1.「カイゼン」とは
カイゼンとは、目標をもって進めるプロセスの生産性を高めるために行われる見直しや変更などの活動です。
例として、工場の製造現場で作業の安全性向上や作業効率を向上させるためなどにカイゼンは活かされています。
「改善」ではなく「カイゼン」と表記している点にも理由があります(カイゼンは英語表記のKAIZENの日本語読みです)。「改善」は文字通りより良くして行く事で英語ではimprovement(インプルーブメント:改良)と表記しますが、「カイゼン」はimprovementに(時間的に)途切れないという意味のcontinuous(コンティニュアス)という言葉を加えてcontinuous improvementと表記します。「改善」には継続して行うという意味が明示的に含まれていないため、誰もが継続的に行う活動であると理解できるようにしたという理由です。
2.カイゼンの目的
カイゼンの目的は「生産性の向上」です。
生産性は、目標の達成において必要な諸要素(原料、材料、エネルギー、労力など)を投入リソースとして目標達成で得られるモノ・コトとの相対的な割合のことです。
例えばある製品を完成させるのに4人の作業員で1時間必要であったとします。
この作業の生産性を倍にする場合に2つの選択ができます。
① 時間短縮 :人数はそのままに必要な時間を1時間から30分にする
② リソース縮小 :時間はそのままに必要な人員を4人から2人にする
カイゼン以前の生産性向上の取り組みでは①時間短縮が主流で、カイゼンによって②のリソース縮小がフォーカスされるようになりました。
3.カイゼンの方法
カイゼンの方法は以下の3つです。
1、現状を観測しカイゼン課題を見つける
2、課題解決アイデアを出す
3、アイデアを実行する
カイゼンを進める際に用いられる手法としてトヨタ式改善があります。
トヨタ生産方式に関するセミナーはこちら
5Sに関するセミナーはこちら
4.トヨタ式改善
トヨタ式改善とはトヨタ自動車が確立した、トヨタ生産方式(Toyota Production System)を用いたカイゼンの事です。
トヨタ生産方式は、トヨタ自動車工業(当時)の大野耐一氏や鈴村喜久雄氏らが生産ラインのムダを徹底的に排除するために確立した生産方式のことで、7つのムダを定義し、それらを排除するために「ジャストインタイム(JIT)」と「自働化」(自(動)ではなく自(働)である事に留意)を2本柱として体系化されています。
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トヨタ生産方式と一般的な生産方式の違い
一般的な生産方式は、予測に基づいて作成した生産計画にて、各工程では大きなロットで生産を実施し、各工程間で発生するトラブルや需要の変化に対応するために工程間の在庫を準備して対応します。大きなロットでの生産であれば、顧客オーダーの変化に対応するために完成品の在庫を貯める必要が生まれます。これにより在庫管理に費用と手間のムダが発生することになります。
また、各工程は計画に沿った生産を行うので、計画に遅れないよう後工程に仕事を押し込んでいくことが発生し、オーダーと関係のない「造りすぎのムダ」が発生します。さらに、各工程間が持つ在庫を適宜確認して生産計画を立てる必要が発生することから、直接生産と関係の無い管理業務に関する手間と費用が発生することになります。
また、各工程の進捗管理をする必要が生まれ、トラブル発生時や変更する際は全行程の計画変更が必要となり多大な手間と時間が必要となります。大量の工程間在庫を持つことによって原材料・部品調達から完成までのリードタイムが長くなると共に予測の精度によっては、原材料・部品の買いすぎや欠品というムダや問題が発生します。これらはすべて生産側の都合によって発生する問題であり、顧客のニーズとは関係ないものです。
トヨタ生産方式では、一般的な生産方式で発生している管理などの顧客にとっての価値を生まない活動をムダと定義し、改善していくための仕組みがあります。この方式では顧客(後工程)のニーズが生産計画に自動で落とし込まれ、各工程が必要なものを必要なときに必要なだけ生産・供給できます。つまり、顧客のニーズに沿ったものだけをムダなく生産・供給できることが大きな違いといえます。
5.トヨタ生産方式の2本の柱
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ジャストインタイム(JIT)
ジャストインタイム(JIT)とは、必要なモノを必要な時に必要な量だけ生産したり供給する仕組みと考え方です。後工程(顧客)からの要求の変化に対し、ムダなく対応することで生産効率を高めることが目的です。
「ジャストインタイム」のツールとして、いわゆる「かんばん方式」が有名ですが、ジャストインタイムが目指すことは「平準化」です。ジャストインタイムには以下の3つの基本原則があります。有名な「かんばん方式」はこの原則の1つ「後工引取り」をサポートする道具です。
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ジャストインタイムの3つの基本原則
後工程引取り
後工程引取りとは、後工程は、必要なモノを、必要な時に、必要な分だけ、前工程から引き取り、前工程は、引き取られた分だけ造ることを指します。
後工程引取りは、「造る側の都合を排除し、お客様への販売を起点にする」ことがポイントです。
あくまで起点は、お客様への販売です。
必要数でタクトを決めるとは
必要数でタクトを決めるとは、生産必要数に応じて、必要なタクトタイムを決めることを指します。
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自働化
自働化とは、「働」という字で表すように、人が関与しなくても機械。設備本体の異常や、品質の異常、作業遅れなどの異常が発生した場合、自動で異常を検知して、生産を停止し、人に異常を発報する考え方です。これは良品しか作らない(100%良品製造)を前提にし、異常があればすぐに生産を止めて発報することで、再発を防止することを目的としています。
自動化との違いは、機械や設備自体が自動で異常検知し停止するところにあります。トヨタ生産方式では「動」はムダが存在する可能性があり、「働」はムダなく価値を付加すると定義されています。
この考え方は、糸切れを自動で検知し、機械を止めて人に通知することができる自動織機を発明したトヨタグループ創業者の豊田佐吉翁によって始まり、現在に続いています。
自働化によって、不良の後工程への流出が防止できるだけでなく、不良や異常の発生防止をはかることができ、「品質を工程で造り込む」を可能としています。そして、自動検知にて異常を発報するので、設備や工程を監視する人が不要になり、「省人」を可能としています。
6.カイゼンと共に取り組むべき5Sとは
5Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の頭文字のSをとった活動のことで、トヨタ生産方式の基本に「5S活動」が置かれていたことをきっかけに一般的になったとされています。5Sを行うと、職場環境が整うだけでなく、無駄もなくなります。そして結果として、作業の効率化、生産性の向上が望めることは多くの方が経験的にも感じていることだと思いますが、カイゼンの観点で5Sを見ると、カイゼンの基盤活動であると言えます。カイゼンに取り組む前提で5Sの取り組みが無ければムダの原因の特定すら難しくなります。
7.カイゼンを効果的に進めるためのポイント
カイゼンを効果的に進めるためのポイントとして、一般的なマネジメント手法であるPDCA(Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセス)をdPDCA(d(小...