物流方針とは

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1. 物流の方針転換


 物流改善を進める前に会社の物流方針を明確にしておく必要があります。この方針がしっかりとしていないと今後の仕事の仕方にぶれが出てきます。せっかくいまよかれと思ってやっていることが、上司が変わったとたんにそれが否定されることも少なくありません。ですから、まず会社のメンバーでいろいろとディスカッションしてみてはいかがでしょうか。
 
 筆者は製造会社にいましたので、物流のやり方はころころと変化した記憶があります。物流方針が明確でなかったからです。まず物流の効率化に力点を置いた活動を行ないました。サプライヤーから納入された部品を製造工程に直接払い出すことで、物流上の停滞を無くし物流の効率化を行いました。サプライヤーから納入された荷姿のままで。当時は製造工程も理解があり、このような「低サービスレベル」の物流を許してくれた感がありました。しかしあるところで外部コンサルタントが入り、そのような物流のあり方を否定されました。なぜならそのような物流を行うことで、製造ラインサイドに多くの部品が並び、製造作業者の判断行為や歩行などを招いていたからです。
 
 コンサルタントから言われたことをじっくりと考え、その前提で製造工程を見ていると、確かに物流が要因となるムダがたくさん見つかったのです。そこから物流は大きく方針転換しました。とにかく徹底的に製造工程を支える物流サービスを実行しようと。このようなきっかけがありましたから、物流方針は非常に明確になったわけです。その方針の例を挙げると以下のようになります。
 
・製造作業者には部品以外を触らせない
・製造作業者には部品を選ばせない
・製造作業者には部品を取るときに歩かせない
 
 このような物流方針を掲げて大幅な物流改善を実行したのです。その効果は大きいものがありました。つまり、製造工程の生産性が大幅に向上するとともに、誤組付けなどの品質不良が大きく減ったのです。ですから皆さんの会社でも物流をどのような方向に向かせていくのかについて、じっくりと検討してみるとよいと思います。
 
 SCM
 

2. 物流品質方針の重要性

 物流を生業としている会社ではほとんどの会社が自社方針を作成して顧客にPRしていることと思います。経営方針を示すとともに、物流品質方針が示されれば顧客は注目すると思います。物流方針の中でもこの品質方針は非常に重要なのです。荷主会社であれば、物流事業者を探す時にその会社が「品質方針」を掲げているかどうかについて注目するとよいでしょう。安心して自社の荷物を預けることができるかどうか。これはきちんとした品質方針に基づいて、それを意識した仕事を行っているかどうかにかかってきます。
 
 顧客の荷物を手荒に扱ったり、温度管理すべき荷物を規定外温度下に放置したりする事例がニュースで流れました。会社として品質方針を明確にしていれば、作業者の意識の中にその品質方針があるはずですから、よほどのことが無い限り、上記のような荷扱いはしないはずです。物流会社でない場合でも会社の物流についてきちんとした方針が必要で、その中には品質方針が含まれます。
 
 次工程に対する「誤供給は行わない」、「5Sは必ず守り、規定外置きは絶対に行わない」、「製品のハンドリングはルールを順守し製品不良を招かない」などの品質に対する決め事をしっかりと決めて守らせることです。物流方針の中には「物流の実態を常時数字で把握する」という一言が入っているとよいと思います。なぜなら多くの会社で物流の実態を把握できていないからです。何となく言われたまま作業を行う体質になっていると、自分たちの立ち位置すら見えなくなってしまいます。
 
 これが好ましくないことは当然です。物流コストはいくらかかっているのか。そのコストは妥当なのか、異常なのか。あとどれだけコスト改善が必要なのか。こういったことが明確になっていることが必要です。「自分たちの効率化の前に、お客様へのサービスを優先する」、これも物流にあっては重要なことでしょう。前述の例をご覧になると、この方針がお分かりになると思います。
 

3. 安全とコスト

 物流方針の中には安全、品質、コストについては明確なポリシーを記載するべきでしょう。特に安全については最優先課題となります。物流はとかく労働災害が発生しがちな仕事だと考えられます。しかも一度起きると重大災害につながりかねないので注意が必要です。その大本はフォークリフト作業にあります。フォークリフトで荷物を上げ下げしたり運搬したりしますが、その際にフォークリフト運転者が自らけがをするケースもあれば、他者を傷つけてしまうこともあります。
 
 フォークリフトはその名の通り、爪があります。その爪でモノに接触してしまったり、人を突いてしまったりすることがあり得ます。ですから、物流方針の中には「フォークリフト作業は基本動作を遵守する」ことや「何も持たずに移動するときはバック走行を遵守する」ことなどを明記しましょう。
 
 ここでいう基本動作とは、走行や上げ下げの個別作業は必ず単独で行うことを指します。荷を上げながら前進走行するな...

