改善活動の定石を理解している人がやりとりできる用語や手順、手法を「共通言語」として定義すると、この共通言語のベースとなる能力とはどのようなものでしょうか。専門性が高くなると目的に応じて学ぶべきものは異なりますが、ビジネスパーソン全てに共通するベースと言える共通言語と呼べるものは論理的思考力です。
論理的思考は、重要でありながら実際に業務で活用出来ている人は少なく、経営者が教育の必要性を感じるネガティブな切っ掛けとなっているからです。社員から覇気ややる気が感じられず、効率が悪く業務が停滞しているように感じると、嘆いている経営者の方は少なくありません。また、従業員の能力アップを強く望み、教育機会を与えつつも思うような効果が得られず、仕方なく中途採用で優秀な人材を求めるという流れも見かけます。
逆に盲目的に社員教育を行ってはいるものの、その効果についての検証がおざなりになってしまっているケースもあります。確かに教育効果の検証は難しいです。従業員のやる気にも大きく左右されます。しかし、基礎が出来てない社員に専門性や特異性が高い教育を与え続けても十分に吸収できず、業務への活用は一時的、限定的で終わるでしょう。
まずは経営者と従業員同士が有効なビジネスコミュニケーションを取れる様に下地を身につけてもらう必要があります。ビジネスパーソンの共通言語である論理的思考力で、それが可能となります。因みにここで言うコミュニケーションとは社交的コミュニケーションではありません。
利害関係のある者同士が一つの目標に向かって進んで行くには、その理由や根拠に妥当性を感じ相互に納得し進めていかなければ上手く行かないでしょう。この相互に納得できるコミュニケーションがビジネスでは欠かせないわけです。論理的コミュニケーションが出来る事で次のような業務上のメリットが得られます。
•状況判断や意思決定が妥当な根拠や理由を伴って行える
•主張や目的を明確化する事が常態化し短い時間で合意的意思疎通を行える
•目的に対する最小ルートを見出そうとする為ムダが無くなり効率が上がる
•知識や経験が無い事態が生じても進むべき方向を見出せる
論理的思考法を学ぶといくつかの定石ワードが出てきます。ビラミッド思考、ロジックツリー、
MECE、フレームワーク等です。例えば顧客苦情の原因を調べ報告書を提出する必要が生じましたとします。「不具合を引き起こしていると考えられる要因を4Mのフレームワークを用いてMECEに分類してください。要因はロジックツリーで掘り下げ、対策を立案し実行スケジュールを立てたら報告書はWhyツリーのロジックツリーで整理し簡潔に作成してください。」責任者である貴方はこのように指示すれば良いのです。然しながら論理的思考力を共通言語を備えていない従業員にはこのように話しても何のことかさっぱり解らないでしょう。
以前は論理的思考力は理科系出身者に当然の如く期待される能力でした。確かに理科系学科の性質上論理的思考をする脳の部位は鍛えられると思...