【SDGs取り組み事例】ISO14001とSDGsの両輪で、環境パフォーマンスの向上図る 大同工業株式会社

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従業員主体の活動で持続可能な発展目指す  

大同工業本社

【目次】

     

    国内製造業のSDGs取り組み事例一覧へ戻る

    1.ビジネスモデルの独創性などから「神奈川がんばる企業エース」 に

    大同工業株式会社(神奈川県・代表取締役社長 梁川永昌氏)の創業は1932(昭和7)年。自動車用・産業用樹脂加工部品の製造(樹脂成形、メッキ、塗装)を事業の柱とし、金型開発から樹脂成形や樹脂メッキ、塗装、組付けまでの一貫生産を強みに、ニーズに即応した製品を提供しています。

    写真説明】3種のメッキ加工が施された大同工業製品。写真左から6価クロム、3価クロム、ベロアメッキ(同社提供)

    本社以外では、同県座間市ほかタイ王国(2拠点)にメッキ・塗装工場を設け、各拠点とも主な顧客は日本国内完成車両メーカー全般となっており、タイ王国では一部外資系完成車両メーカーも顧客としています。また、同社で長年培われてきた技術や雇用・環境対策などが評価され、2005(平成17)年には「かながわ中小企業モデル工場」に指定されたほか、ビジネスモデルの独創性や地域貢献度の高さから2018(同30)年から2年連続で「神奈川がんばる企業エース」に認定されています。

    写真説明】同社座間メッキ工場(B棟)と検査のようす(同社提供)

    2.環境ISOを使い、SDGsを回す取り組みへ

    表面処理として行われるメッキは、有害物質などを多く使用することから同社では2017(同29)年3月、環境負荷削減を目的にISO14001[1]を認証取得しています。ただ「ISO14001だけでは、上手く進めることができなかった」と試行錯誤を続けてきた同社でしたが2020(令和2)、同県からの呼び掛けを機に「かながわSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)パートナー」(第4期)に登録。現在はISO14001とSDGsの両輪で、環境パフォーマンス(環境業績)の向上を目的に取り組みを進めています。

    3.メッキ汚泥からレアメタルを抽出し再資源化

    同社では、これまで廃棄物として処理されてきたメッキ汚泥(メッキ工程で発生する排水)に希少金属(レアメタル)のニッケルが含まれていることに着目。年間100トンが排出されるメッキ汚泥に十数%ほどのニッケルが含まれていることから、リサイクル業者に回収と抽出を依頼。抽出されたニッケルは国内向けに販売され、「環境や当社のお財布にも優しい」(同社)再資源化が行われています(目標9、11、12)。また、ことし3月からは、メッキ接点コマの成形[2]に再生ABS樹脂材の使用を始めたほか、6価クロム[3]を含有しない3価クロム[4]メッキにも対応。メッキ工場では、1日4回の排水水質検査(メッキ工場)も行われるなど、徹底した水質汚濁防止策がとられています。
    一方、CO2排出抑制では、自家消費型80kW太陽光発電システムの導入をはじめ、各事業所において合計300基の蛍光灯器具をLED照明に置き換える取り組みが進められています(目標7、12、13)。

    表説明】エネルギー使用量削減推移とCO2削減推移(同社提供)※2021年度のCO2上昇は電力会社変更による係数変動のため

    写真説明】同社に導入された太陽光発電システム(同社提供)

     

     

    4.組織の持続成長考えた学習機会を創出

    同社では化学物質を取り扱う事から、国内の環境規制やELV[5]、RoHS[6]、REACH[7]などといった国際環境規制について学ぶ勉強会のほか、メッキ技術を習得するための講習会などを開いています。講師は管理職が中心ですが、未来の管理職に求められる知識や技術、教育方法を学ぶため、リーダー職などの従業員を講師役として起用する機会も設けています。「従業員に教えるためには、講師自身も学ぶ必要性が出てくる。知識や技術を学ぶといった積み重ねは、“持続可能な”といった面からみても上手く機能しているのでは」と評価しています(目標4、8)。
    また、ダイバーシティ推進では国内従業員124人に対し、女性従業員45人(比率36.3%)、次いで外国籍19人(4カ国、同15.3%)、高齢者7人(同5.6%)、障がい者5人(同4.0%)を雇用しており、政府目標と比較してもその高さが目立ちます。現在の女性管理職比率は0%ですが、係長職全体では女性が35.7%となっており2030年の目標達成年度に向けて期待ができる数字となっています。このほか、行動規範...

