1.はじめに
香港を拠点に華南地区のモノ作り現場に携わって10年余りが経ちました。この間、ISOをはじめとするグローバルスタンダードの浸透を常に意識せざるを得ませんでした。浸透の流れは今でも続いています。それらすべてが欧米の発祥・主導で、日本は受け身が続いています。
今回は世界の工場である中国・華南のグローバルスタンダード適用の状況を報告するとともに、今後の日本の主導すべき分野について一考したいと思います。
2.華南での現状
1970年代から80年代にかけて、日本はジャパンアズナンバーワン、ルックイーストなどと言われ、経済発展のモデルとして称えられていました。モノ作りにおいては革新的な製品排出や半導体の世界シェアのトップを走っていました。
しかし、個々の企業が製品や品質に努力を重ねている間に、今思えばグローバルスタンダードの発想を欧米に譲ってしまっていたと言わざるを得ません。1990年代に入ると海外進出や委託生産など交易が増えてきました。各企業はISO9000シリーズの品質マネジメントシステムの導入を余儀なくされるようになってきました。認証を受けなければ、世界と付き合えなくなってきたのです。
現在では世界と付き合会うほとんどの華南企業は、ISO9001品質マネジメントシステムとISO14001環境マネジメントシステムの認証を受けています。その他にも車両関連、医療、労働安全などそれぞれが適合するISOの認証が進行しています。
ISOに限らず、部品や製品の安全規格では実質的にULの認定品でなければ、殆どの製品に使えなくなってきています。組み立てにおいても北米に直接あるいは間接的に納入すべき製品に関しては、UL認定工場である必要があり、関連するサプライチェーンすべてに認証を証明するUL labelの製品貼付が義務づけられています。
図1.ULラベルの例
さらに電子機器のアッセンブリーにおいてもアメリカIPCの“IPC-A-610 Acceptability of Electronics Assembly, (組み立ての受容性)”が多くの華南企業に浸透しつつあります。ハンダ付けやワイヤーリングなど作業品質のガイドラインが、きめ細な事例写真で網羅されています。華南のEMS(Electronics Manufacturing Service,電子機器委託生産工場)に委託生産している日本企業は、彼らが採用しているIPC-A-610を認めざるを得ないと言うのが現状です。
図2.IPCガイドラインの一部
3.潮流の中の日本と強み
日本もTPPの話し合いへの参加が決定されました。本格化すれば各国で異なった基準や認証プロセスがアメリカ主導で統一され、殆どのものに適用される事はほぼ確実といえるでしょう。こう見ると貿易もグローバルスタンダードへの道を歩んでいます。貿易の効率化や活性化には有効ですが、適用への変更や理解、そして実行は日本のサプライチェーンにとって大きな負担となることは容易に推測できます。 今後もこのように欧米主導のグローバルスタンダードが、生活や生産に影響を及ぼすなど身近になってくると思われます。
そうした中で日本主導のグローバルスタンダードを模索するのも、モノづくりの経験やノウハウをベースに世界に貢献し、ひいては国家の利益となることから意義あることと考えます。
日本の大きな強みの中に安心・安全・信頼があります。事実、PL...