物流費値上げが改善のチャンス

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1. 輸送コスト改善を実施しよう

SCM
 最近は人材不足に起因する値上げが話題になっています。この人員不足は高齢化に伴い労働力人口が減少している影響です。物流事業者では人員不足を理由に真っ先に他の産業に先立って値上げを始めました。今までなかなか値段を上げることなどできなかった物流業でやっと値を上げるチャンスが到来したといったところでしょう。確かにそれに対する是非の論議はあるでしょう。製造業は「一歩の削減」といった血がにじむような改善努力を行って値段を上げないようにしています。
 
 これに対して物流業ではどうでしょうか。製造業並みの努力をしているのであれば、値上げもわからないではありません。しかし、そこまでの努力もせずに単純に人がいないから値上げという理屈は荷主側にはきっと受け入れがたいことでしょう。さて荷主側としては決して歓迎できる話ではありませんが、ここはひとつ発想を変えて値上げ要請を改善のチャンスに変えてみたらどうかと思います。
 
 製造業では一歩を削減する努力をしていることを書きました。では物流コスト削減の観点ではどこまで改善努力をしているのでしょうか。荷主の立場から考えると、単価の値上げを要請されたとしても、支払金額まで上げる必要はありません。おわかりでしょうか。単価が上がっても必ずしも支払金額が増えるとは限らないのです。ですから値上げ分を吸収し、さらに支払金額を下げる努力をしていきましょう。では、輸送を例にとって考えてみましょう。
 
 モノの大きさと距離で輸送単価を提示している会社があります。自社の貨物の特性からどのサイズの荷物をどこに送っているのかを分析してみましょう。単価マトリックスを見て、荷物の大きさを調整してみましょう。ワンサイズ小さな段ボール箱に変更できませんか、入り数を一つ減らすことでサイズダウンはできませんか。車建て契約の場合どうでしょうか。その場合、積載率を向上することによってトラック台数を減らし、値上げ分を吸収する以上に支払金額を低下させることができるのです。値上げをそのまま受け入れて、自社の物流コストアップをさせてしまうことは少々安易ではないでしょうか。値上げは願ってもない物流コスト削減のチャンスでもあるのです。災い転じて福となす状況にしていきましょう。
 

2. 物流作業の内転化

 もし筆者が物流部長であれば「値上げ分だけ改善でオフセットせよ」と指示を出すと思います。オフセットとはプラスマイナスゼロにするということです。一般的に仕入れ価格が上がったからと言って簡単に売価に転嫁することはできません。何がしかは自社で吸収しなければならないのです。物流は比較的吸収がしやすい職種のような気がします。それはどこの会社でもあまり物流改善が進んでいないからです。物流コストトータルで帳尻合わせをすればよいので、ある方面の輸送でコストが上がっても別の方面で下げればよいのです。もちろん、輸送コストが上がった分を倉庫コストで下げても構いません。いずれにしても値上げは絶好の改善チャンスですから、積極的に取り組みたいものです。仕様変更でコスト削減を図ることも一つの方法です。従来トラックドライバーにお願いしていた荷積み荷降ろし作業を内転化することは方法の一つになるでしょう。 
 
 今まで依頼していたサービスのレベルを変更し、内製でできるものは取り込むことです。この物流作業の内転化ですが、今後進んでいくことが予想されます。今まで常識的に行われていた輸送のアウトソースですが、この業務も例外ではありません。別に輸送を自社で行っても構わないのです。将来的にドライバー不足が深刻化することもあり得ます。その時にさらなる値上げや最悪運べなくなることを想定すると、今から内転化についても考えておくべきでしょう。
 
 このような少し大胆な改善も今回の値上げで気づくことだと思います。ただ単に値上げを受け入れているだけでは好ましくありませんよね。アウトソース先の変更も考えてもよいでしょう。物流は価格が「量」で決まる要素が強い業種です。つまり荷が集まれば値段が安くなる傾向にあるのです。この傾向を考えると、今まで複数社に分散発注していたものについて、発注先を集約することでその会社への物量を多くすることが考えられます。まずどのような改善余地があるのかを整理してみましょう。必ず改善のポイントが見えてくるはずです。せっかくの「値上げ」という改善実行のチャンスが与えられたわけですから実行あるのみです。
 

