中小企業に必要な組織設計とは

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 企業の活動に欠かせない「固有技術」「人」「管理のしくみ」「組織」などソフトな経営資源は中小企業に於いても重要な役割を担っています。しかしながら、業務改革が進まない、品質トラブルが絶えないという企業では「組織」としての問題解決能力が不足している場合も多いと考えられます。個人商店的な管理から、組織に基づく管理に移行する条件は以下の3つです。
 
 ① 組織の責任と権限を明確にする。・・・個人のミスは組織の管理ミス
 ② 権限移譲を行う。・・・社長は部長へ、部長は課長へ一定の権限を与える
 ③ 柔軟な組織構造にする。・・・会社の方針によって組織は替わる
 
 また、組織の形態としては
 
 ① ライン組織
 ② ライン&スタッフ組織
 ③ マトリクス組織
 
 などがあり、製造業は、意思決定の迅速化、不確実な環境に対応できるようにスタッフの機能をより強化にした、ライン&スタッフ組織が有効です。
 

1. 個人商店経営から、組織経営へ

 
 個人商店から、一人前の企業へ脱皮するには、組織の力を生かした仕事のやり方に変えて行かなければなりませんが、以下のような企業は、組織力による仕事ができていないといっていいでしょう。
 
 ・社長が直接社員へ指示を出し、報告を受けたりして、中間の課長部長にはその内容は知らされない。
 ・ミスが起きると、個人が責められ、組織の責任は問わない。
 ・役割が分からない肩書の社員がたくさんいる(次長、工場長代理)。
 ・ライン組織に、課長1人、係長1人、担当1人などの組織が存在する。
 ・業務が特定の人に集中している。
 ・担当者が退職すると、引き継いだ人はまったくその業務内容が分からない。
 

 

 組織で仕事をするとはどういうことなのか、 組織力を高めるとはどういうことなのか、また、組織として日常業務においてどのような活動をしなければならないのか、などを考えてみましょう。
 

2. 権限移譲の考え方

 
 オーナーとして、会社を大きくしてきた社長ですが、規模が大きくなり自分一人で頑張る限界を感じる時がいずれやって来ます。社長が取り組むべき行動の一つは「会議に出ない」ということ。それまでは全ての業務領域、すべての階層の会議に出て、しっかりと指示を出し、管理をしていました。しかし、それではいつまで経っても社員の「社長頼み」の受け身の態度は変らないでしょう。会議には出席せずに、結果の報告を受ける、その内容を承認すると言う形に徹します。つまり、部長、課長に考えさせ、最適案を提案させるのです。
 
 社長+社員という二階層の組織体制を、社長+(部長)+課長+社員という三階層、あるいは四階層とし、部長、課長たちに自分で考えて判断するように求めます。つまり、営業、品質管理、生産管理など機能ごとの業務内容と責任者を決めることと、部長・課長に業務の権限移譲を行い、社長は全体の指揮官として中長期的な方針を打ち立て会社の方向性をどうするか?考えることに注力します。しかし、この「権限移譲」の作業は困難を伴います。社長はいつまでも「エースで4番」を辞めたくないからです。「組織力で勝つ」考えより「一人のカリスマで勝つ」方向に行ってしまいがちですが、一人で頑張ることの限界はやがてやって来ます。社長依存から脱皮するためには、社長、社員双方の意識改革が必要であり、この難しさに正面から向き合って乗り越えなければ、小規模企業から、中堅企業への脱皮はできません。
 
 「分かってはいるが、そんな事ができる能力を持った人がいないので・・・」と悩まれる社長さんも多いと思います。しかし、社員も失敗や成功体験を積むことによって、どんどん成長し、そのことによって明らかに組織力はアップします。①人を育てること、②組織をどう構成するか、そして③業務の仕組みを構築すること、この三つのことを考え、組織経営に切り替えて行くのが社長の仕事なのです。
 

3. マネジメント階層の役割

 
 組織は、ただ人に肩書を与える目的で作ってはいけません。経営層、部長・課長係長・主任とそれぞれ役割が決まっています。各マネジメント層に応じて、それぞれの役割、権限を明確にしておく必要があります。組織も、部、課、係と明確にその役割を「組織権限規定」「業務分掌」で決めておきます。営業、生産など業務の分担を明確にすると同時に、マネジメント階層の役割を明確にし、権限移譲型の組織を作っていくことが大事な事なのです。
 
 組織戦略
 
 アメリカの経営学者チャンドラーは「組織は戦略に従う」と提唱しました。一方、同じく経営学者のアンゾフは、チャンドラーとは全く反対の「戦略は組織に従う」という説を示しました。つまりトップの戦略と、組織とは密接に関係していることを示しています。しかし、中小企業においては、人材には限りがあるため、「戦略は組織に従う(制約を受ける)」ことになります。そのために、先を見越して、マネジメント人材の育成を日ごろから意識して考えておく必要があるのです。
 

