【SDGs取り組み事例】リスク社会から人々守る 河村電器産業株式会社

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企業理念と事業活動がSDGs理念とリンク

河村電器産業株式会社(愛知県瀬戸市)

河村電器産業株式会社の本社社屋

目次

  1. トラッキング火災を未然に防止、文化財保護にも貢献
  2. 創業者の思い軸にアクティブ・ディフェンス発表
  3. 「持続可能な社会の実現」見据えた行動がSDGs達成のカギ
  4. 未来を担う子どもたちに出前授業
  5. SDGs:2030年の目標達成に向けた事業戦略

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1.トラッキング火災を未然に防止、文化財保護にも貢献

河村電器産業(愛知県瀬戸市・水野一隆取締役社長)は分電盤やキュービクル[1]、キャビネット、ブレーカ、省エネ・情報通信機器などの製造を手掛けていますが、一般家庭でみられる分電盤を初めて開発し、世に送り出した先駆者である一方、主力製品のキュービクルは同社売上の40%(2019年度)を占め、出荷台数は日本国内トップクラスを誇ります。また、コンセントとプラグのすき間にたまった埃(ほこり)と湿気が原因で発熱する「トラッキング現象」が発生する予兆を捉(とら)え、プラグから発火する「トラッキング火災」を未然に防止する「プレトラックコンセント」を開発。同コンセントは一般家庭はじめ、世界遺産の法相宗大本山薬師寺(奈良県)や京都市指定有形文化財の長江家住宅に寄進・寄贈されるなど、文化財の保護にも貢献しています。最近では、コロナ禍において非接触・非対人志向が高まる中、キャビネットの製造技術を生かした集合・戸建て用宅配ボックスの生産も行っています。

プレトラックコンセントと家庭用分電盤

写真説明】「プレトラックコンセント」㊧と家庭用分電盤(同社提供)

薬師寺と長江家住宅

写真説明】世界遺産の法相宗大本山薬師寺㊧と京都市指定有形文化財の「長江家住宅」にもプレトラックコンセントが寄進・寄贈されています

2.創業者の思い軸にアクティブ・ディフェンス発表

同社の創業は1919(大正8)年。創業者の河村鈴吉氏が京都に出掛けた際、町中を走る路面電車を見ながら「これからは電気の時代が来る」と確信。それまで営んでいた製陶所経営から、カットアウトスイッチやカウンターウエイトなどといった、屋内配線の引き込みに使われる器具の製造を行う河村商店を設立しました。
2019(平成31、令和元)年には、創業100年を機にコーポレートミッション(経営目標)として「アクティブ・ディフェンス。新しい世界には新しいあんしんを。」を発表。「創業者の電気の可能性に懸けた思いと、新しいリスクが次々と生まれる社会となった今、『何か起きてから考えるのではなく、(予測しながら)未然に防ぐために何ができるかを考え、危険から人々を守る』といった理念(アクティブなディフェンス)が込められている」と話しています。

マスコットキャラクターのリスクマ

写真説明】企業目標「リスクから社会を守る」ために誕生したマスコットキャラクター「リスクマ」(同)

3.「持続可能な社会の実現」見据えた行動がSDGs達成のカギ

そんな同社のSDGsに対する活動ですが元々、ISO14000(環境マネジメントシステム)に取り組んでいたことから、SDGs事業推進が決まりました。ただ、社内的認知度がまだ低いことから同年、外部講師を招き、部門長以上を対象とした講習が行われたほか、関連部署や一般社員向けにもSDGsの概要などについて社内教育が開かれています。
このほか、CSR(企業の社会的責任)の基本理念に「地球環境の保全と、企業の社会的責任が企業活動の最重点課題」を掲げる同社では、持続可能な社会の実現を見据えた行動をとることが、SDGs達成へのカギとなることから、瀬戸市内の10数社と協働で国特別天然記念物のオオサンショウウオが生息する蛇ヶ洞川(じゃがほらがわ)の清掃活動を行うほか、同社水俣工場(熊本県水俣市)では、地域住民らと共に桜観音祭りを開くなどコミュニケーションを図っています(目標:4、6、15)。
なかでも2006(平成18)年には、将来のJリーガー育成と支援のため、中学生を対象としたサッカークラブ「カワムラFC」を立ち上げています。当時、同社役員が「地元小学校にサッカー部を指導できる顧問がおらず、保護者が困っている」という話を聞きつけ、同社で協力を始めたことがきっかけです。また、卒業後はサッカー部がない中学校もあったことから、プレーを続けてきた子どもたちの受け皿として、同FCの設立に至りました。
現在は、同社敷地内に設けた坊金グラウンドを拠点に、元Jリーガーや同社社員(社会人チーム経験者)が指導に当たり、2015(同27)年には念願のJリーガーも誕生しています。

