メーカー物流の勘所 (その2)

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 前回のその1に続いて解説します。
SCM 

3. 容器モジュールの統一

 サプライヤーごとに容器モジュールが異なることがありますので、これを統一しないまま取り組むとトラックに混載ができないことがあります。しかし、落ち着いて考えれば当然のことなので、しっかりと調達物流改善の準備事項としてやっておく必要があります。一時的に容器を買い替えるための投資が必要になりますが、この投資は早期に回収できる可能性があります。メーカーでは物流コストの中で輸送コストが一番費用がかかっているので、そこを改善できる調達物流改善を実施すれば十分に効果はあるはずです。容器モジュール改善のポイントは主として次の3点になります。
 
(1) 容器同士の積み重ねが可能であること
(2) 容器は主に使うトラックの輪切りで設計すること
(3) 積み合わせた際にピンホールなどのムダな空間が発生しないこと
 
 日本はJIS規格を重んじる風潮がありますが、これはいつでも正しいとは限りません。1.1系のパレットをトラックに積むとムダな空間が発生してしまうからです。トラックサイズが衝なのか、1.1mが衝なのかという論議がありますが、長距離を運搬するのであれば、トラックまたはコンテナのサイズを衝にすべきでしょう。さて調達物流で物が入ってきたら次はその資材や部品を生産ラインに届けるという物流が発生します。この時にまず検討しなければならないのが調達資材荷姿です。たいていの場合、ボックスに入ってくるでしょうから、その入れ方や入数の問題が発生します。この荷姿をサプライヤーからの一貫荷姿にするかどうかも重要な論点になります。
 
 サプライヤーからの一貫荷姿とは、サプライヤーの最終工程で作成した荷姿をそのまま工場の生産ラインのトップまで形を変えずに運ぶ荷姿を指します。あるべき姿を言えば部品や資材は容器に入っておらず、裸のまま生産ラインに供給されると良いのですが、途中に運搬があるとそういうわけにはいきません。つまり荷姿とは運搬具であると考えたほうが良いでしょう。
 

4. 在庫管理の考え方

 皆様が物流会社の立場で顧客の仕事を請け負う場合、「在庫管理」という業務についてどのように考えますでしょうか。在庫管理と言いましてもその範囲は広く、顧客から預かった荷物の品質を管理すること、数量を管理すること、在庫量が適正となるように保つこと、そのためのアクションを自ら行うことなど多岐にわたります。ほとんどの物流会社の方が「品質を保つこと」が在庫管理であると考えられています。それ以外は顧客の仕事であるというスタンスです。
 
 この考え方は間違っていません。保管業務を顧客から言われたとおりに実行するだけであれば、最低限預かった時の状態を保持することが物流会社の役割だと言えそうです。もし昔ながらの運搬業務や輸送業務、保管業務だけを行うのであればこういった考え方でも間違いはありませんが、一方でその仕事だけで高い単価をつけることはほぼ不可能です。なぜならこういった単純な仕事であればどの会社でもできる上、会社間で差がつかないからです。顧客は入札を繰り返し、最も価格の安い会社に発注します。
 
 むしろ物流会社は「顧客から預かった荷物の品質を管理すること」は当たり前として、さらに「数量を管理すること」、「在庫量が適正となるように保つこと」、「そのためのアクションを自ら行うこと」が求められていることに気づくべきでしょう。顧客は何に困っているのか、何を欲しているのかについて常に提供側は考えなければなりません。そしてそれに気づいたら、その状態を「物流商品」として提供することでお金をいただいて解決することを考えなければなりません。これが物流会社のバリューになります。
 
 特にメーカーの場合は極力在庫が最少となるようにさまざまな工夫を行っています。サプライチェーン全体の在庫が最少となればリードタイムが短縮し、顧客へ届ける納入リードタイムが短くなります。メーカー物流のキーワードは「リードタイム短縮」です。だからこの点を念頭に置いて物流商品を考える必要があるのです。
 

5. 在庫管理への積極的関与を

 在庫はいろいろな活動の結果として顕在化するものです。メーカーの場合はものの買い方や生産の仕方が在庫という結果になって表面化するのです。一方でメーカー内では「在庫はすべての問題点を隠してしまう困りもの」であるという認識があります。これはどういうことかでしょうか。例を挙げて考えていきましょう。ある会社で出荷量の5日分相当の在庫を持っていました。本来であれば前日に入ったオーダーを当日に作り、翌日に納入するので納入リードタイムは受注から2日ということになります。これだけの体力のある会社なのになぜ5日分もの在庫を持たなければならないのでしょうか。これを調べていくと次のようなことがわかりました。
 
 過去に一度だけ特定の設備が故障し、3日間停...
 前回のその1に続いて解説します。
SCM 

3. 容器モジュールの統一

 サプライヤーごとに容器モジュールが異なることがありますので、これを統一しないまま取り組むとトラックに混載ができないことがあります。しかし、落ち着いて考えれば当然のことなので、しっかりと調達物流改善の準備事項としてやっておく必要があります。一時的に容器を買い替えるための投資が必要になりますが、この投資は早期に回収できる可能性があります。メーカーでは物流コストの中で輸送コストが一番費用がかかっているので、そこを改善できる調達物流改善を実施すれば十分に効果はあるはずです。容器モジュール改善のポイントは主として次の3点になります。
 
