‐設計の問題 第1回‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その26)

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 inf231設計上の問題が品質に影響する事項としては、次の5点があります。
 
      1.仕様変更
      2.特注品
      3.図面誤り
      4.作業性困難
      5.ITが活用される企業風土
 
 これらについて、今回は、第1回として、1から2項を記述します。次回は、第2回として、3から5項を記述します。ただし、発注先が設計を行い、図面や仕様書を支給されて加工だけを行う場合には、設計図の問題点について発注者に改善の要求をする必要があり、基本的には自企業で設計する場合と対応の仕方の基本的な考え方は同じです。
 

1.仕様変更

 仕様変更が設計の段階で生じた場合には、対応がやり易いが、生産工程に流れた後での変更は損失が大きい。更に、変更が多いと連絡ミスなどが基になり、不適合品の発生を招きます。連絡ミスが発生する要因として、発注先から電話で仕様変更の連絡があり、その内容を口頭で社内に連絡する場合に聞き違い、聞き漏らし等の連絡ミスが生じます。 この様な問題が生じないようにするには、電話で受注した時、電話の横に常置してある受信連絡用紙に仕様変更の内容、相手先の担当者名、受信時刻、社内での連絡先及び受信者名などを記載する様にし、更に、この内容を相手先に復唱して確認します。
 
 また、客先に承認図を提出するときに、変更要求の期限を明示し、それよりも遅れて変更依頼が発生した場合には、追加請求があり得ること、納期の調整も必要となることを通知する姿勢が欲しい。下請けだからとして、何でも相手の要求に従う考え方は根本的に間違っています。技術力の弱い企業では、ややもすると相手の要求を何でも受け入れることで、受注確保の手段にしたいとの意向が出易いが、うまく利用されるだけで利用価値がなくなれば見放されるだけです。
 
 一刻も早く技術水準の向上を図り発言力を強めることが何よりも大切なことです。優先すべき具体的な方法は不適合品の発生を無くしていく事に全力を尽くすことです。更に、大切な事は、仕様確認書を作成し事前に確認が必要な仕様項目の欄を設けておき、この欄を埋めるように仕様確認を行い、返答が得られないときには、回答期限を設けてそれよりも遅滞する時には、納期が遅れる事があり得ることを告げるようにします。これにより仕様変更が次々と発生する事を予防します。仕様確認書は最初から項目を全て網羅する事が出来ないかもしれません。その場合は、気が付いた都度項目を補充していきます。
 

2.特注品

 多くの中小企業は特注品の受注比率が高く、繰り返し性のある製品の受注比率は高くありません。しかし、特注品の内容をよく観察すると、部分的に類似の部分がかなり認められます。この類似の部分に着目してこの部分で寸法や形状、そして、要素技術等で幾つかに分類してまとめる方法を検討します。
 
 このようにして、既に記述した事であるが部分の標準化を図れば、設計、外注、生産等のコスト低下に寄与するだけでなく、品質問題でも安定した生産が持続できる可能性が高くなります。例えば、測定、加工などに必要なジグの作成が可能になり、品質チェックや作業性の向上に貢献することになります。
 
 特殊な製品を開発する事を得意にしている設計者が少なくありませんが、このような設計者は、企業の業績向上に役立っていない事を自覚する必要があります。設計者の本来の役目は製品に必要な機能を備えた設計を行う事、総合的に生産コストが下がるような事を配慮した総合技術の視点による設計とする責務があります。設計の仕方で生産コストが大きく変るから、設計者は現場に出かけて自己が設計した製品がどのような具合に生産されているのか、それを確かめると、特注品の生産性が如何によくないか、それが実感できます。
 
 ただし、特注品を全面的に排除する事は企業の将来に向けての発展の芽を摘む事になる恐れがあります。特注品の中から新製品や新技術が育って行く事があり得るからで、その対策としては、受注品の中における特注品の...
 inf231設計上の問題が品質に影響する事項としては、次の5点があります。
 
      1.仕様変更
      2.特注品
      3.図面誤り
      4.作業性困難
      5.ITが活用される企業風土
 
 これらについて、今回は、第1回として、1から2項を記述します。次回は、第2回として、3から5項を記述します。ただし、発注先が設計を行い、図面や仕様書を支給されて加工だけを行う場合には、設計図の問題点について発注者に改善の要求をする必要があり、基本的には自企業で設計する場合と対応の仕方の基本的な考え方は同じです。
 

