塗料・塗膜の基礎知識及び塗装技術【入門:2日間講座】
より良い塗装効果を発揮させ持続させるためには、どのような基礎が必要でどのようにアプローチしたら良いのか?2日間で基礎知識をじっくりと理解し、実践に活かせる力を身に付ける!
樹脂の基礎・設計法から均一塗装・乾燥技術、流動性・付着性制御の考え方、様々な欠陥対策などを解説します。
日時
1日目:2025年1月16日(木) 10:30-16:30
2日目:2025年1月17日(金) 10:30-16:30
セミナー趣旨
本セミナーでは、塗料と塗装技術、塗膜性能を基礎的に理解することを主目的にしています。塗料は化学工業の最終製品に分類され、人類の誕生と共にあり、現在も我々の生活の一部です。一般に製品の表面に存在し、一体感があるゆえに、塗料に深入りしようと思いません。しかし、深入りすればこんなにも奥が深いし、こんなこともできるのかと楽しくなります。皆さまを塗料と塗装の入口へ案内し、より良い塗装効果を発揮させ、これを持続させるための入門編を企画しました。
塗料、塗装、乾燥・硬化は一体で、塗装しやすく、仕上がり外観が良く、耐候性も必要です。また、環境対応から、塗料の水性化、粉体塗料への転換も進行しています。これまでの1日のセミナーでは主に基礎的な要因を解説してきましたが、取り上げるべき項目が多く消化不良になることから、思い切って2日間にしました。基礎的な項目をゆっくりと解説し、質疑応答を増やして理解を深め、実践に役立つ力を養っていただきたいと考えます。
本セミナーを以下に示す7つの章に分解して、説明します。
第1章では、塗料とはどんな材料かを説明します。
(1)塗料原料と製造、(2)塗料の必要条件とは何か、(3)どのようにして塗膜になるのか、(4)実用塗装は下塗り、中塗り、上塗りの多層系からなり、各層のチームワークで塗装効果を発揮していることを解説します。要求性能が厳しくなるに伴い、多くの塗料は橋かけ反応をする架橋形塗膜に移行しています。
第2章では、架橋型塗料用樹脂に特化し、配合の基準になる当量について、説明します。
(1)2液型エポキシ樹脂塗料が形成する網目構造をジャングルジムにみなして、架橋間分子量の計算値と実測値を比較します。 (2)使用量の最も多いアクリル樹脂について、主鎖構造と分子設計を解説し、アクリルポリオールを焼付けと常温で硬化させる手法を説明します。(3)架橋型アクリル樹脂の設計はシリコーン樹脂とふっ素樹脂の設計にも応用できることを説明します。
第3章では、均一な被膜を形成させる塗装法と乾燥・硬化条件、並びに塗装仕上げに影響を及ぼす流動性や表面張力・溶解性パラメーターを取り上げます。
第4章、第5章では、塗料・塗膜に必要な性能のうち、以下の項目について解説します。
(1)色彩の見え方と隠ぺい力、(2)塗膜の強度に関する性能と試験法、(3)塗膜強度とレオロジー的な見方、(4)付着性、(5)内部応力(残留応力)を取り上げ、耐候性向上につなげる考え方を説明します。
第6章では、環境対応型塗料について概説。塗料の歴史と変遷について触れた後、環境対応型塗料の必要性、並びに水性塗料や粉体塗料の弱点をどのように改良しているのかを解説します。
そして、第7章では応用問題として、欠陥事例を取り上げます。被塗物に塗装された塗膜には、いろいろな原因で欠陥が発生します。欠陥事例はサイエンスの塊であり、これを解きほぐすと大きな成果を得ることができます。例題として、溶剤入りPP容器の変形がどんな機構で起きるのかを取り上げ、その原因究明手順や対策について皆さんと一緒に考えて、ガッテンできたら良いなと思います。
受講対象・レベル
本セミナー受講に当たり、予備知識は必要ありません。むしろ、塗装技術をもっと掘り下げたいとか、塗料をもう少し基本的かつ実践的に理解したいが、その学習方法がよく分からないという方を歓迎します。また、この分野の仕事をされて居る方にとっては塗装効果に対する見方と考え方を Power upするために利用して頂きたいと思います。
習得できる知識
(1) 塗料に対する見方とアレンジ力が身につく
(2) 塗装の実践力と塗装方法に対する見方が広がる
(3) 塗装系の設計と塗料選択のKey pointが得られる
(4) 塗膜の架橋構造と塗膜性能の関係が科学的に結びつく
セミナープログラム
第1章 塗料とはどんな材料か
1.1 塗料の原料と製造
1.2 塗料の必要条件とは
1.3 塗料の分類
1.4 樹脂が違うと何が異なるのか
―塗膜性能を支配する樹脂の見方―
1.5 塗装系の変遷-重防食塗装
―東京タワーからスカイツリーに至る塗装系の変遷―
<質疑応答>
第2章 塗料用樹脂のはなし
2.1. エポキシ樹脂から架橋型塗膜の橋かけ構造を学ぶ