蛇ヶ洞川で行われている清掃活動

写真説明】国特別天然記念物のオオサンショウウオが生息する蛇ヶ洞川で行われている清掃活動(同)

カワムラFCとテラスポ鶴舞

写真説明】念願のJリーガーも誕生した「カワムラFC」㊧とSDGs目標から同社製品が無償提供された名古屋市の「テラスポ鶴舞」(同)

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4.未来を担う子どもたちに出前授業

このほか教育面では、未来を担う子どもたちのため、同市の瀬戸商工会議所と協働し、市内小学校の5年生を対象に「カイゼンセミナー」と称した出前授業を行っています(目標:4)。
テーマは「ものづくりにおける品質改善」。画用紙を使った箱作りに挑戦するもので、各グループの中でそれぞれ「線を引く」、「切り込みを入れる」、「ホチキスを使った組み立て」など役割分担を行い、作業を進めるなかで「どうしたら速く、品質の良い物を作ることができるかについて学ぶ」といった内容となっています。初めのうちは1、2分で1、2個程度だったものが、回を追うごとに品質も良く、個数も増えていくなど、授業で得た知識や経験が生かされているようです。また、出前授業に参加した子どもたちが数人、同社に入社するなど授業は同社PRの一端を担っています。

カイゼンセミナー

写真説明】市内小学5年生を対象に開かれている「カイゼンセミナー」の様子(同)

5.SDGs:2030年の目標達成に向けた事業戦略

一方、同社では事業戦略で貢献する目標として「高効率キュービクルへ改...

企業理念と事業活動がSDGs理念とリンク

河村電器産業株式会社(愛知県瀬戸市)

河村電器産業株式会社の本社社屋

目次

  1. トラッキング火災を未然に防止、文化財保護にも貢献
  2. 創業者の思い軸にアクティブ・ディフェンス発表
  3. 「持続可能な社会の実現」見据えた行動がSDGs達成のカギ
  4. 未来を担う子どもたちに出前授業
  5. SDGs:2030年の目標達成に向けた事業戦略

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1.トラッキング火災を未然に防止、文化財保護にも貢献

河村電器産業(愛知県瀬戸市・水野一隆取締役社長)は分電盤やキュービクル[1]、キャビネット、ブレーカ、省エネ・情報通信機器などの製造を手掛けていますが、一般家庭でみられる分電盤を初めて開発し、世に送り出した先駆者である一方、主力製品のキュービクルは同社売上の40%(2019年度)を占め、出荷台数は日本国内トップクラスを誇ります。また、コンセントとプラグのすき間にたまった埃(ほこり)と湿気が原因で発熱する「トラッキング現象」が発生する予兆を捉(とら)え、プラグから発火する「トラッキング火災」を未然に防止する「プレトラックコンセント」を開発。同コンセントは一般家庭はじめ、世界遺産の法相宗大本山薬師寺(奈良県)や京都市指定有形文化財の長江家住宅に寄進・寄贈されるなど、文化財の保護にも貢献しています。最近では、コロナ禍において非接触・非対人志向が高まる中、キャビネットの製造技術を生かした集合・戸建て用宅配ボックスの生産も行っています。

プレトラックコンセントと家庭用分電盤

写真説明】「プレトラックコンセント」㊧と家庭用分電盤(同社提供)

薬師寺と長江家住宅

写真説明】世界遺産の法相宗大本山薬師寺㊧と京都市指定有形文化財の「長江家住宅」にもプレトラックコンセントが寄進・寄贈されています

2.創業者の思い軸にアクティブ・ディフェンス発表

同社の創業は1919(大正8)年。創業者の河村鈴吉氏が京都に出掛けた際、町中を走る路面電車を見ながら「これからは電気の時代が来る」と確信。それまで営んでいた製陶所経営から、カットアウトスイッチやカウンターウエイトなどといった、屋内配線の引き込みに使われる器具の製造を行う河村商店を設立しました。
2019(平成31、令和元)年には、創業100年を機にコーポレートミッション(経営目標)として「アクティブ・ディフェンス。新しい世界には新しいあんしんを。」を発表。「創業者の電気の可能性に懸けた思いと、新しいリスクが次々と生まれる社会となった今、『何か起きてから考えるのではなく、(予測しながら)未然に防ぐために何ができるかを考え、危険から人々を守る』といった理念(アクティブなディフェンス)が込められている」と話しています。

マスコットキャラクターのリスクマ

写真説明】企業目標「リスクから社会を守る」ために誕生したマスコットキャラクター「リスクマ」(同)

