物流品質向上にこだわるとは

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1. 物流品質の5カテゴリー

 物流品質不良が減らずに困っているという会社は多いのではないでしょうか。ものづくりでは品質向上のためにさまざまな活動を行なっています。もちろん、ものづくり企業でも常に品質向上活動に取り組んでいますが、それ以上に努力が求められるのが物流でしょう。では物流品質にはどのようなカテゴリーがあるのでしょうか。このことについてまず確認していきたいと思います。
 
 物流品質は大きく次の5つにカテゴリー分けできます。
 
 1つ目は「納期通りの納入(納入日、納入時刻)」です。この不良としては「未納や納入遅れなど」が存在します。
 
 2つ目は「指定場所への納入(所在地、指定荷降ろし場)」です。不良としては「納入(供給)場所違いや荷卸し場所違い」があります。
 
 3つ目は「注文通りの商品」です。不良としては「商品間違い(誤品)」が挙げられます。
 
 4つ目は「注文通りの数量」です。不良には「数量間違い(誤数)」があります。
 
 5つ目は「注文通りの品質」です。不良には「商品の損傷や包装(梱包)の損傷」が挙げられます。
 
 皆さんもイメージできると思います。そしてこれらについては「当たり前の品質」と解釈されます。だからこそ物流にとってはプレッシャーになるわけです。たしかに私たちが通信販売でものを購入した際に、これらのいずれかで不良があったとしたら非常に憤慨することでしょう。メーカーであれば、生産工程で完璧な製品をつくったとしても、物流工程で何かしらの不良を起こしてしまっては生産の努力が水の泡となってしまいます。ですから物流ではこれらの品質カテゴリーについて、不良を起こさないように何かしらのしかけをつくるとともに、人材の教育も必要になるのです。
 
 ではなぜ物流工程においてミスが発生するのかについて考えてみましょう。
 
 1つに「たぶん大丈夫という思い込み」が挙げられます。これは多くの場合、日常の物流作業の過程で発生します。たとえばオーダー、製品、出荷ラベルの3点を必ず指差呼称で確認することになっていたとしましょう。毎日この作業を行っている作業者が「目視」だけで確認したつもりになったとしたらどうでしょう。作業者は今まで目視でも不良は発生していないので、指差呼称を行わなくても大丈夫だろうと思ってとします。
 
   SCM
 

2. 物流工程においてミスが発生する3つの理由

 ルール通りの作業を行わなくてもたまたま不良が出ていなかったと解釈すべきです。このまま作業を続けていけばいつか不良が発生することでしょう。2つ目は「規則を守る意思がないことによる事故」です。先ほどの事例でも一部この要素が含まれています。「標準作業を守らない」こと自体が規則を守る意思がないということと同義です。
 
 物流作業者は会社から指示されたとおりに仕事をすることが「雇用契約を守る」ということだという認識を持たなければなりません。「数は5つずつ数える」という指示であれば、それに忠実に従わなければなりません。製品は机上に並べて数えろ、と言われていたらその通りにすべきなのです。それを「たかが数を数えるくらい」という標準作業を軽視した思いは禁物です。いつか必ず不良につながることでしょう。
 
 3つ目は「警告を無視したことによる事故」です。デジタルピッキングシステムやデジタルアソートシステムは人間の判断作業を軽減するためのしくみです。会社がこれらのしくみを導入したにもかかわらず、使用しない方が生産性が上がるという勝手な判断で現場サイドで外してしまうことがあります。安全装置も同様です。このような勝手な判断が大きな事故につながります。物流でいえば得意先に多数個不良を流出させてしまうことが大きな事故に該当します。
 
 人間の行うことですから、ミスがゼロになることはありません。しかし自分の力量を過信しすぎると必ずエラーを発生させます。物流工程においてミスが発生する3つの理由については、今一度現場を見直し、このようなことが発生していないかどうかを確認しましょう。もしいずれかの理由が見つかったとしたら、すぐに元に戻しましょう。
 
