人的資源マネジメント:モチベーションを支える自律性とは(その4)

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 人的資源マネジメント:ポジティブ感情

◆ 人生を決めるポジティブ感情と3:1の法則

 
 ポジティブ感情を生む心の状態を「ポジティビティ (Positivity)」、ネガティブ感情を生む心の状態を「ネガティビティ(Negativity)」といいます。これまでのことから、ポジティビティから生まれるポジティブ感情は、精神的にも身体的にも、そして、社会的にも良い結果、すなわち、豊かな人生をもたらすことがわかっていただけたと思います。
 
 では、豊かな人生を送るためには、ネガティブ感情を生むネガティビティをなくして、ポジティブ感情を生むポジティビティだけになればいいのでしょうか? 世の中には、「ポジティブ思考」が大切だとするセミナーや書籍が氾濫していますね。ポジティブ思考によって豊かな人生を手に入れることができるのでしょうか?
 
 答えは、NOです。
 
 先ほどの繰り返しになりますが、ネガティブ思考とポジティブ思考は対立する概念ではありません。人にはどちらの感情も必要で重要なのです。いろいろな出来事によって、悲しみ、苦しみ、怒り、不安などのネガティブ感情を持つのは当たり前ですし、時には緊急事態に対して集中できる状態を作る必要もあります。また、ポジティブ感情が行きすぎると、過度の楽観や甘い判断、さらには、幻想や妄想の世界の住人になってしまう怖れもあります。このようなときに、現実の世界に引き戻してくれるのはネガティブ感情を生み出すネガティビティです。人には、ポジティビティとネガティビティの両方が必要なのです。
 
 ただし、ネガティビティ・バイアスとよばれているように、ネガティビティは非常に強いものであり、放っておくとどんどん気持ちが落ち込んでいくことになります。したがって、ネガティブ感情に打ち勝つには、より多くのポジティブ感情が必要なのですが、驚くことにその比率「ポジティビティ比率(Positivity Ratio)」は明らかになっています。「3:1」です。この比率は、発見者が心理学者マルシャル・ロサダであることから「ロサダライン」ともよばれています。
 
 「3:1の法則」は、ポジティビティが機能するにはスレッシュホールドがあり、ポジティビティがネガティビティの3倍になるまではネガティビティの強さに負けてしまい効果は何もないということを示しています。
 
 したがって、目標にすべきことはシンプルです。1日の(もちろん、半日でも1時間でもかまいません)自分の感情を振り返ってみて、ポジティブ感情がネガティブ感情の3倍以上になるように、感情をコントロールすることです。それが、モチベーションを上げて高いパフォーマンスにつながるだけでなく、中長期的に豊かな人生を手に入れることにつながるのです。
 
 さらに、このポジティビティ比率は、個人だけでなくチームにも有効な値です。研究によれば、チーム内のポジティブな発言がネガティブな発言の3倍以上であれば、そのチームは高いパフォーマンスを示すことがわかっています。
 
 製品やサービスの開発にかかわっている人たちは、いわゆる技術的なことに意識が向きすぎてしまい、自分の感情や他人の感情への意識が低い傾向があるように感じます。担当している機能や性能を実現することや、納期や品質を達成することなどに一生懸命なのですが、そのために思い入れや思い込みにと...
 人的資源マネジメント:ポジティブ感情

◆ 人生を決めるポジティブ感情と3:1の法則

 
 ポジティブ感情を生む心の状態を「ポジティビティ (Positivity)」、ネガティブ感情を生む心の状態を「ネガティビティ(Negativity)」といいます。これまでのことから、ポジティビティから生まれるポジティブ感情は、精神的にも身体的にも、そして、社会的にも良い結果、すなわち、豊かな人生をもたらすことがわかっていただけたと思います。
 
 では、豊かな人生を送るためには、ネガティブ感情を生むネガティビティをなくして、ポジティブ感情を生むポジティビティだけになればいいのでしょうか? 世の中には、「ポジティブ思考」が大切だとするセミナーや書籍が氾濫していますね。ポジティブ思考によって豊かな人生を手に入れることができるのでしょうか?
 
 答えは、NOです。
 
 先ほどの繰り返しになりますが、ネガティブ思考とポジティブ思考は対立する概念ではありません。人にはどちらの感情も必要で重要なのです。いろいろな出来事によって、悲しみ、苦しみ、怒り、不安などのネガティブ感情を持つのは当たり前ですし、時には緊急事態に対して集中できる状態を作る必要もあります。また、ポジティブ感情が行きすぎると、過度の楽観や甘い判断、さらには、幻想や妄想の世界の住人になってしまう怖れもあります。このようなときに、現実の世界に引き戻してくれるのはネガティブ感情を生み出すネガティビティです。人には、ポジティビティとネガティビティの両方が必要なのです。
 
 ただし、ネガティビティ・バイアスとよばれているように、ネガティビティは非常に強いものであり、放っておくとどんどん気持ちが落ち込んでいくことになります。したがって、ネガティブ感情に打ち勝つには、より多くのポジティブ感情が必要なのですが、驚くことにその比率「ポジティビティ比率(Positivity Ratio)」は明らかになっています。「3:1」です。この比率は、発見者が心理学者マルシャル・ロサダであることから「ロサダライン」ともよばれています。
 
 「3:1の法則」は、ポジティビティが機能するにはスレッシュホールドがあり、ポジティビティがネガティビティの3倍になるまではネガティビティの強さに負けてしまい効果は何もないということを示しています。
 
 したがって、目標にすべきことはシンプルです。1日の(もちろん、半日でも1時間でもかまいません)自分の感情を振り返ってみて、ポジティブ感情がネガティブ感情の3倍以上になるように、感情をコントロールすることです。それが、モチベーションを上げて高いパフォーマンスにつながるだけでなく、中長期的に豊かな人生を手に入れることにつながるのです。
 
 さらに、このポジティビティ比率は、個人だけでなくチームにも有効な値です。研究によれば、チーム内のポジティブな発言がネガティブな発言の3倍以上であれば、そのチームは高いパフォーマンスを示すことがわかっています。
 
 製品やサービスの開発にかかわっている人たちは、いわゆる技術的なことに意識が向きすぎてしまい、自分の感情や他人の感情への意識が低い傾向があるように感じます。担当している機能や性能を実現することや、納期や品質を達成することなどに一生懸命なのですが、そのために思い入れや思い込みにとらわれたり、周りが見えなくなってしまったり、自分だけが正しいと信じ込んだりして、それがチームの雰囲気やチームメンバーとの関係を悪くしていることはないでしょうか。私はあります。今となっては苦い思い出です。
 
 技術にかかわり、新しい価値を生み出している皆さんだからこそ、ポジティブ比率を3倍以上にすれば、自分もまた周囲も変わり、ポジティブな好循環が生まれる「3:1の法則」を忘れないでほしいと思います。自分の感情を顧みること、ポジティブ感情をネガティブ感情の3倍以上に増やすことを日常的な習慣にしてほしいと思います。
 
  

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この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

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