3.「持続可能な社会の実現」見据えた行動がSDGs達成のカギ

そんな同社のSDGsに対する活動ですが元々、ISO14000(環境マネジメントシステム)に取り組んでいたことから、SDGs事業推進が決まりました。ただ、社内的認知度がまだ低いことから同年、外部講師を招き、部門長以上を対象とした講習が行われたほか、関連部署や一般社員向けにもSDGsの概要などについて社内教育が開かれています。
このほか、CSR(企業の社会的責任)の基本理念に「地球環境の保全と、企業の社会的責任が企業活動の最重点課題」を掲げる同社では、持続可能な社会の実現を見据えた行動をとることが、SDGs達成へのカギとなることから、瀬戸市内の10数社と協働で国特別天然記念物のオオサンショウウオが生息する蛇ヶ洞川(じゃがほらがわ)の清掃活動を行うほか、同社水俣工場(熊本県水俣市)では、地域住民らと共に桜観音祭りを開くなどコミュニケーションを図っています(目標:4、6、15)。
なかでも2006(平成18)年には、将来のJリーガー育成と支援のため、中学生を対象としたサッカークラブ「カワムラFC」を立ち上げています。当時、同社役員が「地元小学校にサッカー部を指導できる顧問がおらず、保護者が困っている」という話を聞きつけ、同社で協力を始めたことがきっかけです。また、卒業後はサッカー部がない中学校もあったことから、プレーを続けてきた子どもたちの受け皿として、同FCの設立に至りました。
現在は、同社敷地内に設けた坊金グラウンドを拠点に、元Jリーガーや同社社員(社会人チーム経験者)が指導に当たり、2015(同27)年には念願のJリーガーも誕生しています。

蛇ヶ洞川で行われている清掃活動

写真説明】国特別天然記念物のオオサンショウウオが生息する蛇ヶ洞川で行われている清掃活動(同)

カワムラFCとテラスポ鶴舞

写真説明】念願のJリーガーも誕生した「カワムラFC」㊧とSDGs目標から同社製品が無償提供された名古屋市の「テラスポ鶴舞」(同)

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4.未来を担う子どもたちに出前授業

このほか教育面では、未来を担う子どもたちのため、同市の瀬戸商工会議所と協働し、市内小学校の5年生を対象に「カイゼンセミナー」と称した出前授業を行っています(目標:4)。
テーマは「ものづくりにおける品質改善」。画用紙を使った箱作りに挑戦するもので、各グループの中でそれぞれ「線を引く」、「切り込みを入れる」、「ホチキスを使った組み立て」など役割分担を行い、作業を進めるなかで「どうしたら速く、品質の良い物を作ることができるかについて学ぶ」といった内容となっています。初めのうちは1、2分で1、2個程度だったものが、回を追うごとに品質も良く、個数も増えていくなど、授業で得た知識や経験が生かされているようです。また、出前授業に参加した子どもたちが数人、同社に入社するなど授業は同社PRの一端を担っています。

カイゼンセミナー

写真説明】市内小学5年生を対象に開かれている「カイゼンセミナー」の様子(同)

5.SDGs:2030年の目標達成に向けた事業戦略

一方、同社では事業戦略で貢献する目標として「高効率キュービクルへ改修案件の積極的受注」と「環境対応型製品の製造」を挙げています。同社によりますと、一般的にキュービクルは耐用年数が長い製品ですが、トランス(変圧器)を現行の基準に適合したものにすることで、変換効率が上がるということです。このことから、同社では「高効率キュービクルへの改修案件を60件/年実施する」といった目標をSDGs活動(目標:7、9、13)の中に落とし込み日々、ビジネスを進めています。
また、後者は自社基準で環境適合評価点の目標点数を設けたうえ、既存製品に対し設計変更などの見直しを行い、より環境に対応した製品に変えていくといった取り組み(目標: 9、12、13)が行われています。
これまでの活動を振り返り、同社は「社員も昨今、CMや企業ホームページなどといった外的要因からSDGsについて意識するようになったものの、内容に対する認知度はまだ低かったです。ただ、この1年間で、自社の取り組みやSDGs概要に対する理解は浸透してきています。また、私たちの企業理念や事業活動そのものがSDGsの理念とリンクしているため、社員にも自社に対する安心感が生まれてきています」と語ってくれました。同社の持続的発展に向けた取り組みはこれからも続きます。

記事:産業革新研究所 編集部 深澤茂

 


用語説明

[1]キュービクル:高電圧の電気をビルやテナントビル、コンビニエンスストアなどで使用できるよう、低い電圧に変圧する機器一式を金属製の函体に収納した設備

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