‐経営理念と顧客満足の経営‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その40)

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1.経営理念と経営者の行動

 前回の事例その39に続いて解説します。経営理念とは、その企業の行動の規範を示したもので、経営者が事業に取り組むに際して自ら実践すべき事項として示したもので、従業員に対してその考え方を基盤にして業務に従事することを求めたものです。
 
 「自主自立。創造性の発揮。社会への貢献。日々研究。品質重視。人間尊重」等の掲示が見られますが、経営者が日ごろから行動の規範として考えている事を経営理念に掲げることが大切であって、何かで見かけた魅力的な言葉をコピ-して、掲示してみても、説得力はありません。掲示する前に幹部が検討して自分達の企業として実践すべき事項か、また、やり遂げる意欲を持続する覚悟があるのか、議論する場を持ち納得できる内容にした上で、経営理念として制定します。
 
 経営者がこれに背反したような行動をして、従業員に実践を要求することは、論外のことです。経営者自身が自らの行動の拠り所にしている事柄を経営理念として示し、経営者自身がそれを実践する事で大きな説得力を発揮します。その経営理念を根底において経営方針を明確にし、目指す方向に事業活動を展開するために経営年次計画を立て、経営努力を注ぎつづける事で現在の体制では実現できない事であっても、長期的には実現が可能になります。当初は困難に思える事でも方針実現に向けて考えを巡らす事で方針実現の着想が湧き上がってきます。
 
 反対に方針が不明確な企業では、当座の問題処理にだけ力が注がれ、長期的な視点で経営のあり方を考える発想が出てこないため、企業発展の手掛かりが得られません。似たような問題を発生させて損失を防止できない企業はこの事が根底にあります。
 

2.顧客満足の経営

 顧客及びその周辺からどの程度の情報収集が図られる仕組みが作られているのか、情報収集と企業内での伝達の仕組みの有無が、企業の競争力に大きな影響を及ぼします。顧客の「わがままな要求、もっともな要求、潜在的な問題で大きく表面化していないが放置できない問題、競合企業の動向」などの情報が顧客満足に影響するので、日常の業務を通じて一次情報を収集し、更に、二次、三次の質の高い情報に練り上げていく業務活動が日常的に行われていなければなりません。
 
 情報の収集、報告、伝達、分析及び活用の仕組みが組織全体に行渡っている事で、従業員の情報に関する感度が自然と鍛えられる事になり、顧客満足を取りたてて強調するまでもなく、従業員の意識は顧客の心を捉える行動になります。その仕組みの骨格をなすのは、顧客と接する機会の多い営業関係者の情報収集件数の目標値です。
 
 当然のことでありながら、確実に実現する事が難しい問題として、「品質、納期」においてクレ-ムゼロを実現することですが、これらは顧客満足に関して欠かす事の出来ない条件です。 品質クレ-ムゼロ、納期は他社に絶対負けない短納期、若しくは即納の事業展開を標榜している企業の場合、顧客は安心して発注することになり、それが...

1.経営理念と経営者の行動

 前回の事例その39に続いて解説します。経営理念とは、その企業の行動の規範を示したもので、経営者が事業に取り組むに際して自ら実践すべき事項として示したもので、従業員に対してその考え方を基盤にして業務に従事することを求めたものです。
 
 「自主自立。創造性の発揮。社会への貢献。日々研究。品質重視。人間尊重」等の掲示が見られますが、経営者が日ごろから行動の規範として考えている事を経営理念に掲げることが大切であって、何かで見かけた魅力的な言葉をコピ-して、掲示してみても、説得力はありません。掲示する前に幹部が検討して自分達の企業として実践すべき事項か、また、やり遂げる意欲を持続する覚悟があるのか、議論する場を持ち納得できる内容にした上で、経営理念として制定します。
 
 経営者がこれに背反したような行動をして、従業員に実践を要求することは、論外のことです。経営者自身が自らの行動の拠り所にしている事柄を経営理念として示し、経営者自身がそれを実践する事で大きな説得力を発揮します。その経営理念を根底において経営方針を明確にし、目指す方向に事業活動を展開するために経営年次計画を立て、経営努力を注ぎつづける事で現在の体制では実現できない事であっても、長期的には実現が可能になります。当初は困難に思える事でも方針実現に向けて考えを巡らす事で方針実現の着想が湧き上がってきます。
 
 反対に方針が不明確な企業では、当座の問題処理にだけ力が注がれ、長期的な視点で経営のあり方を考える発想が出てこないため、企業発展の手掛かりが得られません。似たような問題を発生させて損失を防止できない企業はこの事が根底にあります。
 

2.顧客満足の経営

 顧客及びその周辺からどの程度の情報収集が図られる仕組みが作られているのか、情報収集と企業内での伝達の仕組みの有無が、企業の競争力に大きな影響を及ぼします。顧客の「わがままな要求、もっともな要求、潜在的な問題で大きく表面化していないが放置できない問題、競合企業の動向」などの情報が顧客満足に影響するので、日常の業務を通じて一次情報を収集し、更に、二次、三次の質の高い情報に練り上げていく業務活動が日常的に行われていなければなりません。
 
 情報の収集、報告、伝達、分析及び活用の仕組みが組織全体に行渡っている事で、従業員の情報に関する感度が自然と鍛えられる事になり、顧客満足を取りたてて強調するまでもなく、従業員の意識は顧客の心を捉える行動になります。その仕組みの骨格をなすのは、顧客と接する機会の多い営業関係者の情報収集件数の目標値です。
 
 当然のことでありながら、確実に実現する事が難しい問題として、「品質、納期」においてクレ-ムゼロを実現することですが、これらは顧客満足に関して欠かす事の出来ない条件です。 品質クレ-ムゼロ、納期は他社に絶対負けない短納期、若しくは即納の事業展開を標榜している企業の場合、顧客は安心して発注することになり、それが受注競争力になります。
 
 仮に、品質クレ-ムが発生した場合に何をおいても真っ先に納入先に迷惑が掛からないように応急処置を講じ、その後、発生原因の追求と再発防止対策を講じて納入先に報告する等の処理の仕方で、顧客の信頼を増すような結果になります。このような行動を全く取らないで、先に言い訳をして、問題を繕うことや受注金額との比較からこの程度で良かろうと考えて対策が遅くなり、発注者が困っている事への配慮に欠けた行動なっている場合には、信用が失墜します。当然の事ながら、以降の受注活動は難しくなります。
 
 クレ-ムを発生させたら発注者に迷惑をかける事が問題であり、損得勘定とは全く別の次元の問題として取り上げる事が特に大切です。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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