(1) 容器同士の積み重ねが可能であること
(2) 容器は主に使うトラックの輪切りで設計すること
(3) 積み合わせた際にピンホールなどのムダな空間が発生しないこと
 
 日本はJIS規格を重んじる風潮がありますが、これはいつでも正しいとは限りません。1.1系のパレットをトラックに積むとムダな空間が発生してしまうからです。トラックサイズが衝なのか、1.1mが衝なのかという論議がありますが、長距離を運搬するのであれば、トラックまたはコンテナのサイズを衝にすべきでしょう。さて調達物流で物が入ってきたら次はその資材や部品を生産ラインに届けるという物流が発生します。この時にまず検討しなければならないのが調達資材荷姿です。たいていの場合、ボックスに入ってくるでしょうから、その入れ方や入数の問題が発生します。この荷姿をサプライヤーからの一貫荷姿にするかどうかも重要な論点になります。
 
 サプライヤーからの一貫荷姿とは、サプライヤーの最終工程で作成した荷姿をそのまま工場の生産ラインのトップまで形を変えずに運ぶ荷姿を指します。あるべき姿を言えば部品や資材は容器に入っておらず、裸のまま生産ラインに供給されると良いのですが、途中に運搬があるとそういうわけにはいきません。つまり荷姿とは運搬具であると考えたほうが良いでしょう。
 

4. 在庫管理の考え方

 皆様が物流会社の立場で顧客の仕事を請け負う場合、「在庫管理」という業務についてどのように考えますでしょうか。在庫管理と言いましてもその範囲は広く、顧客から預かった荷物の品質を管理すること、数量を管理すること、在庫量が適正となるように保つこと、そのためのアクションを自ら行うことなど多岐にわたります。ほとんどの物流会社の方が「品質を保つこと」が在庫管理であると考えられています。それ以外は顧客の仕事であるというスタンスです。
 
 この考え方は間違っていません。保管業務を顧客から言われたとおりに実行するだけであれば、最低限預かった時の状態を保持することが物流会社の役割だと言えそうです。もし昔ながらの運搬業務や輸送業務、保管業務だけを行うのであればこういった考え方でも間違いはありませんが、一方でその仕事だけで高い単価をつけることはほぼ不可能です。なぜならこういった単純な仕事であればどの会社でもできる上、会社間で差がつかないからです。顧客は入札を繰り返し、最も価格の安い会社に発注します。
 
 むしろ物流会社は「顧客から預かった荷物の品質を管理すること」は当たり前として、さらに「数量を管理すること」、「在庫量が適正となるように保つこと」、「そのためのアクションを自ら行うこと」が求められていることに気づくべきでしょう。顧客は何に困っているのか、何を欲しているのかについて常に提供側は考えなければなりません。そしてそれに気づいたら、その状態を「物流商品」として提供することでお金をいただいて解決することを考えなければなりません。これが物流会社のバリューになります。
 
 特にメーカーの場合は極力在庫が最少となるようにさまざまな工夫を行っています。サプライチェーン全体の在庫が最少となればリードタイムが短縮し、顧客へ届ける納入リードタイムが短くなります。メーカー物流のキーワードは「リードタイム短縮」です。だからこの点を念頭に置いて物流商品を考える必要があるのです。
 

5. 在庫管理への積極的関与を

 在庫はいろいろな活動の結果として顕在化するものです。メーカーの場合はものの買い方や生産の仕方が在庫という結果になって表面化するのです。一方でメーカー内では「在庫はすべての問題点を隠してしまう困りもの」であるという認識があります。これはどういうことかでしょうか。例を挙げて考えていきましょう。ある会社で出荷量の5日分相当の在庫を持っていました。本来であれば前日に入ったオーダーを当日に作り、翌日に納入するので納入リードタイムは受注から2日ということになります。これだけの体力のある会社なのになぜ5日分もの在庫を持たなければならないのでしょうか。これを調べていくと次のようなことがわかりました。
 
 過去に一度だけ特定の設備が故障し、3日間停止したことがあったとのことです。最近ではチョコ停はあるものの、これほどまでのドカ停は発生していません。この在庫は工場の保全部門の要請で保有していたことが分かったのです。5日分もの在庫があれば場所も容器も管理も発生し、それが工場コストとして収益を圧迫することになっています。そこで工場長の指示でこの在庫をいったん凍結することにしました。
 
 ロープで在庫を囲い、動かすことを禁じたのです。しばらくの間、その在庫に手を付ける必要がなければ削減してしまおうと考えたわけです。結果的に5日分の在庫は保全担当者の安心在庫だということがわかり、それを削減することになったわけですが、一方で安心在庫を削られた形となった保全部門には緊張感が生じたのです。今まで以上に予防保全をきっちりと行うことで、ドカ停につながるようなトラブルを防ごうという活動が始まったのです。
 
 いかがでしょうか。この工場では、在庫があるために、保全部門が予防保全という重要な活動に真剣に取り組んでこなかったという問題点が隠されていたのです。実はメーカーではこういった事象がいくつも在庫によって見えなくなっているのです。問題を顕在化するためにも在庫削減活動は重要です。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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