人材育成の相談を受け、面談をしたり、社内セミナーを受講してもらう時に抵抗感のような壁を感じるのは主にベテランの管理職の方々からです。この方々は大きく二つの層に分かれるように思います。 一つは実力も十分な実績もあり、これまで会社を支えてきた自負がある方です。
彼らは社内でも相応に認められており実務能力も高いので、改善活動の効果を最大限に高めるためにも欠かせない人材です。この「出来るベテラン」を如何に前向きにするかが一つのクリティカルキーですが、元々経営者の理念や考えに共感できず不満が蓄積されていた場合を除くと一定の意見交換をしているうちに建設的意見を引き出せるようになります。
もう一つの層がいわゆる問題管理職の方々です。全体的にマネージメント能力も実務能力も不足しており、やる気にも欠けるので周囲へも悪影響を与え社内を不活性化させる原因になっています。彼らには概ね次のような特徴があります。
•他部門の事は我関せずでセクショナリズムが強い
•会議を仕切れず結論が出せないまま先送りにする
•メール内容や報告書が要領を得ず、上長や部下から理由や根拠を問われる
•自分のやり方に拘り、他の代替案を受け付けない
•向上心に乏しく自己研鑚の姿勢が見られない
•会社の利益という観点で業務が出来ていない
うちの会社にも当てはまる人がいると感じる方も多いかと思いますが、恐らく多くの会社に該当する管理職の方が存在すると思います。以前はやる気もあり、仕事も出来ていたのが、次第に向上心を失い最低限の労力で仕事を処理するようになった結果、問題管理職になってしまった方もいます。
問題管理職は40代後半から50代に多く、職務に応じた能力を身につけてもらいたいと研修を企画する経営者の方も少なくないのですが狙い通りには行きません。30代の中堅社員はまだまだやる気も向上心もあるので、新しい知識やスキルの習得も前向きで熱意も十二分に感じられます。この手の方々は研修効果も高くフォローアップを適切に行えばかけた費用の分は実務で活かしてくれます。
しかし上述の問題管理職の方はあからさまにやる気が見られません。通常、研修後はモチベーションが高まっている事や、部下を率いる管理職であれば自ら実践して見本を示そうとするのですが、まるで研修など無かったかの様に不動です。
マンツーマンで意見交換をする場合はまだ良いですが、やる気ある若手と一緒に研修をすると周りの雰囲気を悪化させ、グループワークでも活発な意見が出なくなります。班を何度か編成し直すとこの特徴が顕著に見られます。これでは研修効果が大いに期待出来る若手スタッフのやる気も消沈してしまいます。
この様な管理職に共通しているのは概ね危機意識の欠如です。特に頑張らなくても降格や...
左遷も無いし、現状のポジションは維持できるので、今更研修を受けて能力向上するなど面倒臭いしペースを乱されたくないのです。
機械的に研修を行うより先に彼らに危機意識を植え付け、真剣さを取り戻してからの方がより効果的な育成研修が行えるでしょう。因みにこの様な状況は外資なら迷わず降格や減給、場合によっては解雇もあります。
日本企業経営者は良くも悪くも何とかして彼らにやる気を出して欲しいと考えます。おだてたりなだめたり色々行いますが実際は中々効果が見られないようです。この様な状況の場合、間に外部目線の第三者を入れると上手く行くことがあります。外部から俯瞰で見てもらう事も一つの戦略です。