デザインによる知的資産経営:イノベーション・ブランドと知的資産(その4)

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 ブランド知的資産経営を語るとき、2つのキーワードがあります。イノベーションとブランド(づくり)です。そこで、これら2つの言葉の意義を明らかにしつつ、イノベーションやブランドと「知的資産」とのつながりを解説します。今回は、前回のその3に続いて解説します。
 

(3)デザインとブランド

 
 ここでは「デザイン」の語を「商品等の形態」という狭い意味で使用します。経産省および特許庁では、「デザインの保護の拡充」に関心を示しており、平成23年には(財)知的財産研究所に「企業の事業戦略におけるデザインを中心としたブランド形成・維持のための産業財産権制度の活用に関する調査研究」を委託しています。
 
 しかしその報告書では、デザインを保護し、ブランドを形成するためにその保護制度がどうあればいいか、という「意匠法」を中心とした議論にとどまっています。できあがったデザインの保護という範疇を超えた検討はされていないようです。
 
 果たして、優れたデザインがあればブランドをつくれるのでしょうか。決してそのようなことはありません。どんなに斬新なデザインの商品を市場に出しても、それだけで企業のブランドを構築することはできないのです。優れたデザインに与えられるGマークの受賞商品で、ブランド構築に寄与しているものがどれほどあるでしょうか。
 
 先に提示した報告書においても、優れたデザインはブランド構築の要素になるといっていますが、優れたデザインがあればブランドをつくれるとはいっていません。これは、商標=ブランドとはいえないのと同じことです。デザインを源泉としてブランドを構築する場合、以下のように2つのルートが考えられます。
 
① 同じデザイン(全体として同じという場合と、特徴的な部分が同じという場合の双方がある)を長期
    間利用するもの(例えば、BMWのフロントグリル)
 
② デザインは全く異なるが、デザインからその企業の商品であると認識できるようなもの(例えば、
  「無印良品」の商品群)
 

(4)ブランドの源泉は何か

 
 先に述べたように、ブランドの源泉は企業と需用者との信頼関係です。そして、信頼関係を築くためには企業が「私はこういう企業です」という情報を発信しなければなりません。そのためには、自社を「私はこういう企業だ」と定義づける必要があります。
 
 すなわち、企業の存在意義、将来像、商品像を定義しなければなりません。そして、これらを決定する手法が広義の「デザイン」にあります。デザインの手法によって自社を定義し、それを商品に落とし込み、需用者に発信するという流れになります。
 
 つまり、ブランドの源泉とは、自社をし...
 ブランド知的資産経営を語るとき、2つのキーワードがあります。イノベーションとブランド(づくり)です。そこで、これら2つの言葉の意義を明らかにしつつ、イノベーションやブランドと「知的資産」とのつながりを解説します。今回は、前回のその3に続いて解説します。
 

(3)デザインとブランド

 
 ここでは「デザイン」の語を「商品等の形態」という狭い意味で使用します。経産省および特許庁では、「デザインの保護の拡充」に関心を示しており、平成23年には(財)知的財産研究所に「企業の事業戦略におけるデザインを中心としたブランド形成・維持のための産業財産権制度の活用に関する調査研究」を委託しています。
 
 しかしその報告書では、デザインを保護し、ブランドを形成するためにその保護制度がどうあればいいか、という「意匠法」を中心とした議論にとどまっています。できあがったデザインの保護という範疇を超えた検討はされていないようです。
 
 果たして、優れたデザインがあればブランドをつくれるのでしょうか。決してそのようなことはありません。どんなに斬新なデザインの商品を市場に出しても、それだけで企業のブランドを構築することはできないのです。優れたデザインに与えられるGマークの受賞商品で、ブランド構築に寄与しているものがどれほどあるでしょうか。
 
 先に提示した報告書においても、優れたデザインはブランド構築の要素になるといっていますが、優れたデザインがあればブランドをつくれるとはいっていません。これは、商標=ブランドとはいえないのと同じことです。デザインを源泉としてブランドを構築する場合、以下のように2つのルートが考えられます。
 
① 同じデザイン(全体として同じという場合と、特徴的な部分が同じという場合の双方がある)を長期
    間利用するもの(例えば、BMWのフロントグリル)
 
② デザインは全く異なるが、デザインからその企業の商品であると認識できるようなもの(例えば、
  「無印良品」の商品群)
 

(4)ブランドの源泉は何か

 
 先に述べたように、ブランドの源泉は企業と需用者との信頼関係です。そして、信頼関係を築くためには企業が「私はこういう企業です」という情報を発信しなければなりません。そのためには、自社を「私はこういう企業だ」と定義づける必要があります。
 
 すなわち、企業の存在意義、将来像、商品像を定義しなければなりません。そして、これらを決定する手法が広義の「デザイン」にあります。デザインの手法によって自社を定義し、それを商品に落とし込み、需用者に発信するという流れになります。
 
 つまり、ブランドの源泉とは、自社をしっかり理解していることなのです。これをもう少し落とし込むと、自社の「知的資産は何なのか」というところへ行き着きます。ここに企業の規模は関係ありません。『老舗ブランド企業の経験価値創造』(長沢伸也著、2006年、同友館)では、世界的なブランドである「エルメス」と京都の老舗企業の商品開発、ビジネスマネジメントの手法・思想に多くの共通点があることが紹介されています。
 
 

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この記事の著者

峯 唯夫

「知的財産の町医者」として、あらゆるジャンルの相談に応じ、必要により特定分野の専門家を紹介します。

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