1. 包装と空箱
物流の重要機能の一つに包装があります。この包装、皆さんもよくご存知の通り、モノを移動させる際にはどうしても必要になります。物流品質の中には製品を間違えない、数量を間違えないということと同時に製品に傷をつけないという基本があります。当たり前すぎる話かもしれませんが、これらの物流品質はどれをとっても不良は許されるものではありません。では、特に傷をつけてはならないという条件について深堀してみましょう。傷をつけないためには物流では先に挙げた包装を製品に施すこととなります。
一般的な包装とは、箱の中に製品を並べることでしょう。ここで製品同士が揺れてぶつかることのないように並べていきます。箱には段ボールや通箱があります。ではこの箱に入れられた製品を顧客のところに運んだあとの「空箱」はどのようにしていますでしょうか。届けた後は顧客が何とかするものであって、物流を行った者は関与しないという考え方があります。さて、この考え方は正しいでしょうか。
まず原則論から考えてみましょう。顧客は何を手に入れたかったのか、という視点です。この問いに対する答えは明確です。それは「製品」です。たとえば私たちが家電製品を購入したとしましょう。洗濯機を購入したとすると、製品は大きな段ボール箱に入って届きます。
しかし、今や物流会社のサービスレベルは高まり、依頼すれば据え付けを実施してくれます。そして不要となった包装資材は回収していってくれます。つまり、私たちは製品だけ入手できるとともに、煩わしい据え付けまでサービスを享受することができるのです。原則論の観点から見ても「空箱」は届けた物流会社が回収していくケースがあり、顧客にとっては望ましい姿が実現しています。
2. B to Bでの物流サービス
先に記した原則論とは「顧客の立場から見た原則論」といえるかもしれません。逆の見方をすると、物流側はそのようには思っていないということです。物流側から見れば、物流過程で生じた包装資材等の処理は顧客側で実施すべしという発想ではないでしょうか。例に挙げた洗濯機の場合は届けたその場で空き箱が生じるので、そのついでに物流会社が廃棄物を回収しているとも考えられます。
引越も同様です。荷物を届けたときに発生する空箱は引っ越し業者が「ついでに」回収していると考えられます。では、別の例で考えてみましょう。B to Bでよくあるパターンですが、顧客に部品が入った箱が届けられます。顧客は部品を購入したのであって、箱まで購入したわけではありません。かといって、顧客の工場の入口で箱から部品を取り出して空箱は回収しますでしょうか。このケースでは大半でそのようなことはしていないでしょう。その理由は、顧客の工場の中でもまだ運搬や保管があるからです。
運搬や保管工程では箱が無いと都合が悪いのです。では工場内物流の過程で考えるとどうなるでしょうか。工場内物流は届けられた部品を今度は生産工程に運びます。その時は多くの場合、工場に届けられた時の荷姿のまま生産工程に運搬します。では生産工程ではどうでしょうか。ここは考える必要があります。生産工程はまさに「部品だけ」欲しいと思うでしょう。ということは物流は生産工程で箱から部品を取り出して、それを供給するとともに空箱はその場で回収する必要性が出てきます。
工場内物流はこのパターンが原則だと考えるべきでしょう。物流のサービスだと考えられる一方で、当たり前の仕事だともとることができます。もし、ここで箱のまま部品を置いてきたとしたらどうでしょうか。しかもその箱が段ボールであったとしたらどうでしょうか。部品を使った後に生産工程にはゴミが発生しますよね。これは生産工程が処理すべきなのでしょうか。
3. 生産管理の実行
運搬に使った箱や緩衝材は物流が責任を持って回収します。ここを勘違いしないようにしたいものです。なぜなら、箱や緩衝材は誰のためでもなく、物流のために必要だからです。とにかく顧客は中身だけ欲しいという原則に気づかなければなりません。もちろん、顧客が箱などを欲しているのであれば話は別ですが。このようにサービス業としての物流はいかに顧客の満足度を高めるかが課題になってきます。もし、物流を単なる運送業とか倉庫業としてしか考えていないとしたら大きな間違いです。
工場の中では物流が生産工程に材料などを届ける行為を通して「生産統制」を行うことも責任範囲と考えましょう。先ほどのサービス業にとどまりません。まさに工場運営をつかさどる生産管理を実行することも物流の責任なのです。生産工程から「運べ」といわれたら運ぶといった受身の仕事の仕方は感心しません。工場の中にあって物流は受け身どころか主役を動かす司令塔の役割を担...