1.ブドウ状球菌の研究中に、青カビを見つけ抗生物質ペニシリンを発見した、イギリスの細菌学者 アレクサンダー・フレミング
1928年、イギリス人の細菌学者アレクサンダー・フレミングは、ブドウ状球菌の研究に取り組んでいました。当時はまだ滅菌技術が確立していなかったので、細菌の培養中に他の雑菌が紛れ込むことも少なくなく、ある日、彼は培養していたブドウ状球菌の皿の一つに異変を発見しました。普通なら乳白色のブドウ状球菌でおおわれているはずの皿が透明になっています。その中心には青カビがあります。ブドウ状球菌の培養に失敗したと思ったフレミングは、その皿の中身を流しに捨てようとしました。
そのとき、青カビの周囲でブドウ状球菌が溶けていることを発見しました。フレミングは、その現象に興味をそそられ、青カビの培養を始めました。青カビがブドウ状球菌を滅ぼしたのなら、その成分を研究してみようと思ったのです。
実験を重ねたすえに、とうとう彼は有効成分の抽出に成功し、ペニシリンと名づけました。これが世界で初めての抗生物質の発見です。
2.研究の誤算が生んだ白い粉末から、ポリエチレンを発見した、イギリスの科学者 M・W・ペラン/R・O・ギブソン
現在、私たちの日常生活に欠かせないポリエチレンは、1935年、イギリスで発見されました。エチレンの重合体であるポリエチレンを「生成」ではなく「発見」というわけは、欠陥のある実験装置から偶然に見つけ出されたからです。
1920年代から、高圧による化学物質の変化を研究していたインペリアル・ケミカル・インダストリーズ社(ICI)の科学者、M・W・ペランとR・O・ギブソンは、1933年に、すでに白色のワックス状固体を生成していましたが、そのときは2人とも設備の開発にばかり気をとられて、生成物には注目しませんでした。
その後、欠陥品だと思った実験装置を分解中、ペランは装置に微量の白い粉末がついていることに気がつきました。なにげなく指にとってその粉末を擦り合わせていると、強力な粘りが出てくることを発見しました。この擦り合わせた粉末を糸やフィルム状にすることにより、電気絶縁性の高いポリエチレンが誕生しました。まさに怪我の功名。予期せぬ産物です。
出典:「ひらめきの法則」 髙橋誠著(日経ビジネス人文庫)
◆関連解説『アイデア発想法とは』
...