4. 組織形態の種類と特徴

 
 中小企業、特に製造業では形としてライン組織という権力集中・定型業務タイプの組織で成り立っていましたが、これからは権限移譲、非定型業務型への移行が望ましいと考えられます。企業の課題解決を図る上で組織も環境の変化に合わせて、柔軟に変えていかなければならないのです。
 
組織戦略
 

 【組織の役割として重要な点】

 
 企業の成長のため、課題達成のため、日常業務をこなすだけでなく、PDCAを回す改善活動も業務として実施しなければなりません。この後説明するマトリクス組織は、そのような活動(プロジェクト活動)を行うのに適しています。課題達成を使命として、達成されれば組織は解散し、また新たな課題を解決するために別のプロジェクト組織が結成されます。今の時代、単なるルーチンワークを行う組織から、課題を解決する部門横断的な組織が必要になっているのです。組織形態として、ライン組織とライン&スタッフ組織、マトリクス組織などがあり、会社の課題解決、目標達成のため、どのような組織形態が適しているのかを考えます。以下に各組織形態の特徴、メリット・デメリットについて解説します。
 
組織戦略
 

(1) ライン組織

 
 ピラミッド組織または軍隊組織とも呼ばれ、トップからの指揮命令ルートと下からの報告ルートがはっきりするメリットがあります。ただし、複雑な業務指示が伝わらない報告がトップまで上がるまでに時間がかかる等のデメリットもあります。また、官僚組織と言われるように、硬直化すると自部門の利益だけを追求するようになります。
 

(2) ライン&スタッフ組織

 
 ライン組織のなかにスタッフ部門を設けた組織で、スタッフは日常業務の指揮命令系ルートからは離れ、比較的長期の課題解決に取り組み、ト...
 企業の活動に欠かせない「固有技術」「人」「管理のしくみ」「組織」などソフトな経営資源は中小企業に於いても重要な役割を担っています。しかしながら、業務改革が進まない、品質トラブルが絶えないという企業では「組織」としての問題解決能力が不足している場合も多いと考えられます。個人商店的な管理から、組織に基づく管理に移行する条件は以下の3つです。
 
 ① 組織の責任と権限を明確にする。・・・個人のミスは組織の管理ミス
 ② 権限移譲を行う。・・・社長は部長へ、部長は課長へ一定の権限を与える
 ③ 柔軟な組織構造にする。・・・会社の方針によって組織は替わる
 
 また、組織の形態としては
 
 ① ライン組織
 ② ライン&スタッフ組織
 ③ マトリクス組織
 
 などがあり、製造業は、意思決定の迅速化、不確実な環境に対応できるようにスタッフの機能をより強化にした、ライン&スタッフ組織が有効です。
 

1. 個人商店経営から、組織経営へ

 
 個人商店から、一人前の企業へ脱皮するには、組織の力を生かした仕事のやり方に変えて行かなければなりませんが、以下のような企業は、組織力による仕事ができていないといっていいでしょう。
 
 ・社長が直接社員へ指示を出し、報告を受けたりして、中間の課長部長にはその内容は知らされない。
 ・ミスが起きると、個人が責められ、組織の責任は問わない。
 ・役割が分からない肩書の社員がたくさんいる(次長、工場長代理)。
 ・ライン組織に、課長1人、係長1人、担当1人などの組織が存在する。
 ・業務が特定の人に集中している。
 ・担当者が退職すると、引き継いだ人はまったくその業務内容が分からない。
 

 

 組織で仕事をするとはどういうことなのか、 組織力を高めるとはどういうことなのか、また、組織として日常業務においてどのような活動をしなければならないのか、などを考えてみましょう。
 

2. 権限移譲の考え方

 
 オーナーとして、会社を大きくしてきた社長ですが、規模が大きくなり自分一人で頑張る限界を感じる時がいずれやって来ます。社長が取り組むべき行動の一つは「会議に出ない」ということ。それまでは全ての業務領域、すべての階層の会議に出て、しっかりと指示を出し、管理をしていました。しかし、それではいつまで経っても社員の「社長頼み」の受け身の態度は変らないでしょう。会議には出席せずに、結果の報告を受ける、その内容を承認すると言う形に徹します。つまり、部長、課長に考えさせ、最適案を提案させるのです。
 
 社長+社員という二階層の組織体制を、社長+(部長)+課長+社員という三階層、あるいは四階層とし、部長、課長たちに自分で考えて判断するように求めます。つまり、営業、品質管理、生産管理など機能ごとの業務内容と責任者を決めることと、部長・課長に業務の権限移譲を行い、社長は全体の指揮官として中長期的な方針を打ち立て会社の方向性をどうするか?考えることに注力します。しかし、この「権限移譲」の作業は困難を伴います。社長はいつまでも「エースで4番」を辞めたくないからです。「組織力で勝つ」考えより「一人のカリスマで勝つ」方向に行ってしまいがちですが、一人で頑張ることの限界はやがてやって来ます。社長依存から脱皮するためには、社長、社員双方の意識改革が必要であり、この難しさに正面から向き合って乗り越えなければ、小規模企業から、中堅企業への脱皮はできません。
 
