知っておきたい物流関連法令

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1. 貨物自動車運送事業法

 私たちが仕事をする上で守るべきルールがあります。これは社会のルールであって、どんなことがあっても破ることができません。それが法令です。身近なところから見ていきましょう。それはトラック輸送に関する法令です。運送事業者の方はもちろん、荷主、着荷主の方にも知っておいていただきたいと思います。
 
 トラックなどの自動車を利用して、代金を取って顧客の貨物を運送する事業を貨物自動車運送事業と呼びます。これを規定する法令が「貨物自動車運送事業法」です。また不特定多数の荷主から貨物の運送の依頼を受けて、有償で自動車を使用して運送する事業を「一般貨物自動車運送事業」といいます。
  
 この一般貨物自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければなりません。その際には以下の事項を記載した申請書を提出する必要があります。  
 
・ 氏名または名称、住所、法人の場合は代表者の氏名   
・ 営業所の名称および位置   
・ 事業に使用する自動車(事業用自動車)の概要   
・ 特別積合せ貨物運送をするかどうかの別   
・ 貨物自動車利用運送を行うかどうかの別   
・ その他国土交通省令で定める事項に関する事業計画  
 
 ここで「貨物自動車利用運送」とは、他の貨物自動車運送事業者を利用して貨物運送を行う事業形態です。かつては貨物自動車運送もタクシーのように規制産業でした。その時には「認可」が必要でしたが、今は自由化されていますので国土交通大臣の「許可」で済んでいます。ちなみに「許可」の定義についても確認しておきましょう。許可とは、ある行為が一般的に禁止されている時、特定の場合にこの禁止を解いて、適法に行為できるようにする行政処分です。
 
 貨物自動車による運送事業をどんな人にも勝手に営業させるわけにはいかないので、一定の基準を満たす場合だけ許可することにしているのです。貨物自動車運送事業法では「運送約款」という定めがあります。運送契約を締結する際に、個別に契約内容を交渉することは大変です。そこで大量に行われる取引を画一的に処理するために、あらかじめ定型化された契約事項を作成しておくと便利です。このような定型的な運送契約条項を運送約款と呼びます。
 
  SCM
 

2. 運輸安全マネジメントと運行管理者

 皆さんは運輸安全マネジメントをご存知でしょうか。この制度は貨物自動車運送事業法で規定されています。国土交通省告示によりますと、「貨物自動車事業の運営において輸送の安全の確保が最も重要であるという意識を貨物自動車運送事業の経営の責任者から全従業員に浸透させ、輸送の安全に関する計画の作成・実行・評価および改善の一連の過程を定め、これを継続的に実施するしくみをいう」とされています。一般貨物自動車運送事業者のうち、事業用自動車の保有車両が300両以上の事業者は、安全管理規程義務づけ事業者とされています。
 
 安全管理規程の作成を義務づけることによって事業者全体で輸送の安全を確保するとともに、安全統括管理者を選任して多数の運行管理者を統括させることとしています。輸送の安全確保のため、過積載運送を防止する必要があります。一義的には運送事業者の責任ではありますが、過積載は荷主に指示によることもあり、その場合は荷主も責任を負うことになります。また過労運転の防止も輸送安全では欠かせない事項です。過労運転は長時間労働や慢性的な睡眠(休息)不足によって発生します。
 
 さらに心理的なストレスも要因となります。トラック運転者は常に着時間を守ろうと考えます。それがストレスになるとともに、無理な運行をする危険性があります。そこで、運転者に対しては「対面点呼」を行う必要があります。貨物自動車運送事業法では「貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の乗務を開始しようとする運転者に対し、対面による点呼をしなければならない」と規定されています。
 
 ちなみに点呼には「乗務前点呼」、「乗務後点呼」、「中間点呼(乗務途中点呼)」があります。貨物自動車運送事業者は、点呼の記録を1年間保存しなければならないことになっています。点呼を行わなければならないのは「運行管理者」です。運行管理者の業務の範囲は、国土交通省令(安全規則)で定められており、運行管理者は誠実にその業務を行わせなければなりません。
 