    従業員主体の活動で持続可能な発展目指す  

    大同工業本社

    【目次】

       

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      1.ビジネスモデルの独創性などから「神奈川がんばる企業エース」 に

      大同工業株式会社(神奈川県・代表取締役社長 梁川永昌氏)の創業は1932(昭和7)年。自動車用・産業用樹脂加工部品の製造(樹脂成形、メッキ、塗装)を事業の柱とし、金型開発から樹脂成形や樹脂メッキ、塗装、組付けまでの一貫生産を強みに、ニーズに即応した製品を提供しています。

      写真説明】3種のメッキ加工が施された大同工業製品。写真左から6価クロム、3価クロム、ベロアメッキ(同社提供)

      本社以外では、同県座間市ほかタイ王国(2拠点)にメッキ・塗装工場を設け、各拠点とも主な顧客は日本国内完成車両メーカー全般となっており、タイ王国では一部外資系完成車両メーカーも顧客としています。また、同社で長年培われてきた技術や雇用・環境対策などが評価され、2005(平成17)年には「かながわ中小企業モデル工場」に指定されたほか、ビジネスモデルの独創性や地域貢献度の高さから2018(同30)年から2年連続で「神奈川がんばる企業エース」に認定されています。

      写真説明】同社座間メッキ工場(B棟)と検査のようす(同社提供)

      2.環境ISOを使い、SDGsを回す取り組みへ

      表面処理として行われるメッキは、有害物質などを多く使用することから同社では2017(同29)年3月、環境負荷削減を目的にISO14001[1]を認証取得しています。ただ「ISO14001だけでは、上手く進めることができなかった」と試行錯誤を続けてきた同社でしたが2020(令和2)、同県からの呼び掛けを機に「かながわSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)パートナー」(第4期)に登録。現在はISO14001とSDGsの両輪で、環境パフォーマンス(環境業績)の向上を目的に取り組みを進めています。

      3.メッキ汚泥からレアメタルを抽出し再資源化

      同社では、これまで廃棄物として処理されてきたメッキ汚泥(メッキ工程で発生する排水)に希少金属(レアメタル)のニッケルが含まれていることに着目。年間100トンが排出されるメッキ汚泥に十数%ほどのニッケルが含まれていることから、リサイクル業者に回収と抽出を依頼。抽出されたニッケルは国内向けに販売され、「環境や当社のお財布にも優しい」(同社)再資源化が行われています(目標9、11、12)。また、ことし3月からは、メッキ接点コマの成形[2]に再生ABS樹脂材の使用を始めたほか、6価クロム[3]を含有しない3価クロム[4]メッキにも対応。メッキ工場では、1日4回の排水水質検査(メッキ工場)も行われるなど、徹底した水質汚濁防止策がとられています。
      一方、CO2排出抑制では、自家消費型80kW太陽光発電システムの導入をはじめ、各事業所において合計300基の蛍光灯器具をLED照明に置き換える取り組みが進められています(目標7、12、13)。

      表説明】エネルギー使用量削減推移とCO2削減推移(同社提供)※2021年度のCO2上昇は電力会社変更による係数変動のため

      写真説明】同社に導入された太陽光発電システム(同社提供)

       

       

