◆ 仕事に取組むための基本条件
1. 一対一の原則を守る・・・指示命令と報・連・相+【確認】 の励行
D社は、技術力のある企業ですが、創業者でもある会長の長男が社長、次男が専務を 務めるという完全な同族会社です。部下の管理者たちから見ると、双頭どころか三頭体制の様であり、誰の指示に従うべきかとまどうため、再三の督促がないかぎり動かない方が得策だ、という風潮が生まれています。
先日、Sという管理者が直属の上司である専務から頼まれた仕事を懸命に進めていました。 そんな時、会長がやって来て「何故、この仕事をやっているのか? 今は必要ないから、 こちらの仕事を進めなさい」と、会長が気にかけている課題を出してきたのです。
困った彼は、いったん話を受け止めたものの専務には報告せず、それまで通りの仕事を続けていました。1週間後、会長が「先日の仕事はどうなった?」と確認してきました。 そして、まだSが着手していないことを知ると、「おれの命令が聞けないのか!」と事務所中に聞こえるような声で怒鳴りだしたのです。その声に驚いてとんできた専務は、初めて事情を知り、不快感をつのらせました。
しかし、専務は今回のケースから「指示命令はどのようにすべきか」という点を考え直す必要があるとして、以前受けた研修の教本を開いてみたのです。 そこには、「指示命令には“一対一の原則”があり、一つの仕事は一人の上司から受け、 受命者はその上司に“報・連・相”すること。同時に二つの指示があった場合は、直属の上司にどちらを優先するか確認すること。順位を決めたら、仕事を指示したそれぞれの指示者に確認すべきである」と書かれていました。
専務は、「一対一の原則」が徹底されていないことが、社内の機動力損失につながっているのだと認識し、今後は「職務分掌と責任権限を明確にしなければならない」と決意すると共に、日々の日常の訓練がいかに大切であり、会長・社長とのコミュニケーション不足が 従業員の士気に影響しているのかを痛感したのでした。
経営者間の意志の疎通とコミュニケーション不足は、士気にも仕事の質にも大きな影響を与えるのです。 この調整は総務の大事な仕事の一つでもあります。苦労の多い役割ですが、この機能がしっかりしていれば、どんな摩擦や出来事も超えられるのです。それを、私はコマ型企業として説明していますが、報・連・相+【確認】の励行は、社内の透明度のバロメーターなのです。
2. 4S(整理・整頓・清掃・清潔)は仕事に取組むための基本条件
E社は、郊外型のブックショップです。周囲には、衣服、ホームセンター、コンビニ、スポーツグッズ、家電など、生活雑貨用品を扱うショッピング街が形成されています。日ごろからE社の社長は、自分の店と地域№1の店を比べ、気働きやお客様に対する 機敏なサービスなどの点で負けていると感じていました。
もちろん、常に接客は誠実に、礼儀正しく行ってはいるのですが、何か足りないものを 感じていたのです。そこで社長は、ある会の体験発表で聞いた話を実践することにしました。それは、早朝、自らはトイレ掃除を、幹部社員は店周辺の清掃を行う、というものでした。すると、社員の話や開店中の店の様子だけでは気がつかなかったことが、たくさん見えて きました。
まず、トイレ掃除においては、隅々まで清掃が行き届いていなかったこと。そして、トイレットペーパー、消毒方法、香りにいたるまで、お客様の視点で捉える 大切さを痛感したといいます。また、店の周辺の美化については、単にゴミをなくすだけでなく、季節の花を飾るなど の「おもてなしの心」が必要であることに気づいたのです。
その後、E社では、情操教育も兼ねるため、新入社員に店外観の花の世話を担当させ、 朝、昼、夕の気働きをさせました。約3ヵ月後、店内では陳列する本も整理され、お客様が何を求めているか敏感にわかる ようになったのと同時に、E社の評判もグンとよくなりました。また、社...