デザインによる知的資産経営(その1)

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1.知的資産とデザイン

 
 本稿は、「デザインによる知的資産経営」を考えるものです。従前から、「知的財産(権)を有効に使って経営をしよう」ということは提言されています。本稿の味噌は、「知的財産(権)」ではなく「知的資産」に着目することと、「デザイン」の手法を取り入れることです。
 
 「知的財産経営」が「知的資産経営」に言葉が少し置き換わるだけで、「なんだ、たいして変わらないではないか!」ということになってしまいます。もちろん、知的財産を知的資産に置き換えたところに、既に大きな変化があります。すなわち、知的財産権を筆頭とした「知的財産」というある程度目に見える状態にあるもの(情報)だけではなく、従業者の知恵であるとか個人的に保有している種々の情報という、個別にとらえれば「財産」とはいいにくい情報も経営に役立つ「資産」であるというのが本稿のアプローチです。
 
 ここで、「デザイン」に登場してもらいます。蓄積した知的資産を経営につなげるとき、デザインの果たす役割は何でしょうか。、「デザインは課題解決の手法である」であり、同時にデザインは「課題を発見する、ないしは課題を設定する手法」でもあります。
 
 なぜ「デザイン」が必要なのか。かいつまんで言えば、デザインの手法は「需要者」や「社会」を意識することにあります。デザインの手法を用いずに商品開発に向かった場合、社内において目に見える範囲ですべてを処理することになりがちであり、需要者や社会への深いこだわりを意識することなく、自社の思い込みで商品を提案することになりかねません。図1の斜線部分を目指していたのです。
 
                     知的資産
 図1.従来の知的財産経営
 
 従前の「知的財産による企業の活性化」という提案においては、蓄積された知的財産を前に、企業の中での価値判断を頼りに役立ちそうな知的財産を組み合わせることになる場合が多く、そのような対応では、せっかく蓄積した知的財産(知的資産は把握されていない)をも活用することはできないでしょう。 今回は具体的な知的資産の使い方の前提として、デザインと経営との関係について解説します。
 

2、デザインと経営との関係

 
 本稿では「知的財産」ではなく「知的資産」と言っています。知的資産を利用して、デザインの手法を活用して経営をしていくという本稿のテーマの下では、どのようなステップを踏んだらいいのでしょうか。
 
 基本的には、デザインの手法を活用して、社会環境と需要者の動向に目を開いて企業経営や商品開発の方向性・課題を発見し、知的資産を利用して課題を解決することです。つまり、図2の斜線部分を見つけ出し、そこに向けて経営し、商品を開発することです。
 
                       知的財産
図2.デザインによる知的資産経営
 
 社会環境や需要者の動向には、現在だけでなく近い将来も含めなければなりません。今、需要者がこれを望んでいるから、それに対応する商品を作ろうということでは「イノベーション」を行う企業にはなれません。「今」、需要者が「本当に望んでいること(insight)」を探し出せなければ、イノベーションを持続する企業にはなれないでしょう。本稿で目指すのはイノベーションを継続できる企業づくりであり、「ブランド」づくりはあくまでそ...

1.知的資産とデザイン

 
 本稿は、「デザインによる知的資産経営」を考えるものです。従前から、「知的財産(権)を有効に使って経営をしよう」ということは提言されています。本稿の味噌は、「知的財産(権)」ではなく「知的資産」に着目することと、「デザイン」の手法を取り入れることです。
 
 「知的財産経営」が「知的資産経営」に言葉が少し置き換わるだけで、「なんだ、たいして変わらないではないか!」ということになってしまいます。もちろん、知的財産を知的資産に置き換えたところに、既に大きな変化があります。すなわち、知的財産権を筆頭とした「知的財産」というある程度目に見える状態にあるもの(情報)だけではなく、従業者の知恵であるとか個人的に保有している種々の情報という、個別にとらえれば「財産」とはいいにくい情報も経営に役立つ「資産」であるというのが本稿のアプローチです。
 
 ここで、「デザイン」に登場してもらいます。蓄積した知的資産を経営につなげるとき、デザインの果たす役割は何でしょうか。、「デザインは課題解決の手法である」であり、同時にデザインは「課題を発見する、ないしは課題を設定する手法」でもあります。
 
 なぜ「デザイン」が必要なのか。かいつまんで言えば、デザインの手法は「需要者」や「社会」を意識することにあります。デザインの手法を用いずに商品開発に向かった場合、社内において目に見える範囲ですべてを処理することになりがちであり、需要者や社会への深いこだわりを意識することなく、自社の思い込みで商品を提案することになりかねません。図1の斜線部分を目指していたのです。
 
                     知的資産
 図1.従来の知的財産経営
 
 従前の「知的財産による企業の活性化」という提案においては、蓄積された知的財産を前に、企業の中での価値判断を頼りに役立ちそうな知的財産を組み合わせることになる場合が多く、そのような対応では、せっかく蓄積した知的財産(知的資産は把握されていない)をも活用することはできないでしょう。 今回は具体的な知的資産の使い方の前提として、デザインと経営との関係について解説します。
 

2、デザインと経営との関係

 
 本稿では「知的財産」ではなく「知的資産」と言っています。知的資産を利用して、デザインの手法を活用して経営をしていくという本稿のテーマの下では、どのようなステップを踏んだらいいのでしょうか。
 
 基本的には、デザインの手法を活用して、社会環境と需要者の動向に目を開いて企業経営や商品開発の方向性・課題を発見し、知的資産を利用して課題を解決することです。つまり、図2の斜線部分を見つけ出し、そこに向けて経営し、商品を開発することです。
 
                       知的財産
図2.デザインによる知的資産経営
 
 社会環境や需要者の動向には、現在だけでなく近い将来も含めなければなりません。今、需要者がこれを望んでいるから、それに対応する商品を作ろうということでは「イノベーション」を行う企業にはなれません。「今」、需要者が「本当に望んでいること(insight)」を探し出せなければ、イノベーションを持続する企業にはなれないでしょう。本稿で目指すのはイノベーションを継続できる企業づくりであり、「ブランド」づくりはあくまでそのツールなのです。
 
 
 

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この記事の著者

峯 唯夫

「知的財産の町医者」として、あらゆるジャンルの相談に応じ、必要により特定分野の専門家を紹介します。

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