今回は、計画を作成する意義や重要性を考慮した計画作成の方法を解説したいと思います。様々な取り組みに対して計画を作成する機会は多いのではないでしょうか。
計画を作成することで、一緒に活動するメンバーや関係者との間の認識違いや非効率なやりとりを減らし、不確実なことに対する対策や対応を明確にすることでリスクを減らすなど、多くのメリットがあります。誰もがわかっていることだと思いますが、現実には計画作成が決められたフォーマットに合わせて文書を提出するだけの作業になっていたり、単に納期や締め切りに合わせてスケジュールを引くだけの作業になったりしていることも多いものです。そこで今回は、計画を作成する意義や重要性を考慮した計画作成の方法を解説したいと思います。
1. 計画作成プロセス
事業計画、中期計画、開発計画、プロジェクト計画、業務改善計画など、計画にはいろいろなものがありますが、どのようなものであれ、計画とは人が集まって何かを成し遂げる際に、右往左往することなく効率よく物事を進めるために作成するものです。そして、この目的を果たすような計画にするためには、適切な方法で計画を作成する必要があります。図184はその方法を示しています。計画はビジョン作成、ゴール設定、シナリオ設計という一連の作業の後にできあがるものだというのがポイントです。
図184. 計画作成プロセス
それでは、計画作成プロセスの各ステップを解説したいと思います。
【ビジョン】
ビジョンとは達成イメージのことで、実現しようとしている状態や姿を具体化したものです。未来の姿なのですが、すでに存在している現実の姿かのようにありありとその様子を説明できるまでに具体化することが大切です。
たとえば、ある事業の5年後までの中期計画であれば、5年後にどのような部署があって、どのような環境で、どのような業務をやっているのか、さらには、どのような人たちがどのような振る舞いをしているのか、どのような表情でどのようなやりとりをしているのかなど、まるで今見ているかのようにどんな質問にも答えることができるようになっているのがビジョンです。
また、ビジョンは関係者としっかりと共有することも大切です。頭の中で実現している未来の姿を伝えるのは簡単ではありませんが、とくに象徴的、特徴的なところを文書化したり、しっかりと時間をとって関係者からの質問に答えるなど、いろいろな工夫をして達成イメージを共有する必要があります。
【ゴール】
ゴールとは達成する具体的な目標のことで、何をもって達成したかが明確に判断できるような記述になったものです。ビジョンが現実のものになったことを客観的に判断できるのがゴールですから、程度や時間、頻度などの定量的な要素を含む記述になっている必要があります。
ビジョンは実現を目指す状態や姿などのイメージですから、実際に達成できているかどうかは多角的な観点で判断するのが妥当だと考えられます。したがって、ゴールはひとつだけではなくいくつかの観点から複数設定することになるはずです。
ただし、単純に複数のゴールを設定しただけでは、実際に取り組む際にリソースや意欲を分散させてしまい、活動にマイナスの影響を与えることになりがちです。そこで、絶対に達成すべきゴール(コミットメント・ゴール)と、頑張るけれども結果的に達成できないかもしれないゴール(ストレッチ・ゴール)に分けてゴールを設定することが大切になります。絶対に達成するために集中すべき目標と、さらにその先の目指すべき目標とが明確になります。
【シナリオ】
シナリオとはゴールを達成しビジョンを実現するまでの段取りのことで、どのようなステップや方法で活動するのかを明確にしたものです。活動における制約条件や解決すべき課題、途中のマイルストーンやその成果などを明らかにすることで、ゴール達成までの段取りを明らかにします。
シナリオを考える際に重要になるのが、何の問題もなくスムーズに事が運ぶという前提で考えるのではなく、発生する可能性がある問題や障害を洗い出し、それらが原因でトラブルになったときにどのような対応がとれるのかといった、起こりうるイベントを考慮した複数のシナリオを...