 「分かってはいるが、そんな事ができる能力を持った人がいないので・・・」と悩まれる社長さんも多いと思います。しかし、社員も失敗や成功体験を積むことによって、どんどん成長し、そのことによって明らかに組織力はアップします。①人を育てること、②組織をどう構成するか、そして③業務の仕組みを構築すること、この三つのことを考え、組織経営に切り替えて行くのが社長の仕事なのです。
 

3. マネジメント階層の役割

 
 組織は、ただ人に肩書を与える目的で作ってはいけません。経営層、部長・課長係長・主任とそれぞれ役割が決まっています。各マネジメント層に応じて、それぞれの役割、権限を明確にしておく必要があります。組織も、部、課、係と明確にその役割を「組織権限規定」「業務分掌」で決めておきます。営業、生産など業務の分担を明確にすると同時に、マネジメント階層の役割を明確にし、権限移譲型の組織を作っていくことが大事な事なのです。
 
 組織戦略
 
 アメリカの経営学者チャンドラーは「組織は戦略に従う」と提唱しました。一方、同じく経営学者のアンゾフは、チャンドラーとは全く反対の「戦略は組織に従う」という説を示しました。つまりトップの戦略と、組織とは密接に関係していることを示しています。しかし、中小企業においては、人材には限りがあるため、「戦略は組織に従う(制約を受ける)」ことになります。そのために、先を見越して、マネジメント人材の育成を日ごろから意識して考えておく必要があるのです。
 

4. 組織形態の種類と特徴

 
 中小企業、特に製造業では形としてライン組織という権力集中・定型業務タイプの組織で成り立っていましたが、これからは権限移譲、非定型業務型への移行が望ましいと考えられます。企業の課題解決を図る上で組織も環境の変化に合わせて、柔軟に変えていかなければならないのです。
 
組織戦略
 

 【組織の役割として重要な点】

 
 企業の成長のため、課題達成のため、日常業務をこなすだけでなく、PDCAを回す改善活動も業務として実施しなければなりません。この後説明するマトリクス組織は、そのような活動(プロジェクト活動)を行うのに適しています。課題達成を使命として、達成されれば組織は解散し、また新たな課題を解決するために別のプロジェクト組織が結成されます。今の時代、単なるルーチンワークを行う組織から、課題を解決する部門横断的な組織が必要になっているのです。組織形態として、ライン組織とライン&スタッフ組織、マトリクス組織などがあり、会社の課題解決、目標達成のため、どのような組織形態が適しているのかを考えます。以下に各組織形態の特徴、メリット・デメリットについて解説します。
 
組織戦略
 

(1) ライン組織

 
 ピラミッド組織または軍隊組織とも呼ばれ、トップからの指揮命令ルートと下からの報告ルートがはっきりするメリットがあります。ただし、複雑な業務指示が伝わらない報告がトップまで上がるまでに時間がかかる等のデメリットもあります。また、官僚組織と言われるように、硬直化すると自部門の利益だけを追求するようになります。
 

(2) ライン&スタッフ組織

 
 ライン組織のなかにスタッフ部門を設けた組織で、スタッフは日常業務の指揮命令系ルートからは離れ、比較的長期の課題解決に取り組み、トップに対する提言や業務改善などを実施します。ただ、弊害として、役職を引退した人の腰かけ的ポストとなっている場合も多く見受けられます。
 

(3) マトリクス組織

 
 ライン組織は残したまま、各部門を横に横断する形でつながりを持つ組織を重ね、いわばマトリクスを形成する組織を言います。プロジェクト組織は、一時的にこのような組織形態をとります。ライン組織の指揮命令系統を残したまま、プロジェクト組織の指揮により行動するため、どちらを優先するかを業務によって決めておく必要があります。
 

5.効果的な組織編成とは

 
 中小企業では、冒頭に述べた通り、組織や肩書は飾り物、指揮命令系統も曖昧になっています。人材の絶対数が不足する中小企業の場合、全員が助け合って仕事をしなければならない事は十分考えられますが、やはり組織の責任範囲、指揮命令系統はしっかりと決めておく必要があります。なぜなら、そのことが、例えば問題発生時の原因追究と対策の責任部署が明確になり、構成メンバーのレベルアップと組織の強化につながっていきます。組織形態は、一例を示しましたが、組織を固定化して考えるのではなく、業務改革の実施や今後の新分野進出などに適応する組織の構想を描き、効果的な組織編成を行っていくことが重要と考えられます。
 
 

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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