【モチベーションの考察 連載目次】
会社や組織レベルでいろいろな取り組みが行われ、個人の能力向上が行われています。一方で、開発現場では、一人ひとりの能力の 50% も引き出せていないのではないかと思います。今回は、モチベーション・コンサルティングを通じて感じたこと、考えたことをお伝えしたいと思います。現場の「やる気」を引き出すための何かしらの気づきを共有できればと思います。
3. コンフォートゾーンを出る
実は、モチベーション・コーチングを通じて気になるタイプの人たちがいます。彼らはありたい姿が明確で、自分らしさについても明確です。彼らは前述の未来志向でも、過去指向でもなく、今の自分を大切にしている現実志向といってもいいかもしれません。
置かれている環境下で自分の実力を出すことができているので、仕事に対する満足度も高いことが多いようです。自分の居心地がよい環境のことを「コンフォートゾーン」といいます。このタイプの人たちは自分のコンフォートゾーンを知っており、そこにいることでやる気も実力も出しているのです。
ただ、モチベーション・コーチングでは、このタイプの人たちのことが気になってしまいます。今の自分、今の環境を大切にしすぎていると感じるのです。今の仕事、今の環境に対する満足度は高いものの、このタイプの人にも不満なことはあります。そのときの反応は次のようなものです。
「計画的に仕事するようにいわれるのだけれど、締め切りに近づかないと本気が出ない性格だから難しい。ちゃんと結果は出しているのだから計画的になれればいいけど、今のままでも大丈夫」
「仕事をバリバリやりたいのに、残業規制があって思う存分仕事ができない。やる気を削がれる原因を作っていることを会社はわかっているんだろうか。ムダな時間の使い方をしている人だけ残業禁止にすればいいはず」
共通するのが、自分は仕事をちゃんとやっているし実力もある。自分に問題はないから周りが何とかすればいいというように思っていることがうかがえるという点です。さらに高いレベルを目指すのではなく、コンフォートゾーンにとどまることを選ぶのです。もっというと、今の自分で満足してしまい、成長の機会を逃していると思えるのです。
実際、締め切り間際で本気を出すスタイルでは、今はまだ良くても、より多くのメンバーを指導する立場になるなど将来のことを考えたら早晩困ることになるはずです。少なくとも、計画的に仕事を進めるために何が障害となっているのかを考えることは、自分の成長のための気づきを得ることになるでしょう。
同じように、会社が残業を禁止したから仕事はしないというのは自主性に欠ける考え方であり、どう過ごすのが良いのかを考えて実行する姿勢が大切なはずです。残業できなくても、独自に仕事を続ける工夫をするとか、良い機会だから手をつけることができなかったことをはじめてみるとか、自分の判断でできることがいろいろあることを忘れてはいけません。
コンフォートゾーンに...