着荷主の責任、アレコレを考える

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SCM

 

1.トラック待ち時間問題

物流用語では物流会社の顧客を荷主と呼びます。荷主も二つあり発送側を「発荷主」受け取り側を「着荷主」と呼びます。一般的に物流会社と契約するのは発荷主です。つまり発荷主は「この荷物を運んでください」と物流会社に依頼するとともに代金の支払いを行うのです。

 

着荷主は、発荷主が物流会社とどのような契約を結んでいるのかについては知りません。関心もないことでしょう。なぜなら、着荷主は物流コストを負担していないからです。これが影響しているかどうかはともかく、着荷主側で物流会社が困る事例に遭遇することがあります。

 

その筆頭に挙げられるのがトラックの「待ち時間」です。つまり荷、下ろしまで着荷主の構内で待たされるという問題です。 ある実態調査報告によると「1時間以上の待ち時間がある」ケースは、集荷時(発荷主)7.4%、配達時(着荷主)24.5%だそうです。

 

これは荷主へ配送に行った際、4回に1回は1時間以上待たされるという計算になります。1時間以上といったラフなデータですが、4時間や5時間といったケースがあることも事実です。

 

この待ち時間に対する対価が支払われているかどうかが一つの問題点になります。いろいろと聞いてみても、ほとんどが支払対象にはなっていないようです。これは物流会社にも責任があり、荷主会社と契約をする際「待ち時間における対価」を契約書に織り込んでいないという実態があります。ひどいケースだと契約書自体を作成していない事もあるようです。これは論外とは思いますが、契約書にあまり関心を寄せていない物流業界の弱みといえるかもしれません。

 

もう一つの問題が「トラックドライバーの労働時間の延長」です。昨今、運輸業界の残業時間が増えてきているようですが、その一因になっていることは間違いありません。

 

国土交通省は「トラック運送事業における下請・荷主適正取引ガイドライン」を改正し、この長時間労働の原因の一つである手待ち時間の改善に向け、着荷主の役割についても明記しています。ということで、この着荷主の構内における「待ち時間」短縮に向けての対策について考えていきたいと思います。

サプライチェーンマネジメント

 

2.荷主適正取引ガイドラインとは

国土交通省の「トラック運送事業における下請・荷主適正取引ガイドライン」によると、着荷主におけるトラック待ち時間に関し、以下のように記述されています。

 

【手待ち時間の改善における着荷主の役割】

サプライチェーン全体の最適化を進める上で 、輸送効率は重要な課題であり、着荷主においても、トラックの待ち時間の改善を進めることは大きな意義があります。

 

着荷主等においてもトラックの手待ち時間を調査し、実態把握するともに、手待ち時間が存在する施設、時間帯、状況等を特定し、分析することが望ましい。着荷主等は、 運送受託者から手待ち時間改善の申し入れがあった場合には、受付時間枠の設定や拡大を行い物流施内の貨物の平準化図ること及び貨物量に応じた物流施設の運営を目指すことが望ましい。着荷主等、運送委託者、運送受託者は定期的な会議を設ける等、手待ち時間の実態及びそれに係る問題意識を共有し、双方で改善策検討、実施することが望ましい。着荷主先でも、積み込時間等の調整を行える一元的な窓口を設置することが望ましい。

※特に配送センターでは、長時間の手待ち(妥当と思われない要請) が発生する傾向にあるため留意する必要がある。

 -------------------------------------------------------------------------------- 引用ここまで.

