トンネル崩落事故に思う「安全設計」のあるべき姿

 笹子トンネルの天井落下事故は、安全点検の問題ばかりがクローズアップされていますが、あの事故の基本は「事故が起きた時に被害が最小になる設計問題」の欠如であると考えています。製品や構造物などの全ての部品は劣化して寿命があることは自明ですから、十分な時間がたてば故障率は100%と考えるべきです。その前提で設計するなら、どのような構造にすべきかを考えるのが「戦略的技術者」ではないでしょうか。市場のクレームのほとんどは設計責任ですから、設計者が責任を自覚すれば、単に天井を支える構造の「機能設計」をすればいい、という事ではないはずです。点検や劣化時の事故防止など、設計者の責任を自覚すれば、自然と戦略的思考になるはずです。

 天井の設計者は、天井裏に換気ダクトをつけるという軽い気持で設計したのではないでしょうか。しかし、本来は二階建ての建造物を設計するという考え方でなければならないはずです。あんな重たいコンクリートの天井(実は床)が吊り下げ構造だったとは信じられないのです。

 1トンもあるコンクリートの板材なら、それを支える梁構造が必要だと思います。 安全設計を考えた場合、中央の支えやボルトが外れても天井の梁は落ちないような梁構造にして、落下事故を防げる構造にすべきだったのです。

 品質工学では、事故は必ず起こると考えて、「事故が起きた時には、被害が最小になるような安全設計を行う」ことを考えているのです。

 戦略の無い技術者は、落下など起きないと考えて設計しているのです。戦略性のない技術者は、失敗を「想定外」で逃げればよいと考えているのではないでしょうか。

過去に起きたJR脱線事故やエレベータや回転ドアによる死亡事故や原発問題でも事故が起きた時は設計の限界を超えた「想定外」で片づけていますが、すべては想定内の設計問題と考えるべきです。

 

 日常の点検などは応急処置であって、根本的な対策は事故が起きた時に被害が最小になるような「安全設計」を見直すことが急務なのです。

日本では品質の「安定化設計」も碌にできていませんが、もっと悪いのが「安全設計」で...

す。

品質工学では、安全設計とは事故が起きた時、被害が最小になるように安全装置を付けて人命を救うこと考えています。

 

 下の図に示した事例は、1988年に東京のディスコでシャンデリア照明器具が落下して、6名の青年が犠牲になった事故です。

品質工学では添付のように安全設計を行い、当時は6名の青年が死亡して9.3憶円の被害を出したのですが、安全設計では200万円の費用で対策できることを提案しています。もちろん人命の損失はゼロと考えるのです。

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