運行管理者の業務には以下があります。
 
・ 過労運転の防止に関する業務
・ 過積載の防止に関する業務
・ 点呼に関する業務
・ 乗務等の記録などに関する業務
・ 運行指示書などに関する業務
・ 乗務員に対する指導・監督に関する業務
・ その他の業務
 

3. 道路交通法

 私たちは運転免許を取得する際に必ず勉強している法令があります。それは道路交通法です。もう忘れてしまっている方もいらっしゃるかもしれませんが、物流とは切っても切れない法令ですから、今一度確認しておきましょう。運送はトラックが中心ですから、大型自動車と中型自動車の区分を確認していきましょう。大型自動車は最大積載量が6500㎏以上、車両総重量が11000㎏以上の自動車のことです。
 
 一方で中型自動車とは最大積載量3000㎏以上6500㎏未満、車両総重量5000kg以上11000㎏未満の自動車のことを指します。それと速度について。大型自動車(貨物)は高速自動車国道では最高速度は時速80kmです。一方で中型自動車は時速100kmです。荷主の方はどこまでの距離であれば何時間で行けるか、これを基準...

1. 貨物自動車運送事業法

 私たちが仕事をする上で守るべきルールがあります。これは社会のルールであって、どんなことがあっても破ることができません。それが法令です。身近なところから見ていきましょう。それはトラック輸送に関する法令です。運送事業者の方はもちろん、荷主、着荷主の方にも知っておいていただきたいと思います。
 
 トラックなどの自動車を利用して、代金を取って顧客の貨物を運送する事業を貨物自動車運送事業と呼びます。これを規定する法令が「貨物自動車運送事業法」です。また不特定多数の荷主から貨物の運送の依頼を受けて、有償で自動車を使用して運送する事業を「一般貨物自動車運送事業」といいます。
  
 この一般貨物自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければなりません。その際には以下の事項を記載した申請書を提出する必要があります。  
 
・ 氏名または名称、住所、法人の場合は代表者の氏名   
・ 営業所の名称および位置   
・ 事業に使用する自動車(事業用自動車)の概要   
・ 特別積合せ貨物運送をするかどうかの別   
・ 貨物自動車利用運送を行うかどうかの別   
・ その他国土交通省令で定める事項に関する事業計画  
 
 ここで「貨物自動車利用運送」とは、他の貨物自動車運送事業者を利用して貨物運送を行う事業形態です。かつては貨物自動車運送もタクシーのように規制産業でした。その時には「認可」が必要でしたが、今は自由化されていますので国土交通大臣の「許可」で済んでいます。ちなみに「許可」の定義についても確認しておきましょう。許可とは、ある行為が一般的に禁止されている時、特定の場合にこの禁止を解いて、適法に行為できるようにする行政処分です。
 
 貨物自動車による運送事業をどんな人にも勝手に営業させるわけにはいかないので、一定の基準を満たす場合だけ許可することにしているのです。貨物自動車運送事業法では「運送約款」という定めがあります。運送契約を締結する際に、個別に契約内容を交渉することは大変です。そこで大量に行われる取引を画一的に処理するために、あらかじめ定型化された契約事項を作成しておくと便利です。このような定型的な運送契約条項を運送約款と呼びます。
 
  SCM
 

2. 運輸安全マネジメントと運行管理者

 皆さんは運輸安全マネジメントをご存知でしょうか。この制度は貨物自動車運送事業法で規定されています。国土交通省告示によりますと、「貨物自動車事業の運営において輸送の安全の確保が最も重要であるという意識を貨物自動車運送事業の経営の責任者から全従業員に浸透させ、輸送の安全に関する計画の作成・実行・評価および改善の一連の過程を定め、これを継続的に実施するしくみをいう」とされています。一般貨物自動車運送事業者のうち、事業用自動車の保有車両が300両以上の事業者は、安全管理規程義務づけ事業者とされています。
 