 

以上のように、トラックの待ち時間を改善することは、サプライチェーン全体の最適化につながることを指摘しています。これは当たり前のことですが、この待ち時間短縮はサプライチェーン全体のリードタイム短縮につながるのです。ということは発荷主にとっても着荷主にとっても、お互いのメリットであるといえるでしょう。だからこそ、この活動は意義あるものだと考えられるのです。

 

上記の文章のトーンは「望ましい」という、ややソフトな表現になっています。しかし同時に、このガイドラインでは独占禁止法における物流特殊指定、下請法、貨物自動車運送事業法などの法令に抵触する恐れがあることを示しています。これは荷主だけではなく、物流会社の親事業者も対象とされています。

 

これについてはトラックを待たせ対価を支払わない、あるいは輸送の安全を阻害するといった行為が、コンプライアンス問題であることを示していると思われます。

 

SCM

3.待ち時間解消の方策

トラックの待ち時間はなぜ発生するのでしょうか。

 

原因の一つに着荷主での「到着時刻」を定めていないことがあります。到着時刻を定めていない場合、多くの納入トラックが一定の時間帯に集中し、到着順に荷降ろしをしていくため、後から到着したトラックに待ちが発生するのです。前回お話した国土交通省の「トラック運送事業における下請・荷主適正取引ガイドライン」にもありますとおり、物流事業者から待ち時間の改善の要請があった場合、それなりの対応をすることが望ましいでしょう。

 

この対応策しては納入時間帯を分散させること、それとともに業者ごとに納入時刻を定めることが挙げられます。もう一つの要因としては、納入場所の手狭さが挙げられます。トラックの着けられるポートが一つしかない場合、分散してもある程度の待ち時間が発生する可能性があります。このような場合はトラックポートの増設が考えられます。

 

また荷降ろしをフォークリフトで行っている場合、その数量不足が納入待ちを招いていることが考えられます。着荷主のオペレーターが荷降ろしを実施している場合はオペレーターの工数不足、トラックド...

SCM

 

1.トラック待ち時間問題

物流用語では物流会社の顧客を荷主と呼びます。荷主も二つあり発送側を「発荷主」受け取り側を「着荷主」と呼びます。一般的に物流会社と契約するのは発荷主です。つまり発荷主は「この荷物を運んでください」と物流会社に依頼するとともに代金の支払いを行うのです。

 

着荷主は、発荷主が物流会社とどのような契約を結んでいるのかについては知りません。関心もないことでしょう。なぜなら、着荷主は物流コストを負担していないからです。これが影響しているかどうかはともかく、着荷主側で物流会社が困る事例に遭遇することがあります。

 

その筆頭に挙げられるのがトラックの「待ち時間」です。つまり荷、下ろしまで着荷主の構内で待たされるという問題です。 ある実態調査報告によると「1時間以上の待ち時間がある」ケースは、集荷時(発荷主)7.4%、配達時(着荷主)24.5%だそうです。

 

これは荷主へ配送に行った際、4回に1回は1時間以上待たされるという計算になります。1時間以上といったラフなデータですが、4時間や5時間といったケースがあることも事実です。

 

この待ち時間に対する対価が支払われているかどうかが一つの問題点になります。いろいろと聞いてみても、ほとんどが支払対象にはなっていないようです。これは物流会社にも責任があり、荷主会社と契約をする際「待ち時間における対価」を契約書に織り込んでいないという実態があります。ひどいケースだと契約書自体を作成していない事もあるようです。これは論外とは思いますが、契約書にあまり関心を寄せていない物流業界の弱みといえるかもしれません。

 

もう一つの問題が「トラックドライバーの労働時間の延長」です。昨今、運輸業界の残業時間が増えてきているようですが、その一因になっていることは間違いありません。

 

国土交通省は「トラック運送事業における下請・荷主適正取引ガイドライン」を改正し、この長時間労働の原因の一つである手待ち時間の改善に向け、着荷主の役割についても明記しています。ということで、この着荷主の構内における「待ち時間」短縮に向けての対策について考えていきたいと思います。

サプライチェーンマネジメント

 

2.荷主適正取引ガイドラインとは

国土交通省の「トラック運送事業における下請・荷主適正取引ガイドライン」によると、着荷主におけるトラック待ち時間に関し、以下のように記述されています。

 

【手待ち時間の改善における着荷主の役割】

サプライチェーン全体の最適化を進める上で 、輸送効率は重要な課題であり、着荷主においても、トラックの待ち時間の改善を進めることは大きな意義があります。

 