3. 倉庫内作業の値上げ対応

 倉庫内作業でも人材不足の影響を受けています。多くの会社では輸送事業も倉庫事業についても取り組んでいます。しかしその2事業間には壁があり、お互い人の融通は行っていないようです。最近物流事業に進出し、急に株価が上昇した会社がありますが、この会社は人の行き来を行っています。それによって人材不足を緩和しているとのことです。どの会社も同様ですが組織間で人の流動性が低いと柔軟度が低くなります。すべての工程で不足していれば別ですが、余裕のある部門からそうでない部門へ人を動かすことは必要なことです。ですから皆さんの会社でもこのような人の融通ができるように「技能向上」を進め、多能工化を図っていただきたいと思います。
 
 さて倉庫内作業をアウトソースし、その会社から値上げ要請が来たとします。その時にどのような対応をしていったらよいでしょうか。あくまでも「その会社のマネジメント」ですから人不足について皆さんと考え方は異なるかもしれません。しかしユーザーとしてここはその作業をじっくりと観...

1. 輸送コスト改善を実施しよう

SCM
 最近は人材不足に起因する値上げが話題になっています。この人員不足は高齢化に伴い労働力人口が減少している影響です。物流事業者では人員不足を理由に真っ先に他の産業に先立って値上げを始めました。今までなかなか値段を上げることなどできなかった物流業でやっと値を上げるチャンスが到来したといったところでしょう。確かにそれに対する是非の論議はあるでしょう。製造業は「一歩の削減」といった血がにじむような改善努力を行って値段を上げないようにしています。
 
 これに対して物流業ではどうでしょうか。製造業並みの努力をしているのであれば、値上げもわからないではありません。しかし、そこまでの努力もせずに単純に人がいないから値上げという理屈は荷主側にはきっと受け入れがたいことでしょう。さて荷主側としては決して歓迎できる話ではありませんが、ここはひとつ発想を変えて値上げ要請を改善のチャンスに変えてみたらどうかと思います。
 
 製造業では一歩を削減する努力をしていることを書きました。では物流コスト削減の観点ではどこまで改善努力をしているのでしょうか。荷主の立場から考えると、単価の値上げを要請されたとしても、支払金額まで上げる必要はありません。おわかりでしょうか。単価が上がっても必ずしも支払金額が増えるとは限らないのです。ですから値上げ分を吸収し、さらに支払金額を下げる努力をしていきましょう。では、輸送を例にとって考えてみましょう。
 
 モノの大きさと距離で輸送単価を提示している会社があります。自社の貨物の特性からどのサイズの荷物をどこに送っているのかを分析してみましょう。単価マトリックスを見て、荷物の大きさを調整してみましょう。ワンサイズ小さな段ボール箱に変更できませんか、入り数を一つ減らすことでサイズダウンはできませんか。車建て契約の場合どうでしょうか。その場合、積載率を向上することによってトラック台数を減らし、値上げ分を吸収する以上に支払金額を低下させることができるのです。値上げをそのまま受け入れて、自社の物流コストアップをさせてしまうことは少々安易ではないでしょうか。値上げは願ってもない物流コスト削減のチャンスでもあるのです。災い転じて福となす状況にしていきましょう。
 

