1. 標準化
会社が要求された安全、品質、納期、コストを確実に確保するためには物流技術標準と物流作業標準が必要です。それぞれの作業を作業者任せにしていないでしょうか。その状態で不良を出したとしても、それは必ずしも作業者だけの責任とは言えません。作業指示を明確に与えていなければ作業者は何を拠り所に仕事をしたらよいのかがわからないはずです。またアイツが不良を出した、と嘆く前に管理監督者がやるべきことをやっているかどうかをまず点検する必要がありそうです。
物流の仕事には「物流技術標準」と呼ばれるものと、「物流作業標準」と呼ばれるものの2つの基準が必要です。これら抜きに安全、品質、納期、コスト(SQDC)の結果はもちろんのこと、目標も定めることは難しいでしょう。物流技術標準とはその会社で物流業務を行うに当たり、技術的なスタンダードを定めた文書のことを指します。物流技術の担当部署で設定します。この標準には倉庫を設計する際の床の耐荷重や高さ制限、通路幅や使用する機器の仕様など、技術的な基準すべてを指します。
たとえば倉庫内通路の幅は3mとする、通路を区切る線は白色としその幅は10cmとする、などといった自社の物流技術標準を一つひとつ定めていくのです。基準を定めていなければ、倉庫ごとに通路幅もバラバラ、白線もあったりなかったりで非常に統一性に欠けますし、その結果として倉庫によってSQDCの結果にもバラつきが出てしまいます。物流作業標準とは物流作業を実施するにあたってのルールや管理監督者の管理ポイントなどを定めた文書のことを指します。物流監督者または、管理者が設定します。物流作業標準の中で最もポピュラーな文書が「標準作業書」です。これが作業者に対する指示書になります。SQDCの要求水準を満たすためにはどこに注意して作業を実施していくのかについて定めた重要な文書ということになります。
2. 物流現場と標準文書
物流技術標準を設定しておけば新たな拠点を設置する際に大変役立ちます。たとえば、どれくらいの規模の土地と建屋にするのか、この基準から推し量ることができます。賃貸倉庫の場合は技術標準と見比べることで、自社の仕事をこなすのに十分か否かがわかります。逆にこの標準がなければ借りた倉庫が適切な仕様なのかオーバースペックなのか、はたまた不足しているのかがわからないのではないでしょうか。概して安全のためにオーバースペックの倉庫を借りがちで、その場合には高い賃料を払わされることにつながります。
これは倉庫に限らず、物流機器や梱包資材などについても同様のことが言えそうです。またその場その場で判断が分かれてしまうこともあり得るのです。購入担当者の思い付きでその都度買うものが変わってしまっては会社に良くないことは明らかでしょう。物流技術標準には物流倉庫の設計手順や物流レイアウトの作成手順などのマニュアルも含まれます。技術の標準に従い、倉庫を設計していくわけですが、ものの置き方の基準に従ってエリア計算を行い、照度基準に従って照明の数を決めて、といったように手順を定めていくことになるわけです。
物流作業標準には標準作業書の他に作業要件一覧表と管理項目一覧表の2つの文書があります。前者ではその職場でのすべての作業について、物流品質基準や必要となる知識、必要となる技能、使用する機器などを定めていきます。さらにその作業を習熟するために必要となる期間も定め、作業習熟時に活用します。後者は物流現場監督者が作業観察を行う際のチェックポイントを定めます。たとえばフォークリフト作業で基本動作に基づいて作業を行っているか、トラック積み込み時に荷崩れが発生しないように考慮しているか、といった作業のポイントを定めます。これらについてどれくらいの頻度でチェックするかについても定めることで、物流現場監督者の作業観察のスケジュール立案にも役立てるのです。
3. 強い現場作りの絶対条件
作業要件一覧表を作成することで、物流監督者は自身の職場にどのような仕事があり、それをこなせるようになるためにはどれくらいの習熟期間が必要なのかを知ることができます。これと併せて部下の育成計画を立案します。そしてその計画に沿って着実に教育を施していくのです。そうすることによって人材が育ち、「強い物流現場」を作り上げていくことができるのです。管理項目一覧表を使って作業観察のポイントを認識し、計画的に部下の作業の様子を観察していきます。その時には標準作業書を見ながら、書かれた手順通りに仕事をしているか、特に急所をきちんとおさえた作業になっているかを確認するのです。もし標準作業書と異なるやり方をしていたとしたら、その場でフィードバックするようにしましょう。一方で標準作業は常に改善の対象となることも事実です。現時点で考え得るベストな状態が標準作業として規定されているのであって、それが未来永劫変わらないということはあり得ないわけです。作業観察をする中で、さらによい仕事の仕方が見えてくることがあります...