着荷主等においてもトラックの手待ち時間を調査し、実態把握するともに、手待ち時間が存在する施設、時間帯、状況等を特定し、分析することが望ましい。着荷主等は、 運送受託者から手待ち時間改善の申し入れがあった場合には、受付時間枠の設定や拡大を行い物流施内の貨物の平準化図ること及び貨物量に応じた物流施設の運営を目指すことが望ましい。着荷主等、運送委託者、運送受託者は定期的な会議を設ける等、手待ち時間の実態及びそれに係る問題意識を共有し、双方で改善策検討、実施することが望ましい。着荷主先でも、積み込時間等の調整を行える一元的な窓口を設置することが望ましい。

※特に配送センターでは、長時間の手待ち(妥当と思われない要請) が発生する傾向にあるため留意する必要がある。

 -------------------------------------------------------------------------------- 引用ここまで.

 

以上のように、トラックの待ち時間を改善することは、サプライチェーン全体の最適化につながることを指摘しています。これは当たり前のことですが、この待ち時間短縮はサプライチェーン全体のリードタイム短縮につながるのです。ということは発荷主にとっても着荷主にとっても、お互いのメリットであるといえるでしょう。だからこそ、この活動は意義あるものだと考えられるのです。

 

上記の文章のトーンは「望ましい」という、ややソフトな表現になっています。しかし同時に、このガイドラインでは独占禁止法における物流特殊指定、下請法、貨物自動車運送事業法などの法令に抵触する恐れがあることを示しています。これは荷主だけではなく、物流会社の親事業者も対象とされています。

 

これについてはトラックを待たせ対価を支払わない、あるいは輸送の安全を阻害するといった行為が、コンプライアンス問題であることを示していると思われます。

 

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3.待ち時間解消の方策

トラックの待ち時間はなぜ発生するのでしょうか。

 

原因の一つに着荷主での「到着時刻」を定めていないことがあります。到着時刻を定めていない場合、多くの納入トラックが一定の時間帯に集中し、到着順に荷降ろしをしていくため、後から到着したトラックに待ちが発生するのです。前回お話した国土交通省の「トラック運送事業における下請・荷主適正取引ガイドライン」にもありますとおり、物流事業者から待ち時間の改善の要請があった場合、それなりの対応をすることが望ましいでしょう。

 

この対応策しては納入時間帯を分散させること、それとともに業者ごとに納入時刻を定めることが挙げられます。もう一つの要因としては、納入場所の手狭さが挙げられます。トラックの着けられるポートが一つしかない場合、分散してもある程度の待ち時間が発生する可能性があります。このような場合はトラックポートの増設が考えられます。

 

また荷降ろしをフォークリフトで行っている場合、その数量不足が納入待ちを招いていることが考えられます。着荷主のオペレーターが荷降ろしを実施している場合はオペレーターの工数不足、トラックドライバーが自ら荷降ろしをする場合は、フォークリフトの台数不足が考えられます。以上、これらへの対応が着荷主の課題となるでしょう。

 

また待ち時間ではなく、荷降ろし時間そのものが長くなる可能性があります。その要因には次のようなものが考えられます。荷降ろし時の運搬距離が長い、荷降ろし場が分かりづらく迷いが発生する、荷降ろし時に仕分けや棚入れなどの付帯作業が発生する、などです。まず荷降ろし距離短縮のためにトラックポートと荷降ろし場を近接化することを実行します。また迷い防止のためには、表示を誰が見ても分かるように、大きく目立つように付けましょう。最後に、これは契約で決まることでしょうが、荷降ろし時の付帯作業について、少なくとも取り決めの無いことを、トラックドライバーにやらせることは慎む必要があるでしょう。

・・・・・・・・・・・・・

着荷主は物流事業者に支払いを行っていませんので、余分なことをやらせてしまう可能性があります。しかしドライバーが不足している昨今ではできる限り彼らの負荷を軽減し、多くの仕事に対応できる環境づくりが必要です。ぜひ一度こういった視点で着荷の荷降ろしをチェックしていただきたいと思います。

 

 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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