前回はポジティビティな過ごし方をするためには、脳の認知機能の仕組みを知って、「意味づけ」している自分に気づくことが大切だということをお伝えしました。感情は「情動伝染」で無意識的にも他人に伝わるので、ポジティビティな状態になることはとても大切なことです。
今回は、開発の仕組みが引き起こす技術力低下ということです。厳しい競争にさらされている製品開発現場のマネジャーや技術者は、これまでずっと、様々な課題を解決して、開発期間短縮、コスト削減、品質最優先という要求に答える製品を作ってきました。競争力が落ちたといわれてても、製品の仕上がりや現場の技術者に触れると、日本は優秀だなと思うことが多かったですし、現場のマネジャーやリーダーと話をしても、技術者の力を信じている様子がうかがえました。しかし、印象的だったのが、事業や開発全体を見ているシニアマネジャーに、日本での開発や日本の技術者に対する強い危機感を持っている人が何人もいることです。
図52 シニアマネジャーの声
別々の会社のシニアマネジャーが口々に現場の技術力低下を嘆き、半ばあきらめている方もいることにショックを受けました。
言い方はいろいろありますが、今は、製造技術や品質、高機能性などを追求することが競争力の源泉となっていた時代から、価値創造や短納期化などにつながる革新性や変化対応性などが重視される時代になっているということが言えると思います。そして、この時代の技術者に求められているのは、自律性・自立性、創意工夫、挑戦意欲、変化対応力などだと言えるでしょう。このような意識、スキルが足りないということが、技術力が落ちていると多くのシニアマネジャーが考えている理由だということもわかりました。
一方、多くの現場のマネジャーやリーダーとも話をしたのですが、そこで感じたのは、これまでの製品開発の仕組みが、今必要とされている技術者像とは違う技術者を作ってきた側面があるということです。
開発プロセスやプロジェクト管理の強化は目的意識、創意工夫の欠如を生...