組織の生産性や効率向上には個人の成長が不可欠です。そして、個人が成長するために大切なのが学習であり、仕事や学習の意欲を生み出すものが「エンゲージメント」です。今回はその取り組み事例も含めて解説します。
1. エンゲージメント
「エンゲージメント」は、本来は「関与」や「絆」を意味する単語なのですが、最近は「仕事に対する真剣な取り組み」や「個人と組織が一体となり、お互いの成長に貢献し合う関係」という意味で使われています。仕事との関係を明確にするために「ワーク・エンゲージメント」とも言います。
簡単に言うと、社員の組織の成功に貢献しようとするモチベーションの高さ、そして組織の目標を達成するための重要なタスク遂行のために自分で努力しようとする意思の大きさです。つまり、仕事に対するモチベーションということです。
エンゲージメントの大切さを考えるために、まずは個人の成長について考えたいと思います。組織の生産性やパフォーマンスを上げるには、一人ひとりが成長することが大切ですし、成長している実感がモチベーションにつながるからです。成長の方法を考えるにはスキル構造を理解しておくことが大切です。
図88. スキルの構造
「ハードスキル」とは、製品開発や装置操作、IT などその分野に必要な技術を中心としたスキルのことで、「ソフトスキル」とは、ピープルスキルともいわれる、コミュニケーションや動機づけ、チームワークなど人間関係を中心としたスキルのことです。
学習や教育というとハードスキルが中心になりがちです。ハードスキルはもちろん重要ですが、ソフトスキルが向上しないと実際の仕事では活かすことは困難です。誰もが経験していると思いますが、人との関係なくして仕事はできませんから。
そして、ハードスキルにしてもソフトスキルにしても、学習や成長に対する意欲がなければ、いくら教育に時間を使ったとしても身になることはないでしょう。エンゲージメントは、成長に対する意欲であり、成長のためのスキル習得の行動を起こすためのエネルギー源なのです。ハードスキルやソフトスキルの教育に時間やお金を使っているところも多いのですが、一定レベルのエンゲージメントがなければその投資は期待した効果を生むことはないでしょう。
エンゲージメントは、仕事そのものに対してだけでなく、成長のための学習の土台になっています。やる気がなければ学習効果は期待できないのは当然です。
2. エンゲージメントの調査結果
そもそも(ワーク)エンゲージメントとは、ユトレヒト大学(オランダ)のシャウフェリ(Wilmar B.Schaufeli)教授によって提唱された概念です。感情とやる気...