      4.組織の持続成長考えた学習機会を創出

      同社では化学物質を取り扱う事から、国内の環境規制やELV[5]、RoHS[6]、REACH[7]などといった国際環境規制について学ぶ勉強会のほか、メッキ技術を習得するための講習会などを開いています。講師は管理職が中心ですが、未来の管理職に求められる知識や技術、教育方法を学ぶため、リーダー職などの従業員を講師役として起用する機会も設けています。「従業員に教えるためには、講師自身も学ぶ必要性が出てくる。知識や技術を学ぶといった積み重ねは、“持続可能な”といった面からみても上手く機能しているのでは」と評価しています(目標4、8)。
      また、ダイバーシティ推進では国内従業員124人に対し、女性従業員45人(比率36.3%)、次いで外国籍19人(4カ国、同15.3%)、高齢者7人(同5.6%)、障がい者5人(同4.0%)を雇用しており、政府目標と比較してもその高さが目立ちます。現在の女性管理職比率は0%ですが、係長職全体では女性が35.7%となっており2030年の目標達成年度に向けて期待ができる数字となっています。このほか、行動規範の作成をはじめ、新年度が始まることし9月からは、仕事や待遇、職場環境など10項目からなる従業員満足度調査を始める予定です(目標8、10)。
      このほか、健康経営の面では胃がん検診(胃カメラ)を希望する従業員(50歳以上)への全額負担をはじめ、産業医の協力により事業所内でのインフルエンザワクチン接種を行い、費用を半額負担することで接種率は80%以上となっています。また産業医から「プラスチックと健康影響」や「コロナメンタル」といったテーマの衛生情報が提供されています(目標3、8)。また、地域貢献では同社周辺の清掃活動ほか、昨年は「かながわコロナ医療・福祉等応援基金」(神奈川県主催)に対し、同社利益の中から一部が寄付されています(目標16、17)。

      写真説明】工場周辺で定期的に行われている清掃活動(同社提供)

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      5.“17のゴール”目指し「他人事」から「自分事」に変化

      これらSDGsに対する取り組みですが、始めた当初は事業活動をSDGsの定める17目標(169のターゲット)に当てはめた理解(考え)が、従業員の中でもなかなか進まなかったそうです。また、事業所が分かれていることに加え、従業員数も124人(国内)と決して多くないことから、同社も「業務を兼任する従業員が多いため、アイデア出しなど従業員に対する指導・教育に時間を割くことが難しかったうえ、コロナウィルス感染防止の点からも、大人数を集めることは極めて困難だった」と振り返ります。そこで、「ものづくりを進めるなか、自分たちが関わることができる分野(目標)があれば、少しずつ取り組みを進める姿勢で臨んでもらっている」と話しています。

      2030年に向け、同社で特定された4つの「サステナビリティ マテリアリティ」

      表説明】2030年に向け、同社で特定された4つの「サステナビリティ マテリアリティ」(同社提供)

      同社によると、SDGs活動を続けてきたことで、従業員を主体とした勉強会が積極的に開かれるようになったといいます。たとえば、メッキ工場のQCチームでは「排水処理装置を稼働させるにあたり、できるだけ水質を良く排出するためには」といったテーマで取り組みが進められており、同社も「SDGs (持続可能性)を認識し、ISO(教育訓練)の両輪で展開してきた成果」と評価しています。また、毎年出される経営方針とSDGs17の目標を基に、各部・各課で年度計画を立て運用が進められ、各課員は「年度目標=ゴール」として認識し、活動しているとのことです。
      2030年に向け同社では、サステナビリティビジョン「お客様から選ばれる会社になる」を実現するため、優先的に取り組む4つのサステナビリティ マテリアリティ(重要課題)を特定。目標の達成時期は「2025~2030年」と設定し、さらなる成長を目指します。

      記事:産業革新研究所 編集部 深澤茂


      記事中解説

      [1]ISO14001:環境マネジメントシステムに関する国際規格で、PDCA(Plan-Do-Check-Act)という概念に基づき、同マネジメントのレベルを継続的に改善していく仕組み。
      [2]※1:メッキハンガーとの結合部分を付与するために設けられた、爪のようなもの(メッキ後は切り離されます)。
      [3]6価クロム:メッキにおける耐食性、密着性に優れたクロム化合物。発がん性を有し、毒性も高いことから土壌汚染対策法で定められている特定有害物質。処理後のメッキ製品に毒性はない。
      [4]3価クロム:自然界の土中に多く存在し、密着性では6価クロムより優れた特性を持ち、無害という面が大きな特長。
      [5]ELV:ELV(End-of Life Vehicles Directive)指令の略称。使用済車両が環境に影響を与えないよう配慮することを目的として制定された。
      [6]RoHS:RoHS(Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment)指令の略称で、電気・電子機器における特定有害物質の使用制限。EU(欧州連合)で販売する電気・電子機器の有害物質を非含有とさせることを目的として制定された。
      [7]REACH:REACH(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)規則の略称で、EUにおける化学品の登録・評価・認可および制限に関する規則。

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