◆最高の結果をもっと早く手に入れたい方のためのTRIZ/USIT活用法
3 最高の解決策を短時間で手に入れる
3.1 解決策の出し方
解決のために“斬新な”アイデアを“迅速に”出すことが求められる時、個人の知識・知見だけではもちろん自部門や自社の知識を集めてもグローバルな競争に勝てるだけの解決策・アイデアがなかなか得られません。
達成すべき課題を解決するのには現に多くの手法が存在します。それらの手法で具体的な解決策を出すには多くの場合ブレーンストーミングという手法が用いられます。ブレーンストーミングで得られるのは自分やメンバーの経験の範囲内でしかなく、勘と経験(と度胸)で「やってみる」が、効率が悪い上に解決案にたどり着いたと思っても、実は真の解決策に至っていないことが多いのです。
“斬新な”アイデアを得るためには、現在(自分は知らなくても)世の中で知られている優れた結果・方法を利用し応用して、解決策に到達することが必要です。
・ ひらめきに頼る確率の低い属人的な創造思考からの脱却
・ 過去の優れた発明のたどった道から学びとった科学的な創造的思考方法の会得
具体的には
① 自分の専門分野にのみこだわることをせず自分の経験外の分野での知識・情報を広く求め利用する。
② 問題の本質を捉えることや問題の解決策を広い視野で求める。
そのために、解決案に向けて指標を与え解決案へのパスを効率よく発見する系統的な手法が必要になります。これがTRIZ です。
3.2 TRIZ 2,3)
(1)TRIZ とは
旧ソ連の海軍の特許担当者G. Altshuller(アルトシュラー)が多くの特許を調べていて、優れた発明には一定の法則のあることを見いだし、課題を解決するための方法として1946 年に理論体型の基本を作りました。
当初数十万件の(その後弟子達によって250 万件以上とも言われる)有用な特許を分析し、技術問題に関わる革新的な解決の殆どは過去の発明事例からの類比的発想で導くことが可能であるということを見い出しました。
TRIZ とは次のロシア語の頭文字ТРИЗを対応する英語のアルファベットTRIZ に置き換えたものです。
TRIZ の基本的な考え方は、固有の問題(自分の問題)を抽象化したモデルに置き換え(一般化)、用意されたモデル解(一般解)に当てはめて解決策を出す、というものです(図4)。二次方程式の解き方と同じで自分の問題に対し試行錯誤で解を探すというやりかたはとりません。
図4.TRIZ の基本的な考え方 -解決策を得る方法-
(2)TRIZ の構成とその内容
問題の内容によっても、扱う人がそれをどのような切り口で見るかによって様々な捉え方ができます。
G. Altshuller は様々な切り口から問題を捉えて、それぞれにモデル解を用意しています(図5)。その代表的なものの概要を以下に示します。
図5.TRIZ の全体体系
・技術的矛盾と40 の発明原理
何かを改善しようとすると別のところで支障をきたす、いわゆるモグラ叩き的な状況(矛盾:あちらを立てればこちらが立たない)にある場合に、トレードオフなしに解決する方法(40 の発明原理)が用意されています。改善しようとする39 個のパラメータとその時に悪化してしまう39 個のパラメータとを組み合わせた時にどのような発明原理を用いたらよいかを与えてくれるのが「コントラディクションテーブル」です。むやみに試行錯誤することなく発明原理の観点で解決策が得られます。
・物理的矛盾と分離の法則
上記の技術的矛盾のうち,改善したいパラメータと悪化してしまうパラメータが同じパラメータである場合を言い、この解決には「分離の法則」を用います。
・物質-場分析と76 の標準解
扱おうとする対象をシステムとして捉え、構成しているものとそれらの間にどのような力が働いているかを考え、この力の過不足や、構成因子自体についても不要なものが含まれていないか、又は、不足していないかを見る。この解決のために76 の標準解が用意されています。
・技術進化の法則と進化のパターン
技術はランダムに改善されるのではなく生物学や社会学的システムと同じように特定のパターンに従って「進化」していると考える。進化のパターンに則って現在の問題を含んだ状況から、より進化した形に移行させることで解決することができます。
・Effects と機能の逆引き辞書
自分の問題に対してどのような科学的な原理・法則・現象を利用できるか、機能の逆引き辞書を利用します。
(3) 初心者が簡便にそれなりの解決策をすばやく求める
-技術的矛盾解決法-
詳細な検討をするには時間がない、又は、人手をかけられない場合にTRIZ の一部を簡便に用いることも可能です。技術的問題の大半は技術的矛盾で捉えることが可能です。
そこで上記技術的矛盾を更に改善し、13 個のパラメータの「新矛盾マトリックス1」と11 個のパラメータの「新矛盾マトリックス2」を用い、40 の発明原理を25の統合発明原理に整理して使いやすくした方法が提案されています4,5)
3.3 きっちりとした解決策を求めるには
上記(3)および図5 に述べたいろんな切り口で問題を捉え解決策を検討することで、きっちりとした解決策を手に入れることが可能となります。しかしこの多くの切り口(観点)で捉えきるのは大変なのでこれらを分かりやすく再編して次回に課題解決実践法1)として紹介します。
参考文献
1)http://www. triz-usit.com/
2)G. Altshuller,遠藤ら訳「超発明術TRIZ シリーズ1 入門編 原理と概念に見る全体像」日経BP,
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