‐経営方針の展開‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その34)

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 前回の事例その33に続いて解説します製品・技術開発は企業の総力が問われる事業であり、開発担当者に任せて解決できるような簡単なものではない。企業よっては開発担当者に一定期間何もしなくてよいから開発テ-マを探索するように指示している事例があるが、その背後に開発担当者を支援する組織運営法がどの程度配慮されているか、または、開発担当者の着想に協力して情報収集等の活動が適宜行われるような組織運営のル-ルが設けられているのか、それが問題です。
 
 開発担当者が単独で活動している例は比較的多いのですが、個人の才覚に依存するだけの開発活動では高度化された社会の中では開発効率が悪く、成果を上げる事は非常に困難です。管理者に一定期間休みを取らせて好きな方法で情報を収集するように制度化した企業などもあるようです。
 
 企業の針路を明確にせず、管理者や開発担当の技術者に期待をかけてみても担当者の孤立感が深まるのが落ちです。経営方針に基づき組織的に情報収集し、開発活動を展開していくようなシステムを作り上げる事が、現在の多くの企業に課せられた何よりも大切な課題です。
 
 中小企業は人材、資本、共に乏しいので、乏しい中で効果の上がる経営のあり方を研究して行く必要があります。その対策として先ず心掛け無ければならないことは、経営方針を明らかにして、それを踏まえた経営行動を取ることです。
 
◆経営方針の準備作業
 
 経済が高度成長期にあった時代には、中小企業に対する生産依頼は次々と押し寄せてきていました。そのため、経営方針などと言う難しい事を考えなくても事業を維持する事も出来ました。
 
 しかし、時代が変って、「他社の仕事はするな」と注文を付けていた発注先の企業は、今になると「自分で仕事を探せ、自分で生き残る道を決めよ」と突き放しています。このように受注確保が簡単に出来ない情勢になり方針が不明確な企業は、羅針盤を持たず大海に乗り出した船に等しいのです。また、経営計画を持たない企業は舵のない船に等しく漂流船になり目的港に入れません。方針が曖昧な企業では企業経営に適した人材育成が図れません。その理由は従業員の自己啓発の努力と経営者の考えの間に食い違いが生じるからです。また、目指す方向があいまいな状態では、幹部社員に希望が湧き上がって来ません。
 
 経営方針を明確にし、方針に沿って事業展開を図り、担当者相互間の役割分担と連携のあり方が明確で、「目で見る管理」を徹底させた組織運営が行われている事、つまり、情報の流れと仕事の流れの相互間に断絶された部分がなく、連続性が保たれてシステム化が図られている事が、生き残りのために不可欠の条件です。経営方針は言葉を変えれば経営トップの志を表したものであって、志が高くなければ企業の競争力を強化し、活性化を図ることは出来ません。
 
 経営方針が明確になり、努力すべき技術開発の方向が従業員に理解されたら、その方向に専門技術を究める希望が湧いてきます。どのような事に力を入れて努力すれば良いのか、経営の方向づけが定まらないため、苛立っている従業員が少なくありません。ある企業の管理者が漏らした言葉に「社長は○○会の研究会でいろんな事を学んできて、あれをせよ、これをせよと指示するが、方向性に一貫性がないため、真面目に取り組む気にならない。すればするほど内部が混乱する」このような心理に従業員が陥る事は経営の大きな損失であり、従業員の不幸です。
 
 仮に、人材育成のため、講習会や研究会に従業員を参加させ、学習の機会を与えても、経営方針が明確になっていないと、学習して身につけた内容と、企業が本当に必要としている内容の間に食い違いが生じます。教養として学んでおけば何時か役立つに違いない。との考えがあるかもしれませんが、実際に役立つような局面が訪れることは稀です。中小企業にそのような余裕があるとは思えません。
 
 経営方針を明らかにするに際して、構えて高度な難しいことを考える前に、経営者(経営幹部も含まれる)として今後何をしたいと思っているのか、自分の企業がどのようになれば良いと考えているのか、経営者の心の中を探検することから始めることが何よりも大切です。心の中を探検して「今までに取引先から褒められたこと、こんなことが出来ないかと要求されたこと、日常から自企業の特徴を漠然と意識していること、難しい問題を克服して自信を得たこと、密にやり遂げたいと考えている事」などを思い出し、その中から経営者...
 前回の事例その33に続いて解説します製品・技術開発は企業の総力が問われる事業であり、開発担当者に任せて解決できるような簡単なものではない。企業よっては開発担当者に一定期間何もしなくてよいから開発テ-マを探索するように指示している事例があるが、その背後に開発担当者を支援する組織運営法がどの程度配慮されているか、または、開発担当者の着想に協力して情報収集等の活動が適宜行われるような組織運営のル-ルが設けられているのか、それが問題です。
 