 物流現場では人による作業が大半ですから、作業における緊張が長く続くことは避けなければなりません。皆さんも仕事で経験があると思いますが、緊張の続く時間はそれほど長くはありません。別の作業に変更するとか、休憩時間を取るとかしながら、適度な緊張を持続できるようにしていきたいものです。仕事でミスが発生しやすい環境についてもチェックしていきましょう。たとえば類似した製品とか類似した製品番号などは作業者に迷いと判断を負わせることになります。
 
 製品番号を例にとると、「0(ゼロ)」と「O(オー)」や「1(いち)」と「l(エル)」といった紛らわしい文字は使わない方がベターです。特に手書きの場合、人によって紛らわしさが増幅しますので、できればこれらの文字は製品番号としては使わない方がよいと思います。また、類似製品は保管場所をあえて離すことも必要でしょう。
 

3. 愚直な活動で品質保持

 物流品質は常に愚直な活動で保持することが可能となります。つまり突飛なことをやるのではなく、決められたことをきちんと守ることが大切だということです。よく自動機やポカヨケ装置に走りがちですが、実際にはそのようなお金をかけなくても品質は守れます。逆にお金をかけて装置を入れても、必ずしも品質が良くなるとは限らないのです。物流品質で難しいと作業者の方が口をそろえて言うのは「数の数え方」です。数なんて子供でも数えられると馬鹿にしていると痛い目にあいます。
 
 どこの会社でも数量ミス(誤数)を発生させたことはあると思います。そこで各社はいろいろな工夫を凝らしています。たとえばある会社では、小物部品...

1. 物流品質の5カテゴリー

 物流品質不良が減らずに困っているという会社は多いのではないでしょうか。ものづくりでは品質向上のためにさまざまな活動を行なっています。もちろん、ものづくり企業でも常に品質向上活動に取り組んでいますが、それ以上に努力が求められるのが物流でしょう。では物流品質にはどのようなカテゴリーがあるのでしょうか。このことについてまず確認していきたいと思います。
 
 物流品質は大きく次の5つにカテゴリー分けできます。
 
 1つ目は「納期通りの納入(納入日、納入時刻)」です。この不良としては「未納や納入遅れなど」が存在します。
 
 2つ目は「指定場所への納入(所在地、指定荷降ろし場)」です。不良としては「納入(供給)場所違いや荷卸し場所違い」があります。
 
 3つ目は「注文通りの商品」です。不良としては「商品間違い(誤品)」が挙げられます。
 
 4つ目は「注文通りの数量」です。不良には「数量間違い(誤数)」があります。
 
 5つ目は「注文通りの品質」です。不良には「商品の損傷や包装(梱包)の損傷」が挙げられます。
 
 皆さんもイメージできると思います。そしてこれらについては「当たり前の品質」と解釈されます。だからこそ物流にとってはプレッシャーになるわけです。たしかに私たちが通信販売でものを購入した際に、これらのいずれかで不良があったとしたら非常に憤慨することでしょう。メーカーであれば、生産工程で完璧な製品をつくったとしても、物流工程で何かしらの不良を起こしてしまっては生産の努力が水の泡となってしまいます。ですから物流ではこれらの品質カテゴリーについて、不良を起こさないように何かしらのしかけをつくるとともに、人材の教育も必要になるのです。
 
 ではなぜ物流工程においてミスが発生するのかについて考えてみましょう。
 
 1つに「たぶん大丈夫という思い込み」が挙げられます。これは多くの場合、日常の物流作業の過程で発生します。たとえばオーダー、製品、出荷ラベルの3点を必ず指差呼称で確認することになっていたとしましょう。毎日この作業を行っている作業者が「目視」だけで確認したつもりになったとしたらどうでしょう。作業者は今まで目視でも不良は発生していないので、指差呼称を行わなくても大丈夫だろうと思ってとします。
 
   SCM
 

2. 物流工程においてミスが発生する3つの理由

 ルール通りの作業を行わなくてもたまたま不良が出ていなかったと解釈すべきです。このまま作業を続けていけばいつか不良が発生することでしょう。2つ目は「規則を守る意思がないことによる事故」です。先ほどの事例でも一部この要素が含まれています。「標準作業を守らない」こと自体が規則を守る意思がないということと同義です。
 