 安全管理規程の作成を義務づけることによって事業者全体で輸送の安全を確保するとともに、安全統括管理者を選任して多数の運行管理者を統括させることとしています。輸送の安全確保のため、過積載運送を防止する必要があります。一義的には運送事業者の責任ではありますが、過積載は荷主に指示によることもあり、その場合は荷主も責任を負うことになります。また過労運転の防止も輸送安全では欠かせない事項です。過労運転は長時間労働や慢性的な睡眠(休息)不足によって発生します。
 
 さらに心理的なストレスも要因となります。トラック運転者は常に着時間を守ろうと考えます。それがストレスになるとともに、無理な運行をする危険性があります。そこで、運転者に対しては「対面点呼」を行う必要があります。貨物自動車運送事業法では「貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の乗務を開始しようとする運転者に対し、対面による点呼をしなければならない」と規定されています。
 
 ちなみに点呼には「乗務前点呼」、「乗務後点呼」、「中間点呼(乗務途中点呼)」があります。貨物自動車運送事業者は、点呼の記録を1年間保存しなければならないことになっています。点呼を行わなければならないのは「運行管理者」です。運行管理者の業務の範囲は、国土交通省令(安全規則)で定められており、運行管理者は誠実にその業務を行わせなければなりません。
 
運行管理者の業務には以下があります。
 
・ 過労運転の防止に関する業務
・ 過積載の防止に関する業務
・ 点呼に関する業務
・ 乗務等の記録などに関する業務
・ 運行指示書などに関する業務
・ 乗務員に対する指導・監督に関する業務
・ その他の業務
 

3. 道路交通法

 私たちは運転免許を取得する際に必ず勉強している法令があります。それは道路交通法です。もう忘れてしまっている方もいらっしゃるかもしれませんが、物流とは切っても切れない法令ですから、今一度確認しておきましょう。運送はトラックが中心ですから、大型自動車と中型自動車の区分を確認していきましょう。大型自動車は最大積載量が6500㎏以上、車両総重量が11000㎏以上の自動車のことです。
 
 一方で中型自動車とは最大積載量3000㎏以上6500㎏未満、車両総重量5000kg以上11000㎏未満の自動車のことを指します。それと速度について。大型自動車(貨物)は高速自動車国道では最高速度は時速80kmです。一方で中型自動車は時速100kmです。荷主の方はどこまでの距離であれば何時間で行けるか、これを基準に考えれば想像がつくのではないでしょうか。
 
 道路交通法がらみでもう一つ確認しておきたいのが「積載の制限」です。運転者は政令で定める積載物の重量・大きさ・積載方法の制限を超えた積載をして車両を運転してはなりません。積載物の重量は、基本的に自動車検査証または保安基準適合標章に記載されている最大積載重量を超えてはなりません。積載物の大きさは以下の通りです。
 
・長さ:自動車の長さにその長さの10分の1の長さを加えたものを超えてはなりません。
・幅 :自動車の幅を超えてはなりません。
・高さ:3.8mからその自動車の積載場所の高さを減じたものを超えてはなりません。
 
 過積載とは、車両に、積載物の重量の制限を超えて積載することをいいます。運送事業者は当然として、荷主も運転者に過積載を要求したり、過積載になることを知りながら、重量の制限を超える積載物を運転者に引き渡したりしてはなりません。警察署長は、荷主がこれに違反した場合、反復してこの違反行為をするおそれがあると認めるときは、その荷主に対して、違反行為をしてはならない旨を命じることができます。
 
 この道路交通法には罰則が定められています。罰則は、違反行為をした運転者だけでなく、運転者に違反行為を命じたり(下命)、運転者の違反行為を容認したりした自動車の使用車等にも課される場合があります。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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