1. 物流の方針転換


 物流改善を進める前に会社の物流方針を明確にしておく必要があります。この方針がしっかりとしていないと今後の仕事の仕方にぶれが出てきます。せっかくいまよかれと思ってやっていることが、上司が変わったとたんにそれが否定されることも少なくありません。ですから、まず会社のメンバーでいろいろとディスカッションしてみてはいかがでしょうか。
 
 筆者は製造会社にいましたので、物流のやり方はころころと変化した記憶があります。物流方針が明確でなかったからです。まず物流の効率化に力点を置いた活動を行ないました。サプライヤーから納入された部品を製造工程に直接払い出すことで、物流上の停滞を無くし物流の効率化を行いました。サプライヤーから納入された荷姿のままで。当時は製造工程も理解があり、このような「低サービスレベル」の物流を許してくれた感がありました。しかしあるところで外部コンサルタントが入り、そのような物流のあり方を否定されました。なぜならそのような物流を行うことで、製造ラインサイドに多くの部品が並び、製造作業者の判断行為や歩行などを招いていたからです。
 
 コンサルタントから言われたことをじっくりと考え、その前提で製造工程を見ていると、確かに物流が要因となるムダがたくさん見つかったのです。そこから物流は大きく方針転換しました。とにかく徹底的に製造工程を支える物流サービスを実行しようと。このようなきっかけがありましたから、物流方針は非常に明確になったわけです。その方針の例を挙げると以下のようになります。
 
・製造作業者には部品以外を触らせない
・製造作業者には部品を選ばせない
・製造作業者には部品を取るときに歩かせない
 
 このような物流方針を掲げて大幅な物流改善を実行したのです。その効果は大きいものがありました。つまり、製造工程の生産性が大幅に向上するとともに、誤組付けなどの品質不良が大きく減ったのです。ですから皆さんの会社でも物流をどのような方向に向かせていくのかについて、じっくりと検討してみるとよいと思います。
 
 SCM
 

2. 物流品質方針の重要性

 物流を生業としている会社ではほとんどの会社が自社方針を作成して顧客にPRしていることと思います。経営方針を示すとともに、物流品質方針が示されれば顧客は注目すると思います。物流方針の中でもこの品質方針は非常に重要なのです。荷主会社であれば、物流事業者を探す時にその会社が「品質方針」を掲げているかどうかについて注目するとよいでしょう。安心して自社の荷物を預けることができるかどうか。これはきちんとした品質方針に基づいて、それを意識した仕事を行っているかどうかにかかってきます。
 
 顧客の荷物を手荒に扱ったり、温度管理すべき荷物を規定外温度下に放置したりする事例がニュースで流れました。会社として品質方針を明確にしていれば、作業者の意識の中にその品質方針があるはずですから、よほどのことが無い限り、上記のような荷扱いはしないはずです。物流会社でない場合でも会社の物流についてきちんとした方針が必要で、その中には品質方針が含まれます。
 
 次工程に対する「誤供給は行わない」、「5Sは必ず守り、規定外置きは絶対に行わない」、「製品のハンドリングはルールを順守し製品不良を招かない」などの品質に対する決め事をしっかりと決めて守らせることです。物流方針の中には「物流の実態を常時数字で把握する」という一言が入っているとよいと思います。なぜなら多くの会社で物流の実態を把握できていないからです。何となく言われたまま作業を行う体質になっていると、自分たちの立ち位置すら見えなくなってしまいます。
 
 これが好ましくないことは当然です。物流コストはいくらかかっているのか。そのコストは妥当なのか、異常なのか。あとどれだけコスト改善が必要なのか。こういったことが明確になっていることが必要です。「自分たちの効率化の前に、お客様へのサービスを優先する」、これも物流にあっては重要なことでしょう。前述の例をご覧になると、この方針がお分かりになると思います。
 

3. 安全とコスト

 物流方針の中には安全、品質、コストについては明確なポリシーを記載するべきでしょう。特に安全については最優先課題となります。物流はとかく労働災害が発生しがちな仕事だと考えられます。しかも一度起きると重大災害につながりかねないので注意が必要です。その大本はフォークリフト作業にあります。フォークリフトで荷物を上げ下げしたり運搬したりしますが、その際にフォークリフト運転者が自らけがをするケースもあれば、他者を傷つけてしまうこともあります。
 
 フォークリフトはその名の通り、爪があります。その爪でモノに接触してしまったり、人を突いてしまったりすることがあり得ます。ですから、物流方針の中には「フォークリフト作業は基本動作を遵守する」ことや「何も持たずに移動するときはバック走行を遵守する」ことなどを明記しましょう。
 
 ここでいう基本動作とは、走行や上げ下げの個別作業は必ず単独で行うことを指します。荷を上げながら前進走行するなどは禁止です。そしてこのルールを違反した者はフォークリフト作業から外すなどの措置を打つことを明記します。それだけ安全上のポリシーは厳格に守らなければなりません。物流は輸送作業を公道で行います。全く関係のない第三者に被害を及ぼすこともあり得ますので、輸送上の安全についてもきちんとルールを定め、遵守させましょう。
 
 コストについても物流方針に明確に記しましょう。一言で言うと「ムダの徹底排除」ということになると思います。常にムダが定量的にわかるKPIを保有し、それを毎日見ていくことでムダの存在を意識します。それを個々の作業者で共有し、ムダを無くしていく活動につなげるのです。
 
 以上のようにお話させていただいた物流方針はぜひ作成しましょう。「道しるべ」がなければ私たちはどの方向に進んでいったらよいかわかりません。逆の言い方をすれば、物流方針があれば私たちが毎日行う仕事にぶれは発生しません。たとえ管理者が交代したとしても、仕事の方向性は一定です。ここまで重要なものが物流方針なのです。果たして皆さんの会社にはこのような方針はありますでしょうか。いつも管理者が変わるごとに仕事の方向が変わるような会社は多分明確な方針はありません。今一度振り返ってみてはいかがでしょうか。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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