1.仕様変更

 仕様変更が設計の段階で生じた場合には、対応がやり易いが、生産工程に流れた後での変更は損失が大きい。更に、変更が多いと連絡ミスなどが基になり、不適合品の発生を招きます。連絡ミスが発生する要因として、発注先から電話で仕様変更の連絡があり、その内容を口頭で社内に連絡する場合に聞き違い、聞き漏らし等の連絡ミスが生じます。 この様な問題が生じないようにするには、電話で受注した時、電話の横に常置してある受信連絡用紙に仕様変更の内容、相手先の担当者名、受信時刻、社内での連絡先及び受信者名などを記載する様にし、更に、この内容を相手先に復唱して確認します。
 
 また、客先に承認図を提出するときに、変更要求の期限を明示し、それよりも遅れて変更依頼が発生した場合には、追加請求があり得ること、納期の調整も必要となることを通知する姿勢が欲しい。下請けだからとして、何でも相手の要求に従う考え方は根本的に間違っています。技術力の弱い企業では、ややもすると相手の要求を何でも受け入れることで、受注確保の手段にしたいとの意向が出易いが、うまく利用されるだけで利用価値がなくなれば見放されるだけです。
 
 一刻も早く技術水準の向上を図り発言力を強めることが何よりも大切なことです。優先すべき具体的な方法は不適合品の発生を無くしていく事に全力を尽くすことです。更に、大切な事は、仕様確認書を作成し事前に確認が必要な仕様項目の欄を設けておき、この欄を埋めるように仕様確認を行い、返答が得られないときには、回答期限を設けてそれよりも遅滞する時には、納期が遅れる事があり得ることを告げるようにします。これにより仕様変更が次々と発生する事を予防します。仕様確認書は最初から項目を全て網羅する事が出来ないかもしれません。その場合は、気が付いた都度項目を補充していきます。
 

2.特注品

 多くの中小企業は特注品の受注比率が高く、繰り返し性のある製品の受注比率は高くありません。しかし、特注品の内容をよく観察すると、部分的に類似の部分がかなり認められます。この類似の部分に着目してこの部分で寸法や形状、そして、要素技術等で幾つかに分類してまとめる方法を検討します。
 
 このようにして、既に記述した事であるが部分の標準化を図れば、設計、外注、生産等のコスト低下に寄与するだけでなく、品質問題でも安定した生産が持続できる可能性が高くなります。例えば、測定、加工などに必要なジグの作成が可能になり、品質チェックや作業性の向上に貢献することになります。
 
 特殊な製品を開発する事を得意にしている設計者が少なくありませんが、このような設計者は、企業の業績向上に役立っていない事を自覚する必要があります。設計者の本来の役目は製品に必要な機能を備えた設計を行う事、総合的に生産コストが下がるような事を配慮した総合技術の視点による設計とする責務があります。設計の仕方で生産コストが大きく変るから、設計者は現場に出かけて自己が設計した製品がどのような具合に生産されているのか、それを確かめると、特注品の生産性が如何によくないか、それが実感できます。
 
 ただし、特注品を全面的に排除する事は企業の将来に向けての発展の芽を摘む事になる恐れがあります。特注品の中から新製品や新技術が育って行く事があり得るからで、その対策としては、受注品の中における特注品の比率を事前に決め、その範囲内で営業活動を行います。特注品の目指す分野を明確にし、その方向に事業展開を図るためには経営方針を明確にしなければ、整合性のある取り組み方は出来ません。
 
 経営方針が明確になっていない状態で特注品を受注すると、企業内に「出来る、出来ない、売上高増加のため、利益にならない仕事」等と論争が絶えず企業の将来を見据えた視点での取り組みに欠け、不毛のエネルギ-消費が多くなる場合があります。特注品の中には、開発費用の一部を依頼先が負担する場合があります。 そのような形で受注した場合、開発した製品を他社に販売することは出来ないのが普通の事です。 しかし、その製品を構成する要素技術の幾つかを再利用することは可能になる場合が少なくありません。また、一定期間(普通2年程度か、ただし、製品の内容や技術的な難易度で一概に言えません)を経過したらその製品を他社に販売する事が許されるような契約を締結しておく事を考慮することが重要です。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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