(1) エポキシ当量と活性水素当量から、当量の概念を学ぶ
(2) 網目の化学構造と架橋間分子量Mc
(3) Mcの計算値と測定値との相関性
(4) 塗膜のTgとMcとの関係
(5) まとめ-樹脂配合の基礎 “当量配合”
2.2 塗料用アクリル樹脂入門
(1) アクリル樹脂の主鎖骨格
(2) アクリル樹脂の原料となるモノマーの基本構造
(3) コポリマーを作る原料モノマー
(4) ポリオールの分子設計のポイント
(5) モノマー組成から、-OH当量、水酸基価、酸価を計算する
(6) ポリオールの橋かけ反応
(7) ポリイソシアネート硬化剤の-NCO当量の求め方
(8) ポリイソシアネート硬化剤の選び方
2.3 ふっ素樹脂・シリコーン樹脂塗料とは
2.4 塗膜の耐候性に寄与する添加剤の作用機構
<質疑応答>
第3章 塗装・乾燥方法と塗料物性
3.1 流動性-これだけは理解しよう
(1) 流動性の解析と用語の意味
(2) 流動性の種類-降伏値を持つか、持たないか
(3) チキソトロピーとT.I.値の求め方
(4) 降伏値とCasson プロット
(5) ずり速度の求め方
3.2 塗装方法と均一塗布のための留意点
(1) 浸せき法・電着法
(2) 液膜転写法-ロールコーター・フローコーター-
(3) 噴霧(スプレー)法
(4) 塗装時に塗料が受けるずり速度
3.3 乾燥方法とそのポイント
(1) 加熱方式の分類
(2) 乾燥・硬化条件を決めるためには
(3) 蒸発速度を理解しよう
3.4 仕上がり外観を支配する塗料物性
(1) 表面張力の正体とは
(2) 凹みとハジキの話
(3) 対流現象
(4) 固体の臨界表面張力γc の測定法
(5) 溶解性パラメーターδの求め方
(6) 表面張力γと溶解性パラメーターδとの関係
<質疑応答>
第4章 塗膜に必要な性能と試験法
4.1 色彩と隠ぺい力
(1) 色の見え方-人間と昆虫の違い
(2) 隠ぺい力の支配要因
4.2 塗膜の機械的強さとは
(1) 硬さ・耐衝撃性・耐摩耗性の試験法
(2) 塗膜強度の支配要因
(3) 塗膜のTgと物性
(4) 単層膜と複層膜の物性の違い(塗り重ねるメリットとは)
(5) 塗装系の割れ事例と対策
4.3 塗膜のレオロジー
(1) がんばり時間と作用時間で粘弾性体の挙動は異なる
(2) 時間-温度の換算則
(3) 何のために温度データを時間データに換算するのか
<質疑応答>
第5章 塗膜の付着性と内部応力
5.1 付着性の見方・考え方
(1) くっつく力の発生
(2) 付着性の理論
(3) 付着強さの評価・試験法
(4) 付着性に及ぼす要因とその影響
(5) 塗料の付着性と溶解性パラメーターδとの関係
(6) 水による付着劣化を防ぐ方法
5.2 塗膜の内部応力の話
(1) 身の周りの湾曲現象が意味すること
(2) 内部応力(残留応力)の発生機構
(3) 内部応力の測定法
(4) 内部応力の支配要因
(5) 内部応力を低下させる塗料設計
<質疑応答>
第6章 環境対応型塗料の必要性と問題点
6.1 塗料の変遷
6.2 塗料用樹脂の水性化と問題点
6.3 粉体塗料の作り方と特有の問題点
6.4 静電塗装入門
<質疑応答>
第7章 塗料・塗膜の欠陥を見る目-どこに注目するか
7.1 例題、溶剤入りPP容器はなぜ変形するのか
7.2 白化現象と発生機構
7.3 塗膜のはく離と内部応力
7.4 泡・ハジキ防止用添加剤の配合技術
7.5 ハードケーキを起こさせない工夫
<質疑応答>
■講演中のキーワード
工業塗装、塗装方法、静電塗装、乾燥方法、塗料用樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、
ふっ素樹脂、水性塗料、粉体塗料、塗装系、色彩、隠ぺい力、仕上がり外観、粘度、流動性、ずり速度、レオロジー、
表面張力、対流、付着性、内部応力、塗膜の機械的強度、一般試験方法
セミナー講師
元 職 業能力開発総合大学校 専門基礎学科 准教授 工学博士 坪田 実 氏
セミナー受講料
【オンラインセミナー(見逃し視聴無し)】:1名66,000円(税込(消費税10%)、資料付)
*1社2名以上同時申込の場合、1名につき55,000円
【オンラインセミナー(見逃し視聴有り)】:1名74,800円(税込(消費税10%)、資料付)
*1社2名以上同時申込の場合、1名につき63,800円
*学校法人割引;学生、教員のご参加は受講料50%割引。
受講について
- 配布資料はPDF等のデータで送付予定です。受取方法はメールでご案内致します。
(開催1週前~前日までには送付致します)
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