 開発担当者が単独で活動している例は比較的多いのですが、個人の才覚に依存するだけの開発活動では高度化された社会の中では開発効率が悪く、成果を上げる事は非常に困難です。管理者に一定期間休みを取らせて好きな方法で情報を収集するように制度化した企業などもあるようです。
 
 企業の針路を明確にせず、管理者や開発担当の技術者に期待をかけてみても担当者の孤立感が深まるのが落ちです。経営方針に基づき組織的に情報収集し、開発活動を展開していくようなシステムを作り上げる事が、現在の多くの企業に課せられた何よりも大切な課題です。
 
 中小企業は人材、資本、共に乏しいので、乏しい中で効果の上がる経営のあり方を研究して行く必要があります。その対策として先ず心掛け無ければならないことは、経営方針を明らかにして、それを踏まえた経営行動を取ることです。
 
◆経営方針の準備作業
 
 経済が高度成長期にあった時代には、中小企業に対する生産依頼は次々と押し寄せてきていました。そのため、経営方針などと言う難しい事を考えなくても事業を維持する事も出来ました。
 
 しかし、時代が変って、「他社の仕事はするな」と注文を付けていた発注先の企業は、今になると「自分で仕事を探せ、自分で生き残る道を決めよ」と突き放しています。このように受注確保が簡単に出来ない情勢になり方針が不明確な企業は、羅針盤を持たず大海に乗り出した船に等しいのです。また、経営計画を持たない企業は舵のない船に等しく漂流船になり目的港に入れません。方針が曖昧な企業では企業経営に適した人材育成が図れません。その理由は従業員の自己啓発の努力と経営者の考えの間に食い違いが生じるからです。また、目指す方向があいまいな状態では、幹部社員に希望が湧き上がって来ません。
 
 経営方針を明確にし、方針に沿って事業展開を図り、担当者相互間の役割分担と連携のあり方が明確で、「目で見る管理」を徹底させた組織運営が行われている事、つまり、情報の流れと仕事の流れの相互間に断絶された部分がなく、連続性が保たれてシステム化が図られている事が、生き残りのために不可欠の条件です。経営方針は言葉を変えれば経営トップの志を表したものであって、志が高くなければ企業の競争力を強化し、活性化を図ることは出来ません。
 
 経営方針が明確になり、努力すべき技術開発の方向が従業員に理解されたら、その方向に専門技術を究める希望が湧いてきます。どのような事に力を入れて努力すれば良いのか、経営の方向づけが定まらないため、苛立っている従業員が少なくありません。ある企業の管理者が漏らした言葉に「社長は○○会の研究会でいろんな事を学んできて、あれをせよ、これをせよと指示するが、方向性に一貫性がないため、真面目に取り組む気にならない。すればするほど内部が混乱する」このような心理に従業員が陥る事は経営の大きな損失であり、従業員の不幸です。
 
 仮に、人材育成のため、講習会や研究会に従業員を参加させ、学習の機会を与えても、経営方針が明確になっていないと、学習して身につけた内容と、企業が本当に必要としている内容の間に食い違いが生じます。教養として学んでおけば何時か役立つに違いない。との考えがあるかもしれませんが、実際に役立つような局面が訪れることは稀です。中小企業にそのような余裕があるとは思えません。
 
 経営方針を明らかにするに際して、構えて高度な難しいことを考える前に、経営者(経営幹部も含まれる)として今後何をしたいと思っているのか、自分の企業がどのようになれば良いと考えているのか、経営者の心の中を探検することから始めることが何よりも大切です。心の中を探検して「今までに取引先から褒められたこと、こんなことが出来ないかと要求されたこと、日常から自企業の特徴を漠然と意識していること、難しい問題を克服して自信を得たこと、密にやり遂げたいと考えている事」などを思い出し、その中から経営者が最も魅力を感じる内容を磨き上げることを主体にして、経営の今後の方向を位置付けるように暖めておくことから始めます。
 
 経営方針を設定するのには、経営者の信念に基づいて決める場合と、経営幹部が議論する中からまとめていく方法があります。前者は個性の強い経営トップが取る方法であり、後者は比較的に穏やかな経営トップが取り入れる方法です。何れの場合でも経営方針として決めたからには、経営者が強い指導力を発揮し経営方針に沿って事業展開を図っていく必要があります。看板に掲げているだけで、事業展開のあり方が方針と一致していないようでは、鋭い競争力を発揮できません。
 
 経営方針とは、企業の発展を図るため、その方向に沿って長期間にわたって努力するための方向づけをすることを意味します。創造的な経営を目指すには、現場観察に基づく現状把握を的確に行い、僅かな変化の兆候を見逃す事無く読み取り、その方向に新しい事業展開の可能性を見つけ出すような取り組み方が必要です。その過程で、時代の変化との間に接点が出来るような事業の展開方法に創意を注ぎ込む事が大切です。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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