための改善点を見つけることができます。

(2)動作分析

動作分析は、作業者が行う具体的な動作や動作の流れを観察し、分析する手法です。作業者の動作を詳細に把握することで、無駄な動作や負担の大きい動作を特定し、改善策を考えることができます。

(3)時間分析

時間分析は、作業やプロセスにかかる時間を詳細に計測し、分析する手法です。作業やプロセスの各段階でかかる時間を把握することで、作業のスケジュールや生産性向上のための改善点を見つけることができます。

これらの手法を組み合わせて使用することで、効率的な生産プロセスや業務プロセスの改善が可能となります。

 

3. IEのメリット

IEには、次のようなメリットがあり、このことは、IEの重要性を示しています。

(1) プロセスの効率化

IEは、生産プロセスを分析し、改善点を見つけることで、作業の流れをスムーズにし、無駄を削減します。これにより、作業時間や手間を最適化し、生産性を向上させます。

(2) 生産性の向上

効率化されたプロセスにより、作業効率が向上し、同じ時間やリソースでより多くの製品を生産することが可能となります。

(3) コスト削減

効率化や生産性向上により、無駄を削減し、コストを最適化することができます。これにより、企業の収益性を向上させることができます。

(4) 品質管理の改善

IEは品質管理のプロセスを見直し、品質を向上させるための方法を提案します。品質管理の改善により、不良品の発生を減らし、顧客満足度を高めることができます。

(5) リスク管理の強化

IEはリスク要因を分析し、リスクを軽減するための対策を講じます。生産プロセスやサプライチェーンのリスクを管理することで、企業の安定性を確保します。

(6) チームワークの促進

IEは異なる部門やチームとの連携を強化し、情報共有や意思疎通を促進します。チームワークの向上により、効率的な意思決定や問題解決が可能となります。

 

4. IE手法を活用する上でのポイント

IEにはさまざまな手法がありますが、代表的なものとその手法のポイントを述べます。これらの手法を活用する際には、まず問題や目標を明確に定義し、データを収集・分析して適切な手法を選択することが重要です。また、チームワークやコミュニケーションを大切にし、継続的な改善を行うことで効果的に活用することができます。

(1)システム最適化手法

  • リニアプログラミング:複数の制約条件の中で目的関数を最大化または最小化するための数理最適化手法です。
  • シミュレーション:実際のシステムをモデル化し、さまざまなシナリオを検証することで最適な設計や運用方法を見つけます。

(2)プロセス改善手法

  • リーン生産:無駄を排除し、生産プロセスを効率化することで生産性を向上させます。
  • シックス・シグマ:品質管理手法で、プロセスの品質を向上させるために統計的手法を活用します。

(3)リスク管理手法

  • FMEA:製品やプロセスの潜在的な障害要因を特定し、リスクを軽減するための手法です。
  • リスク評価:リスクの発生確率や影響度を評価し、適切な対策を講じるための手法です。

 

5. まとめ

道具は時代の要請に応じて進化していかねばなりませんが、どうしても過去の成功体験に囚われて躊躇しがちです。改善は従来の仕組みを見直すところからスタートし、革新は理想像を描くところから始まり、過去のしがらみから解き放たれたところで創出されます。生産の最適化に限定された古典的IEから、バリューチェーン全体の価値を最大限に引き出す新IEに進化して、テーラーから100年を経て、新たなIEの姿に期待しましょう。

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