セミナー趣旨
疲労破壊は、機器や構造物の部材に対して荷重が繰返して応力が発生すると、その応力によってまず微小なき裂(ひび割れ)が発生し、やがてそれが繰返しごとに少しずつ成長(進展)を始め、最終的には部材の破断に至るという現象である。
この疲労破壊は、発生応力が耐力を越えた大きなレベルで発生すると、繰返しのたびに新たな塑性変形が発生し、繰返し回数がほぼ1万回以下で破断に至るが、発生応力が耐力以下(すなわち弾性応力)で発生する場合には、1万回を超えて破断に至る。前者のような現象を低サイクル疲労、後者を高サイクル疲労と呼んでいる。
このような疲労破壊を防止することは永遠の課題であり、 機械設計者はその現象の仕組みを理解したうえで、発生防止の対策を講じなければならない。
また、疲労破壊にはき裂(クラック)の発生がつきものであるが、き裂の強度評価を行う場合には、材料を強度ではなくて靭性(脆さ粘さ)という面から検討するための破壊力学の知識も必要となってくる。
このセミナーでは、設計者が疲労の仕組みを理解できるように、また破壊力学が理解できるように説明し、疲労破壊の防止対策が簡単に行えるように解説する。
受講対象・レベル
- 疲労破壊の現象に対応する役割にある機械技術者
必要な予備知識
- 材料力学の基本的な用語が理解できていること
- 応力の基本的な計算ができること
- 材料力学で扱う基本的な量の単位がわかること
セミナープログラム
- 材料の強度評価の概要
- 力の作用の仕方と破壊現象
- 力の分類
- 作用方向による分類
- 作用時間による分類
- 発生原因による分類
- 破壊現象の分類
- 静的破壊、動的破壊、疲労破壊
- 延性破壊(安定破壊)と脆性破壊(不安定破壊)
- 材料の機械的性質
- 引張試験と応力−ひずみ線図
- 強度(強さ)と靭性(粘[ねば]さ、脆さ)
- 力の分類
- 疲労破壊の現象と仕組み
- 疲労破壊の3段階
- 各段階での疲労破壊の進行の仕組み
- S-N線図(応力振幅-繰返し回数線図)と疲労寿命
- 高サイクル疲労破壊と低サイクル疲労破壊
- 疲労限度
- ギガサイクル疲労
- 疲労強度に及ぼす影響因子
- 応力振幅とひずみ振幅
- 平均応力、残留応力
- 変動応力(ランダム荷重)と繰返し回数の数え方
- 応力集中
- 寸法効果
- 異種荷重の組合せ
- 疲労破壊を防ぐ方法
- 有限寿命設計と無限寿命(疲労限度)設計
- 第1段階・第2段階を防ぐ方法
- 第3段階(疲労き裂進展)を防ぐ方法
- 疲労き裂進展は許すが最終破断は防ぐ方法
- き裂進展を定量評価する方法〜破壊力学の利用
- 強度と靭性の世界の違い
- 引張強さσBと、破壊靭性値KC
- 応力σと、応力拡大係数K
- 応力振幅σaと、応力拡大係数範囲ΔK
- S-N(σa-N)線図と、き裂進展速度da/dN-ΔK線図
- 応力拡大係数Kの簡便な計算方法
- 第3段階での繰返し回数の概略計算方法
- 強度と靭性の世界の違い
- 高サイクル疲労発生の防止対策
- 応力振幅・平均応力とS-N線図
- 平均応力、切欠き、残留応力の影響
- S-N線図推定方法
- 疲労破壊の断面の様子
- 低サイクル疲労破壊の防止対策
- ひずみ範囲と、Δε-N(ひずみ範囲-繰返し回数)線図
- 平均応力、切欠き、残留応力の影響
- Δε-N線図推定方法
- 疲労強度検討の実例
(疲労寿命評価と疲労破壊防止策)- 溶接継手への適用例
- 歯車
- ねじ
- はんだ接合部
- まとめ
付録
- 破壊靭性値K1Cの測定方法・推定方法
- き裂進展速度da/dN-ΔK線図の測定方法
- 安全率の合理的な設定方法
セミナー講師
遠田治正 氏
TMEC技術士事務所
技術士(機械部門)
1974年 三菱電機(株)入社
主として当時大型化しつつあったタービン発電機の回転子の強度の研究に従事。
回転円板の破壊試験、基本的な材料試験などを通じて、材料力学の実務を習得。
弾塑性有限要素法プログラムの開発を通じて、数値解析の分野も習得。
天体望遠鏡「すばる」、携帯電話の構造設計、社内機械技術者教育にも従事。
2010年 TMEC技術士事務所開設
構造CAEツールや3次元CADツールを入れて設計効率化や品質向上を図るセミナーやコンサルティングを行う
専門技術:
材料力学、破壊力学、弾性論、解析力学、有限要素法
機械技術者育成教育、CAEスキル教育、3次元CADスキル教育
設計論、設計のフロントローディング・コンカレントエンジニアリング・トップダウン設計
セミナー受講料
43,000円(消費税込)
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