 物流作業者は会社から指示されたとおりに仕事をすることが「雇用契約を守る」ということだという認識を持たなければなりません。「数は5つずつ数える」という指示であれば、それに忠実に従わなければなりません。製品は机上に並べて数えろ、と言われていたらその通りにすべきなのです。それを「たかが数を数えるくらい」という標準作業を軽視した思いは禁物です。いつか必ず不良につながることでしょう。
 
 3つ目は「警告を無視したことによる事故」です。デジタルピッキングシステムやデジタルアソートシステムは人間の判断作業を軽減するためのしくみです。会社がこれらのしくみを導入したにもかかわらず、使用しない方が生産性が上がるという勝手な判断で現場サイドで外してしまうことがあります。安全装置も同様です。このような勝手な判断が大きな事故につながります。物流でいえば得意先に多数個不良を流出させてしまうことが大きな事故に該当します。
 
 人間の行うことですから、ミスがゼロになることはありません。しかし自分の力量を過信しすぎると必ずエラーを発生させます。物流工程においてミスが発生する3つの理由については、今一度現場を見直し、このようなことが発生していないかどうかを確認しましょう。もしいずれかの理由が見つかったとしたら、すぐに元に戻しましょう。
 
 物流現場では人による作業が大半ですから、作業における緊張が長く続くことは避けなければなりません。皆さんも仕事で経験があると思いますが、緊張の続く時間はそれほど長くはありません。別の作業に変更するとか、休憩時間を取るとかしながら、適度な緊張を持続できるようにしていきたいものです。仕事でミスが発生しやすい環境についてもチェックしていきましょう。たとえば類似した製品とか類似した製品番号などは作業者に迷いと判断を負わせることになります。
 
 製品番号を例にとると、「0(ゼロ)」と「O(オー)」や「1(いち)」と「l(エル)」といった紛らわしい文字は使わない方がベターです。特に手書きの場合、人によって紛らわしさが増幅しますので、できればこれらの文字は製品番号としては使わない方がよいと思います。また、類似製品は保管場所をあえて離すことも必要でしょう。
 

3. 愚直な活動で品質保持

 物流品質は常に愚直な活動で保持することが可能となります。つまり突飛なことをやるのではなく、決められたことをきちんと守ることが大切だということです。よく自動機やポカヨケ装置に走りがちですが、実際にはそのようなお金をかけなくても品質は守れます。逆にお金をかけて装置を入れても、必ずしも品質が良くなるとは限らないのです。物流品質で難しいと作業者の方が口をそろえて言うのは「数の数え方」です。数なんて子供でも数えられると馬鹿にしていると痛い目にあいます。
 
 どこの会社でも数量ミス(誤数)を発生させたことはあると思います。そこで各社はいろいろな工夫を凝らしています。たとえばある会社では、小物部品を数える時には必ずトレーの上に並べて数えることを標準作業化しています。袋から取り出す時に数えるだけではダメで、必ずトレーの上に並べなさい、と指導しているのです。
 
 別の会社では多数個をピッキングする際には、必ず5個ずつ数えることを義務付けています。5個の山をつくり、最後に5個未満の端数の山をつくります。これによって5個の山が4山と端数が3個で23個というように数量を確認しているのです。また他の会社では、升目を描いたテンプレートに数字を書きそこに実際に部品を並べていくという方法をとっています。この会社も過去に幾度となく誤数出荷を行ってしまっていたため、最終的に行き着いた方法がこの升目なのです。
 
 ピッキング工程に他部品と見分けがつくように「サンプル」を掲示したり、他部品との見分け方を写真で解説したものを掲示したりといろいろな工夫がなされています。当たり前のことですが標準作業が設定されていない物流現場では誤出荷は無くなりません。標準作業通りに実行しているかどうかを作業観察で確認していない現場でもミスは続きます。とにかく物流品質を守るためには「当たり前のことを当たり前にやる習慣」が必要になります。打ち出の小槌など存在しません。
 
 今一度物流現場を見てみましょう。もし標準作業が設定されておらず作業者任せにしていたとしたら危険です。管理監督者が自分の職責を果たすことが物流品質向上への一番の近道なのです。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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