今回は、計画を作成する意義や重要性を考慮した計画作成の方法を解説したいと思います。様々な取り組みに対して計画を作成する機会は多いのではないでしょうか。
計画を作成することで、一緒に活動するメンバーや関係者との間の認識違いや非効率なやりとりを減らし、不確実なことに対する対策や対応を明確にすることでリスクを減らすなど、多くのメリットがあります。誰もがわかっていることだと思いますが、現実には計画作成が決められたフォーマットに合わせて文書を提出するだけの作業になっていたり、単に納期や締め切りに合わせてスケジュールを引くだけの作業になったりしていることも多いものです。そこで今回は、計画を作成する意義や重要性を考慮した計画作成の方法を解説したいと思います。前回のその1に続いて解説します。
1. 計画作成プロセス
計画プロセス、前回に続いて解説します。
【ミッション,(コア)バリュー】
ビジョンやゴールと同列に扱われるものに、ミッションとバリュー(コア・バリュー)があります。計画作成には直接関係しないと考えられがちですが、どちらも計画を実行する際に重要となる概念ですから、ミッションとバリューについても解説しておきたいと思います。
ミッションとは、果たすべき役割や貢献、あるいは、組織として取るべき行動のことで、組織としての存在理由ともいえるものです。組織内のメンバーの役割や取り組む作業は違っていても、ミッションが明確であればメンバーのベクトルを常に同じにできます。また、想定外のことが起きたときでも、ミッションは組織として何が正しいのかという判断基準を示しているので、組織としてあるべき対応をとることができます。組織における意志決定や行動に対する判断基準を明確にしたものがミッションです。
バリューとは、組織のメンバーの一人ひとりが大切にする(すべき)価値観です。すべてのメンバーが共通の価値観を持って行動することで、ミッションにしたがった組織としての行動につながり、その結果、ビジョンが現実のものになります。一人ひとりの行動指針や行動規範を明確にしたものがバリューです。
2. 計画作成のためのフレームワーク
ビジョン、ミッション、バリュー、ゴールといった単語は耳にすることが多いものの、その意味するところは曖昧だったり人によって違ったりすることが多い単語ですが、これまでの説明のように、意味のある計画作成にするためには必要不可欠な概念です。そして、人が集まって何かを成し遂げる時に必ず作成するものが計画ですから、計画を作成する際のフレームワーク(枠組み)(図185)として理解しておいてほしいと思います。
図185. 計画作成のためのフレームワーク
参考のために具体的な例を紹介しましょう。あるメーカーでの原価見積もりの仕組みを見直すための社内プロジェクトにおいて、このフレームワークを使って計画を作成したものです。
【ゴール】
・6時間以内に材料費と労務費とを合わせた原価見積もりができる
・製品でも部品でも標準原価と実績原価の乖離をリアルタイムで把握できる
【シナリオ】
1. 設計者に材料費見積もりを行うツールを提供し、原価グループへの見積もり依頼をなくす。
2. すべての部品の購入価格の記録を参照できるツールを提供する。
3. 場合によっては製品を絞り込んで上記のデータ整備を行う。
4. 生産工程を再定義し、工程ごとに作業時間を記録する仕組みを作る。
5. 記録された作業時間を設計者が参照できるツールを提供する。
6. 場合によっては作業時間記録が可能な工程に絞ってツール対応する。
7. 全部品、全工程に展開するための改善プロジェクトを立ち上げる。
8. 標準材料費、標準作業時間を設定する作業フローと役割を決める。
【計画】
5人のメンバーが取り組む6ヶ月の活動計画を作成し、関係部署に対する働きかけや適用範囲を限定するかどうかを判断するタイミングなども明確にしたスケジュールを作成しました。
【ミッション】
原価見積もりプロジェクトは、顧客との交渉および利益確保のために最適な原価見積もりを仕組み化する。
【バリュー】
・役割分担に関係なくメンバー同士で協力して問題を解決する
・原価見積もりに関することすべてを自分のこととして活動する
・メンバー全員が関係する部署やマネジャーへの働きかけを行う
計画作成にビジョン、ゴール、シナリオというフレームワークを使ってメンバー同士が話し合うことにより、確固とした共通認識を持つことができるとい...