実例 新規事業を実現する技術経営のあり方 (その3)

投稿日

◆特許活用によるイノベーション創出の実例

 
 前回のその2に続いて解説します。前回の、下記ステップを実例で解説します。 
 
会社のもつ技術的な強みに立脚した、新規事業を考えるフロー
 
STEP1 特許から自社のコア技術を抽出し、キーワードとする
 
STEP2 ターゲットとする分野/領域を抽出
  ↓
STEP3 キーワードを掛けあわせて、特許の検索と読み込み
  ↓
STEP4 テーマの選定とシナリオ作成
  ↓
実 行
 
 わかりやすい例で、富士フイルムの成功事例を分析してみます。ご存知のように富士フイルムはコダックの沈没に対して、写真事業からの転換に成功しています。その説明はたくさんの記事がありますが、富士フイルムのIR情報から考えてみましょう。この中に、以下の図が有ります。
 
知的財産マネジメント
【出典】中長期的成長に向けた富士フィルムのR&Dの取組み(2016/3/29) 9頁より
 
 これは、銀塩写真での基盤技術である粒子の分散技術をもとに、写真フィルムから化粧品にその技術を展開したいという図になっています。これを上記のステップに対応して考えると次のようになります。
 
STEP1 特許から自社のコア技術を抽出し、キーワードとする
 富士フイルムのコア技術として分散技術というのが有ると思います。実際には、自社の特許を分析して抽出する必要がありますが、ここでは「分散」をキーワードとします。
 
STEP2 ターゲットとする分野/領域を抽出
 ここでは、銀塩写真の分散技術を「化粧品」に展開しているので、ターゲットとする分野を「化粧品」とします。ここのキーワードは、進出したい分野、伸びが期待される分野、規制などが変わりチャンスがある分野など、様々な観点で選ぶことができると思います。
 
STEP3 キーワードを掛けあわせて、特許の検索と読み込み
 国内特許を請求項のキーワードで「写真」?「分散」として検索すると、約9000件の特許が出てきます。同じように、「化粧」?「分散」で検索すると約5000件の特許が検出されます。すなわち、化粧品分野において、何らかの分散技術が必要であることを示唆しています。この5000件の特許をさらにキーワードで絞り、自社の技術が生かせる分野を探しい...

◆特許活用によるイノベーション創出の実例

 
 前回のその2に続いて解説します。前回の、下記ステップを実例で解説します。 
 
会社のもつ技術的な強みに立脚した、新規事業を考えるフロー
 
STEP1 特許から自社のコア技術を抽出し、キーワードとする
 
STEP2 ターゲットとする分野/領域を抽出
  ↓
STEP3 キーワードを掛けあわせて、特許の検索と読み込み
  ↓
STEP4 テーマの選定とシナリオ作成
  ↓
実 行
 
 わかりやすい例で、富士フイルムの成功事例を分析してみます。ご存知のように富士フイルムはコダックの沈没に対して、写真事業からの転換に成功しています。その説明はたくさんの記事がありますが、富士フイルムのIR情報から考えてみましょう。この中に、以下の図が有ります。
 
知的財産マネジメント
【出典】中長期的成長に向けた富士フィルムのR&Dの取組み(2016/3/29) 9頁より
 
 これは、銀塩写真での基盤技術である粒子の分散技術をもとに、写真フィルムから化粧品にその技術を展開したいという図になっています。これを上記のステップに対応して考えると次のようになります。
 
STEP1 特許から自社のコア技術を抽出し、キーワードとする
 富士フイルムのコア技術として分散技術というのが有ると思います。実際には、自社の特許を分析して抽出する必要がありますが、ここでは「分散」をキーワードとします。
 
STEP2 ターゲットとする分野/領域を抽出
 ここでは、銀塩写真の分散技術を「化粧品」に展開しているので、ターゲットとする分野を「化粧品」とします。ここのキーワードは、進出したい分野、伸びが期待される分野、規制などが変わりチャンスがある分野など、様々な観点で選ぶことができると思います。
 
STEP3 キーワードを掛けあわせて、特許の検索と読み込み
 国内特許を請求項のキーワードで「写真」?「分散」として検索すると、約9000件の特許が出てきます。同じように、「化粧」?「分散」で検索すると約5000件の特許が検出されます。すなわち、化粧品分野において、何らかの分散技術が必要であることを示唆しています。この5000件の特許をさらにキーワードで絞り、自社の技術が生かせる分野を探しいていく作業を行います。
 
STEP4 テーマの選定とシナリオ作成
 上記の作業から目指す市場が決まれば、技術をいかに開発して、技術的な差別性を利点に如何に市場に参入していくかということを考えるステップとなります。
 
 次回も別の例で、特許活用によるイノベーション創出を考えます。
 
 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

藤井 隆満

基礎研究から商品化まで一直線の開発。 目指す市場と技術のマッチング、知財戦略、バリューチェーンをどうするかということを論理的に考え、開発を加速させましょう。

基礎研究から商品化まで一直線の開発。 目指す市場と技術のマッチング、知財戦略、バリューチェーンをどうするかということを論理的に考え、開発を加速させましょう。


「知的財産マネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
発明の保護 知財経営の実践(その8)

       1. 知財の持つ価値    知財経営の実践については、その重要性が参考文献のよう...

       1. 知財の持つ価値    知財経営の実践については、その重要性が参考文献のよう...


先使用権 知財経営の実践(その12)

       1. 知財の持つ価値    知財経営の実践については、その重要性が参考文献のよう...

       1. 知財の持つ価値    知財経営の実践については、その重要性が参考文献のよう...


他社や大学の技術を活用 知財経営の実践(その19)

       1. 知財の持つ価値    知財経営の実践については、その重要性が参考文献のよう...

       1. 知財の持つ価値    知財経営の実践については、その重要性が参考文献のよう...


「知的財産マネジメント」の活用事例

もっと見る
特許情報の見える化と解析で何が出来るのか

♦提案可能な特許情報の見える化事例  パテントマップソフトの使用などに代表される特許情報の見える化は、業界の技術情報とその動向を理解する...

♦提案可能な特許情報の見える化事例  パテントマップソフトの使用などに代表される特許情報の見える化は、業界の技術情報とその動向を理解する...


特許解析、ミクロマップの面白さ

◆ 特許解析、マクロマップからミクロマップへ  わたくしが研究開発から離れ、知的財産部(知財部)に異動してきたきっかけは、世界中から集まる発明情報を...

◆ 特許解析、マクロマップからミクロマップへ  わたくしが研究開発から離れ、知的財産部(知財部)に異動してきたきっかけは、世界中から集まる発明情報を...


新商品を生み出す技術戦略:知財教育、新規テーマ発掘のための工夫

1、知的財産マネジメント:知財教育の必要性  わたくしは知財教育は、規模の大小を問わずあらゆる会社で行うべきと考えています。  今回は、私が知財戦...

1、知的財産マネジメント:知財教育の必要性  わたくしは知財教育は、規模の大小を問わずあらゆる会社で行うべきと考えています。  今回は、私が知財戦...