縮小市場における経営戦略の考え方

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  事業戦略
 
 製造業の経営戦略を策定するにあたっては、次に上げるような多くの考慮すべきポイントがあります。 
 
  •  新規投資、技術開発をどうするべきか
  •  社員採用をどうするべきか
  •  宣伝広告や営業活動への考え方
  •  新規事業開発への考え方
  •  事業継承をどう準備するか
 
  これらを理解していたとしても、実際の局面においては判断に迷うことも多いでしょう。今回は、次のような事例で考えてみましょう。
 

1. 典型的な縮小市場の経営判断

 S社は社員数100名前後で、ある金属材料の加工を地方都市で40年続けています。同業者は国内に30社程度いますが、S社は大型の設備を持っているために、この業界では上位5社に入る規模です。この分野は少しずつ新材料に置き換えられているために、市場が毎年10%近くずつ縮小しており、今後の回復は期待できそうにありません。
 
 ただし同業者のほとんどがこの企業よりも規模が小さく体力がないことから、毎年のように廃業者が現れてその受注が回ってくるために、受注自体はここ10年ほぼ一定量を保っており、利益は少ないながら黒字基調です。
 
 今後の人材、投資、新事業開発戦略をどう考えれば良いでしょう。
  

2. 市場動向の見極めが最重要

 
 本件の最大のポイントは1点です。現在扱っている素材の加工が、完全に新素材に切り替わり市場がなくなるかどうかの見極めがカギとなります。
 
 100%新素材に置き換わってしまうならば、新規事業の立ち上げの判断を早急にしなければなりません。残されたタイムリミットまでに新規事業の立ち上げが難しい、最悪の場合会社の解散まで視野に入れる必要があります。 
 
 現在の市場が縮小するものの、一部置き換えのきかない需要が見込めるならば、同業者の廃業がチャンスになります。 
 
 しかし、業界上位5社の地位は万全ではありません。それは同業者の廃業による受注増は市場シェアNO.1の企業に集中するからです。残念ながら業界5社では、市場縮小のペースと他社の廃業による受注増がきわどくバランスの取れている状態です。縮小市場でNO.1になり、最終的に市場を独占することが理想です。 
 
 大切なことはこの状況の中で想定企業が何を目指すのか?ということです。リスクを最小限に押さえ生き残りを優先するのか?それとも早い時期に次の世代へバトンタッチしたいのか?もしくは新規ビジネスにチャレンジして会社を大きくしたいのか?想定企業の目標に沿って新規投資、技術開発...
  事業戦略
 
 製造業の経営戦略を策定するにあたっては、次に上げるような多くの考慮すべきポイントがあります。 
 
  •  新規投資、技術開発をどうするべきか
  •  社員採用をどうするべきか
  •  宣伝広告や営業活動への考え方
  •  新規事業開発への考え方
  •  事業継承をどう準備するか
 
  これらを理解していたとしても、実際の局面においては判断に迷うことも多いでしょう。今回は、次のような事例で考えてみましょう。
 

1. 典型的な縮小市場の経営判断

 S社は社員数100名前後で、ある金属材料の加工を地方都市で40年続けています。同業者は国内に30社程度いますが、S社は大型の設備を持っているために、この業界では上位5社に入る規模です。この分野は少しずつ新材料に置き換えられているために、市場が毎年10%近くずつ縮小しており、今後の回復は期待できそうにありません。
 
 ただし同業者のほとんどがこの企業よりも規模が小さく体力がないことから、毎年のように廃業者が現れてその受注が回ってくるために、受注自体はここ10年ほぼ一定量を保っており、利益は少ないながら黒字基調です。
 
 今後の人材、投資、新事業開発戦略をどう考えれば良いでしょう。
  

2. 市場動向の見極めが最重要

 
 本件の最大のポイントは1点です。現在扱っている素材の加工が、完全に新素材に切り替わり市場がなくなるかどうかの見極めがカギとなります。
 
 100%新素材に置き換わってしまうならば、新規事業の立ち上げの判断を早急にしなければなりません。残されたタイムリミットまでに新規事業の立ち上げが難しい、最悪の場合会社の解散まで視野に入れる必要があります。 
 
 現在の市場が縮小するものの、一部置き換えのきかない需要が見込めるならば、同業者の廃業がチャンスになります。 
 
 しかし、業界上位5社の地位は万全ではありません。それは同業者の廃業による受注増は市場シェアNO.1の企業に集中するからです。残念ながら業界5社では、市場縮小のペースと他社の廃業による受注増がきわどくバランスの取れている状態です。縮小市場でNO.1になり、最終的に市場を独占することが理想です。 
 
 大切なことはこの状況の中で想定企業が何を目指すのか?ということです。リスクを最小限に押さえ生き残りを優先するのか?それとも早い時期に次の世代へバトンタッチしたいのか?もしくは新規ビジネスにチャレンジして会社を大きくしたいのか?想定企業の目標に沿って新規投資、技術開発も採用戦略も宣伝広告・営業活動もそして事業継承も選ぶべき戦略が異なるのです。
 
 目指す方向性と取れるリスクの限界を決めることが先決です。 
 
 上記事例の想定企業では、今後大きくビジネスを伸ばすより、事業継続していくことが優先されでしょう。となれば既存市場での勝ち残りによる残存者利益の確保が定石です。長期供給・安定供給をベースに、安心して取引を継続してもらえる体制を作る必要があります。人材・教育・営業・宣伝・事業継承を具体的に検討する前に、会社の将来の方向性と取れるリスクについての方針を、経営戦略として固めることが先決です。 
 

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この記事の著者

宮本 栄治

製造業、特に生産財専門のWebマーケティングコンサルタント

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