2. 物流作業の内転化

 もし筆者が物流部長であれば「値上げ分だけ改善でオフセットせよ」と指示を出すと思います。オフセットとはプラスマイナスゼロにするということです。一般的に仕入れ価格が上がったからと言って簡単に売価に転嫁することはできません。何がしかは自社で吸収しなければならないのです。物流は比較的吸収がしやすい職種のような気がします。それはどこの会社でもあまり物流改善が進んでいないからです。物流コストトータルで帳尻合わせをすればよいので、ある方面の輸送でコストが上がっても別の方面で下げればよいのです。もちろん、輸送コストが上がった分を倉庫コストで下げても構いません。いずれにしても値上げは絶好の改善チャンスですから、積極的に取り組みたいものです。仕様変更でコスト削減を図ることも一つの方法です。従来トラックドライバーにお願いしていた荷積み荷降ろし作業を内転化することは方法の一つになるでしょう。 
 
 今まで依頼していたサービスのレベルを変更し、内製でできるものは取り込むことです。この物流作業の内転化ですが、今後進んでいくことが予想されます。今まで常識的に行われていた輸送のアウトソースですが、この業務も例外ではありません。別に輸送を自社で行っても構わないのです。将来的にドライバー不足が深刻化することもあり得ます。その時にさらなる値上げや最悪運べなくなることを想定すると、今から内転化についても考えておくべきでしょう。
 
 このような少し大胆な改善も今回の値上げで気づくことだと思います。ただ単に値上げを受け入れているだけでは好ましくありませんよね。アウトソース先の変更も考えてもよいでしょう。物流は価格が「量」で決まる要素が強い業種です。つまり荷が集まれば値段が安くなる傾向にあるのです。この傾向を考えると、今まで複数社に分散発注していたものについて、発注先を集約することでその会社への物量を多くすることが考えられます。まずどのような改善余地があるのかを整理してみましょう。必ず改善のポイントが見えてくるはずです。せっかくの「値上げ」という改善実行のチャンスが与えられたわけですから実行あるのみです。
 

3. 倉庫内作業の値上げ対応

 倉庫内作業でも人材不足の影響を受けています。多くの会社では輸送事業も倉庫事業についても取り組んでいます。しかしその2事業間には壁があり、お互い人の融通は行っていないようです。最近物流事業に進出し、急に株価が上昇した会社がありますが、この会社は人の行き来を行っています。それによって人材不足を緩和しているとのことです。どの会社も同様ですが組織間で人の流動性が低いと柔軟度が低くなります。すべての工程で不足していれば別ですが、余裕のある部門からそうでない部門へ人を動かすことは必要なことです。ですから皆さんの会社でもこのような人の融通ができるように「技能向上」を進め、多能工化を図っていただきたいと思います。
 
 さて倉庫内作業をアウトソースし、その会社から値上げ要請が来たとします。その時にどのような対応をしていったらよいでしょうか。あくまでも「その会社のマネジメント」ですから人不足について皆さんと考え方は異なるかもしれません。しかしユーザーとしてここはその作業をじっくりと観察する必要がありそうです。いつも申し上げていることですが、倉庫作業では往々にして作業ペースを個々の作業者任せにしています。指示の出し方が「今日中にこれをやって」というラフなやりからが多いことも事実です。そうなると人間ですから楽な方向に流れがちなのです。
 
 例を挙げると「仕事の量に関わらず」作業者は「同じ時間で」仕事を実施します。ある日は仕事が多かったので8時間かけてこなしたとします。別の日は仮に仕事量が半減したとします。その日も作業者はその半減した仕事を8時間かけて実施します。つまり仕事に対する人の配置が固定になっているのです。空いた時間を他の仕事を行うのではなく、スピードを落として実施するのです。あと個々の作業の時間も製造業の4倍程度のゆったりとしたスピードになっています。これは標準時間が定められていないことも大きく影響しています。
 
 ユーザーである皆さんはこのような問題点を物流現場に行って見抜いていただきたいのです。このような点に気づいたとしたら皆さんは値上げ要請を受け入れるでしょうか。そしてアウトソース先とは現場を見た感想と共に改善案を提示しながら話し合ってみるとよいと思います。人材不足と言いつつ、実際には人材余剰かもしれないのです。これは何もアウトソースだけの話ではありません。自社物流についても同様な視点で見てみることをお勧めします。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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