生産管理パッケージ活用の留意点(その7)

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◆導入作業にあたっての留意点(敵は社内にあり)

 
 MRP生産管理システムの導入作業や活用には現場の協力が欠かせません。次に、生産管理システムに関する現場の関与に関する問題をまとめました。実は生産管理システムの導入において一番のハードルになりがちなのが、社内の生産管理関係者にどうやって協力してもらうかです。ある意味「敵は社内にあり」といっても過言ではありません。
 

1.マスターデータ、在庫データが整備されないとシステムは機能しない

 
 生産管理システムに限らず、システムの導入作業は予定時期には本番開始できない傾向があります。しかも期間だけが超過ならまだしも、開発期間延長によって開発費用も膨れ上げってしまうこともあります。

 こうした問題が起きる理由として、システムベンダーのプロジェクトマネジメントの甘さを問題にする方も多いでしょう。確かにそういったケースもありますが、それ以上の障害となりやすいのがユーザー側で実施する作業です。代表的なユーザー側作業に、システム運用の基盤となるマスターデータの整備作業があります。
 
 生産管理システムでは、部品マスターの整備が最も大変な作業です。何万点もある部品の名称から購入先(製造工程)、単価、購入ロット数、リードタイムを本番運用開始時期までに準備することが求められます。マスターデータの整備を専任で行う要員がアサインできればいいのですが、現業と兼務状態の要員にこうした大量の作業を時間通りにこなしてもらおうとすると、大抵無理が生じます。現行システムからの単純移行であっても、データの内容に関するチェック作業は欠かせませんので、それなりの工数が必要になります。
 
 もうひとつ、よく問題になるのが在庫データの精度の問題です。この数字も間違っているとシステムはうまく機能しません。日頃の入荷、出荷作業をルール通りに行うことも大切ですが、現場作業員がいい加減な棚卸し作業をすると、生産管理システムから出るデータの信頼性が崩れてしまいます。

 こうしたデータ整備の重要性に関しては、いくら口を酸っぱく言っても言い過ぎることはありません。基準となるマスターデータのメンテナンスが滞り、現場調整作業が多発することもあり得ますので、導入プロジェクトを任されたら、心してプロジェクトにとりかかるようにしてください。
 

2.社内の意識統一ができないプロジェクトは失敗する

 
 生産管理システムを一義的に運用するのは現場要員です。現場要員がシステムに対して誤った情報やあいまいな情報をインプットするような状況では、せっかくのシステムも機能しません。例えば、現場には実績データのインプットを行うことが求められているのに、あとになって辻褄合わせ的なデータを入力してしまうといったことです。
 
 ただし、現場要員が故意に誤った情報をインプットすることは実際には少ないようです。一番問題なのは、よかれと思って行う行動が混乱を起こす要因となることです。代表的な行動に「サバを読む」という行為があります。

 例えば次のような話です、本来の納期は5日後なのに、納期遅れがあるとまずいと心配した人があえて納期は4日後とインプットする。逆に本来のリードタイムは10日なのに、もしも何かあったらというリスクを考慮してリードタイムを20日と回答する。また、売れはじめたら欠品が起きないように手配数量をわざと増やす。

 サバ読みは、気が利くといわれている優秀な現場要員ほどよく行います。確かに人間同士の阿吽の呼吸で行なってきた現場では、こうしたサバ読みが作業をうまく回す秘訣になっていたこともありました。
 
 しかし、コンピュータの運用においては必ずしもいい状態ではありません。コンピュータで計算したり、指示したりした内容の精度が落ちる原因となるからです。もしもコンピュータから出てくるデータの精度に対して現場が少しでも疑問を持った場合、現場はその数字を信じなくなる可能性があります。人間によるサバ読み指示であれば、現場の様子を見ることで細かな調整も可能かもしれませんが、コンピュータにはそんな高度な芸当はできません。
 
 サバ読み問題以外にも現場要員の意識が低いと次のような問題が起きやすくなります。
 
  •先行手配部分の管理が軽視されやすく、過剰部品在庫や欠品問題が誘発されやすい
  •顧客要求納期重視の裏で、作業改善や管理数字収集がおざなりにされやすい
  •全体最適思考が機能せず、各人の経験に頼った業務管理となりやすい
  •受注生産、顧客重視...

