前回は、鹿児島県薩摩川内市と共同で、増えすぎた竹を集成材として利用するための取り組みを進める株式会社日建ハウジングシステムを紹介しましたが、今回は同社設計部で働く女性たちの「職場で着る服はあっても、着たい服がない」といった声から誕生したオーダーメードのワークウェア「SWITCH WEAR(スイッチウェア)」について吉岡智子さんにお話をうかがいました。※吉岡の「吉」は土の下に口です。
1.女性として、設計者としてカッコよく働きたい
設計部で働く女性が増える中、建設現場で着るワークウェアは男性用しか無く、デザインやサイズが合わないといった悩みがあったといいます。このような悩みを背景に誕生したSWITCH WEARには「女性として、設計者としてカッコよく働きたい。現場以外でも使え、ポータブルに持ち運びができるウェアが欲しい」、「袖を通すたび、スイッチを入れてくれる一着を」との思いが込められています。製作にあたっては女性従業員だけでなく、男性従業員の声も取り入れながら、約1年の歳月をかけ「働く女性のためのワークウェア」が生まれました。
完成までにはコンセプトをはじめ、色や生地、デザインなど全てにおいて議論を重ね、意思疎通を図りながらプロジェクトを進めたといいます。生地については軽さと耐久性の高さを求めた結果、建築資材で使用される「タイベック」を採用。タイベックは不織布の一種で、建築資材では遮熱性や防水・透湿性、強度に優れていることから、主に木造戸建ての外壁材内側に断熱材と共に使われているほか、大量生産にも向いているため、医療現場や粉塵(じん)対応防護服などの生地としても使われています。また、近年はアウトドア向けとして衣類やバッグ、テントなども販売され、紙のような皺(しわ)感のある表情を持った質感が特徴です。
2.働くスタイルに合わせた「自分たちのためのワークウェア」
製作に当たっては、デザインなどのアイデア出しは同社から行い、縫製方法はアパレル製造業者と詰めていきましたが、開始当初は服のコンセプト(建築資材で軽くて丈夫)はまとまったものの、社内で意思の疎通を図りながら縫製可能な工場を探すことは、困難を極めたそうです。また、設計者の用途に加え、生地や糸の色のほか、形など各自の希望に沿ったデザインに仕上げるため、試行錯誤が続きました。ポータブル化にいたっては、現場服として持ち運ぶため、収納の早さや手順も突き詰めたといい「皆、究極を求めていくにつれ、締め切り(時間)との戦いも考慮しなければならなくなった」と、当時を振り返ります。現在、SWITCH WEARは上着以外に、急な現場対応でも着用可能なパンツタイプも用意されています。
【写真説明】SWITCH WEARは上着以外に、ジャンプスーツやコートなどを製作した(同社提供)
【写真説明】収納の早さや手順も突き詰め、パッカブル化されたSWITCH WEAR(同社提供)
SWITCH WEARの販売は、一般には行われていませんが、今回のように「職場で着る作業着に不便を感じているため、改善したい」といったお困りごとがあれば、素材やデザインなどの提案が対応可能ということです。これまで、新興住宅街にあるコミュニティハウススタッフのウェアのほか、養鶏や花き業界などで自分たちの働き方や労働環境に照らし合わせ、デザインに落とし込んだ「自分たちのためのワークウェア」が誕生していま...