脱炭素化取り組みの支援、ソリューションを提供し地域企業と伴走
1.エネルギー事業で培ったノウハウを集約、待ったなしの脱炭素経営を支援
2020年10月に日本政府から発表された「2050年カーボンニュートラル[1](炭素中和)宣言」。世界の風潮が「脱炭素化」に向かう中、国内製造業をはじめ、ビジネス規模を問わず、脱炭素化実現に向けた取り組みが強く求められています。また、脱炭素化はSDGs(持続可能な開発目標)で挙げられている17の目標すべての達成にも繋(つな)がる重要なテーマです。
e-dash(イーダッシュ)株式会社(代表取締役社長 山崎 冬馬氏)は今年4月から、エネルギーの可視化からCO2削減までをトータルでサポートするクラウド型ソフトウェアサービス「e-dash」を提供しています。同社は、三井物産株式会社(代表取締役社長 堀 健一氏)が、「脱炭素社会への移行を担い、地球温暖化問題に対し産業的解決をもたらす」ことを目的に、水素やアンモニア、カーボンキャプチャー(二酸化炭素回収)、モビリティ関連など、あらゆる脱炭素関連事業を集約し、取り組みを進める16番目の事業本部として、2020年に立ち上げたエネルギーソリューション本部から、新たに設立(2022年2月)された企業です。
2.担当者の9割が“脱炭素難民”
「これまで大企業のCSRレポートや報告書のみで語られてきたCO2排出量が、ここ数年であらゆる業種・規模の企業にとって、単にCSRというだけでなく、非常に重要なテーマ(事業戦略)としてシフトしてきた」と話す同社。ただ、企業側も同様の認識はあるものの「何を実施すれば良いのか、どこから着手したら良いのか分からない」といった課題を抱える企業が多いといいます。
【図説明】e-dash社などが行ったアンケート調査結果(同社提供)
実際、CO2排出量削減の取り組みについて、約400社を対象に行われたアンケート調査でも「何から手を付けて良いのか分からない」と感じている担当者が全体の9割を占め、“脱炭素難民”状態であることが分かっています。これら背景には「担当者の過半数が未経験者で、知識も不十分」といった実態が浮き彫りとなったほか「他社と比べた際の自社の取り組みの遅れ」や「目標が高く達成できるか」など、取り組み内容を不安視する声が多い結果となっています。特に中小企業では「ステークホルダーからの評価」を不安視する傾向が高いようです。
【図説明】e-dash社などが行ったアンケート調査結果2(同社提供)
3.計画立案前の現状把握がボトルネックに
2050年にカーボンニュートラルの目標を達成するためには、2030年の中間目標[2]達成が欠かせません。既に計画立案と実施が望まれる状況下、同社では「計画立案の前に足元の状況を把握しなければならない。この部分が企業にとって大きなボトルネックになっているのでは」との仮説を立て、計画実施の第一歩としてCO2排出量を継続的かつ簡単に手間なく、正確に把握できる環境づくりが必要不可欠と判断、e-dash事業が始まりました。
現在は銀行や信用金庫などの金融機関70行庫と提携し、顧客へのサービス展開を図っています。これは、2022年7月に金融庁が策定した「金融機関における気候変動への対応についての基本的な考え方」で、各金融機関が顧客企業の脱炭素化を後押しする役割を担うことが期待されており、具体的な支援の手法としてCO2排出量の可視化についても言及したことが背景にあります。
特に国内企業の大多数を占める中小企業が脱炭素化の取り組みを進めていく中、同社も「各社の経営に一番に寄り添う全国の金融機関が担う役割は大変重要」とみています。
4.簡単操作でCO2排出量を自動計算、目標設定や進捗管理も手軽に
現在、約1,700拠点におけるCO2排出量の可視化を行っているe-dashです...
また、これらエネルギー使用量とCO2排出量が可視化されることで、削減目標の設定や進捗管理も簡単に行え、整備されたデータは対外公表などにも活用可能です。同社も「脱炭素化に向けた取り組みに対する専門部署を立ち上げることは難易度も高いため、専門知識を必要としないe-dashの導入は、取り組みの第一歩として多くの企業にとってもメリットになる」と話します。
【図説明】Webブラウザ上で「CO2排出量の可視化」が可能に(同社提供)
【図説明】エネルギーの可視化からCO2削減までをトータルにサポート(同社提供)
5.TCFDに基づく情報開示で進む「脱炭素ドミノ」
現在「e-dashユーザーの約半分が製造業」と話す同社ですが、特に製造業は脱炭素化に対し「何とかしなければならない」といった感度高いといいます。また、SC(サプライチェーン)では、下流の最終メーカーから、これまでのコスト、クオリティ、デリバリーに加え、サプライチェーン排出量(Scope 3)に対する取り組みも要請されるなど、SC全体で脱炭素化を目指す潮流となってきていることから、競争性を優位にするためにも将来を見据えた対応が求められています。同社も「脱炭素化に対する変化の早さを肌で感じている。大企業(プライム上場企業)がTCFD[4]に基づく情報開示を行なうことで、SCにも同様の要請を行う“ドミノ倒し”が次々と起こってくるのではないか」とみています。
最後に「まだ事業は始まったばかり。当面は各地域の金融機関と連携し、地域企業にとって重要な第一歩となる“CO2排出量の可視化”の貢献に集中したい。また、カーボンニュートラルの実現に向け、本業を通じた“脱炭素化の加速”もミッションとして掲げているため、可視化だけで終わらず、その先の脱炭素化に対する具体的な支援・ソリューションの提供を続け、お客様(企業)と共に長い道のりを歩んでいきたい」と2050年を見据えた新事業への意気込みを話してくれました。
記事:産業革新研究所 編集部 深澤茂
【記事中解説】
[1] カーボンニュートラル:CO2だけに限らず、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスを含む温室効果ガスを対象にしたもので、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目標としている。「全体としてゼロに」とは、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」ことを意味する。
[2] 2030年中間目標:2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指したもの。
[3] Scope(スコープ) 1・2・3
・Scope1:事業者施設などの燃料消費や社有車などの使用に伴う排出(直接排出)
・Scope2:事業者施設で購入した電気・熱などのエネルギー使用に伴う排出(間接排出)
・Scope3:輸送や配送など、事業活動に関連するその他の排出(Scope1、2以外の間接排出)
[4] TCFD:Task force on Climate-related Financial Disclosuresの略で、日本国内では「気候関連財務情報開示タスクフォース」と呼ばれ企業等に対し、気候変動関連リスク・機会に関する4項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)について開示することを推奨している。