◆導入作業にあたっての留意点(敵は社内にあり)

 
 MRP生産管理システムの導入作業や活用には現場の協力が欠かせません。次に、生産管理システムに関する現場の関与に関する問題をまとめました。実は生産管理システムの導入において一番のハードルになりがちなのが、社内の生産管理関係者にどうやって協力してもらうかです。ある意味「敵は社内にあり」といっても過言ではありません。
 

1.マスターデータ、在庫データが整備されないとシステムは機能しない

 
 生産管理システムに限らず、システムの導入作業は予定時期には本番開始できない傾向があります。しかも期間だけが超過ならまだしも、開発期間延長によって開発費用も膨れ上げってしまうこともあります。

 こうした問題が起きる理由として、システムベンダーのプロジェクトマネジメントの甘さを問題にする方も多いでしょう。確かにそういったケースもありますが、それ以上の障害となりやすいのがユーザー側で実施する作業です。代表的なユーザー側作業に、システム運用の基盤となるマスターデータの整備作業があります。
 
 生産管理システムでは、部品マスターの整備が最も大変な作業です。何万点もある部品の名称から購入先(製造工程)、単価、購入ロット数、リードタイムを本番運用開始時期までに準備することが求められます。マスターデータの整備を専任で行う要員がアサインできればいいのですが、現業と兼務状態の要員にこうした大量の作業を時間通りにこなしてもらおうとすると、大抵無理が生じます。現行システムからの単純移行であっても、データの内容に関するチェック作業は欠かせませんので、それなりの工数が必要になります。
 
 もうひとつ、よく問題になるのが在庫データの精度の問題です。この数字も間違っているとシステムはうまく機能しません。日頃の入荷、出荷作業をルール通りに行うことも大切ですが、現場作業員がいい加減な棚卸し作業をすると、生産管理システムから出るデータの信頼性が崩れてしまいます。

 こうしたデータ整備の重要性に関しては、いくら口を酸っぱく言っても言い過ぎることはありません。基準となるマスターデータのメンテナンスが滞り、現場調整作業が多発することもあり得ますので、導入プロジェクトを任されたら、心してプロジェクトにとりかかるようにしてください。
 

2.社内の意識統一ができないプロジェクトは失敗する

 
 生産管理システムを一義的に運用するのは現場要員です。現場要員がシステムに対して誤った情報やあいまいな情報をインプットするような状況では、せっかくのシステムも機能しません。例えば、現場には実績データのインプットを行うことが求められているのに、あとになって辻褄合わせ的なデータを入力してしまうといったことです。
 
 ただし、現場要員が故意に誤った情報をインプットすることは実際には少ないようです。一番問題なのは、よかれと思って行う行動が混乱を起こす要因となることです。代表的な行動に「サバを読む」という行為があります。

 例えば次のような話です、本来の納期は5日後なのに、納期遅れがあるとまずいと心配した人があえて納期は4日後とインプットする。逆に本来のリードタイムは10日なのに、もしも何かあったらというリスクを考慮してリードタイムを20日と回答する。また、売れはじめたら欠品が起きないように手配数量をわざと増やす。

 サバ読みは、気が利くといわれている優秀な現場要員ほどよく行います。確かに人間同士の阿吽の呼吸で行なってきた現場では、こうしたサバ読みが作業をうまく回す秘訣になっていたこともありました。
 
 しかし、コンピュータの運用においては必ずしもいい状態ではありません。コンピュータで計算したり、指示したりした内容の精度が落ちる原因となるからです。もしもコンピュータから出てくるデータの精度に対して現場が少しでも疑問を持った場合、現場はその数字を信じなくなる可能性があります。人間によるサバ読み指示であれば、現場の様子を見ることで細かな調整も可能かもしれませんが、コンピュータにはそんな高度な芸当はできません。
 
 サバ読み問題以外にも現場要員の意識が低いと次のような問題が起きやすくなります。
 
  •先行手配部分の管理が軽視されやすく、過剰部品在庫や欠品問題が誘発されやすい
  •顧客要求納期重視の裏で、作業改善や管理数字収集がおざなりにされやすい
  •全体最適思考が機能せず、各人の経験に頼った業務管理となりやすい
  •受注生産、顧客重視風土が強すぎると、自ら変革を起こそうという発想が生じにくい
 
 こうしたことが起きないようにするためには、生産管理システムの導入作業を行う際に、何のために生産管理システムを導入するのか、生産管理システムの運用において現場が注意するべきことは何かを、徹底的に事前教育することが大事です。

 こうした事前教育による意識統一を図らないでプロジェクトを開始すると、いつまでたってもシステムが完成しない、システム本番以後もトラブルが多発する、といったことにつながりかねません。社内のプロジェクトメンバーによる説明だけでは相手にされないようであれば、社外のコンサルタントなどを使うことも考えられます。

 社内の意識統一は生産管理システム導入にあたって最もな事項ですので、経営陣自ら自社にとって最も効果的な方法を考える必要があります。
 
 

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この記事の著者

本間 峰一

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