自社の技術を他の分野に適用する 新規事業を実現する技術経営のあり方 (その4)

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◆特許活用によるイノベーション創出の実例

 

1. セラミックスから食品へ

 前回の富士フイルムの例は有名な例ですので、別の例を取り上げて見たいと思います。知人のセラミックスの粉砕(微粒化)技術の専門家は、ある食品の粉砕(微粒化)分野に着目し、食品の微粒化に応用し、ある食品において吸収の良い素材、いままで廃棄していた素材の活用を見出し、新規事業を成功させています(2000年頃)。どちらかというとご自身のコア技術をもとに起業したようなイメージです。知人はこの組み合わせに関しては、異業種交流会の場からのセレンディピティであるが、この事例を2000年以前の特許から筆者が検索したところ、同様の結論を得ることができました。個人の技術からスタートですのでSTEP1は自社特許ではなく、自身の保有技術になります。下図を参照して下さい。
 
STEP1 自分のコア技術を定義する ここが前回と異なります
   ↓
STEP2 ターゲットとする分野/領域を抽出
   ↓
STEP3 キーワードを掛けあわせて、特許の検索と読み込み
   ↓
STEP4 テーマの選定とシナリオ作成
   ↓
 実行
  
知的財産マネジメント
 

2. 特許検索からの裏付け

 上記の例を特許を検索して考えてみたいと思います。公的な特許検索の「特許情報プラットフォーム」から検索します。ここで、特許・実用新案テキスト検索を選んで、キーワードを入れていきます。このキーワードの選定にはセンスが必要ですが、トライアンドエラーで試してみてください。今回の事例は2000年当時の話ですので、時期を2000年以前の特許から検索しました。
 
 コア技術:「粉砕」で、目指す業界「海苔」により、45件を抽出することができました。この中の特許を読んでいくと参考になりそうな特許として次の様なものが抽出されました。
【出願番号】特願平6-34801 (22)【出願日】平成6年(1994)3月4日 (71)【出願人】 【識別番号】591018534 【氏名又は名称】奥本製粉株式会社、
 
 要約としては、次のように記載されています。
 【要約】【目的】表面が滑らかであり、茹でると全体に透明感があって、うどん本来の適度なこしと良好な粘弾性が得られる。
 
 【構成】オーストラリアン・スタンダード・ホワイト小麦が100%の中力小麦粉94重量部と、500ミクロン以下で平均が300ミクロンの乾燥海苔の粉末6重量部とを混合し、これに水29重量部を加えて、真空ミキサーにより140mmHgの低圧力下で脱気しつつ、10分間にわたって捏和して麺生地とする。この麺生地を、プレス圧を90~110kg/cm2 としたダイスによって径1.5mmの麺線に押し出し成形し、温度55℃、湿度80%の雰囲気中で15時間にわたって乾燥する。
 
 この内容から、どうも粉末の海苔のサイズは平均粒径300ミクロン程度だとわかります。さらに、この特許の課題は次のように記載されています。
 
 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭63-148949号公報に開示された方法では、海藻をペースト状にするために、クエン酸ナトリウム等の海藻分解剤を添加しなければならず、自然食志向や健康食志向の人々にとっては好ましいものではない。
 
 この公報には、ペースト状の海藻を小麦粉に加えた麺生地を麺帯とし、得られた麺帯をこれを切り出すという常法によってうどんを製造する方法が開示されているが、このような方法によって得られたうどんは、柔らかいものとなり、良好な食感が得られない。さらに、デュラム小麦等にペースト状わかめと水とを加えて捏和して麺生地を製造し、得られた麺生地を変圧押し出し成形することによって、わかめ入りマカロニ製品を製造する方法も開示されている。しかし、このようにして得られたマカロニ製品は、強力粉、あるいは強力粉と同様にグルテンの強いデュラム小麦等を原料としているために、海藻との一体感が損なわれ、固い食感しか得られず、うどんとは異なった食感しか得られない。従って、このようなペースト状海藻と小麦粉との原料によって得られた麺生地からは、良好な粘弾性および適度なこしがあって独...

◆特許活用によるイノベーション創出の実例

 

1. セラミックスから食品へ

 前回の富士フイルムの例は有名な例ですので、別の例を取り上げて見たいと思います。知人のセラミックスの粉砕(微粒化)技術の専門家は、ある食品の粉砕(微粒化)分野に着目し、食品の微粒化に応用し、ある食品において吸収の良い素材、いままで廃棄していた素材の活用を見出し、新規事業を成功させています(2000年頃)。どちらかというとご自身のコア技術をもとに起業したようなイメージです。知人はこの組み合わせに関しては、異業種交流会の場からのセレンディピティであるが、この事例を2000年以前の特許から筆者が検索したところ、同様の結論を得ることができました。個人の技術からスタートですのでSTEP1は自社特許ではなく、自身の保有技術になります。下図を参照して下さい。
 
STEP1 自分のコア技術を定義する ここが前回と異なります
   ↓
STEP2 ターゲットとする分野/領域を抽出
   ↓
STEP3 キーワードを掛けあわせて、特許の検索と読み込み
   ↓
STEP4 テーマの選定とシナリオ作成
   ↓
 実行
  
知的財産マネジメント
 

2. 特許検索からの裏付け

 上記の例を特許を検索して考えてみたいと思います。公的な特許検索の「特許情報プラットフォーム」から検索します。ここで、特許・実用新案テキスト検索を選んで、キーワードを入れていきます。このキーワードの選定にはセンスが必要ですが、トライアンドエラーで試してみてください。今回の事例は2000年当時の話ですので、時期を2000年以前の特許から検索しました。
 
 コア技術:「粉砕」で、目指す業界「海苔」により、45件を抽出することができました。この中の特許を読んでいくと参考になりそうな特許として次の様なものが抽出されました。
【出願番号】特願平6-34801 (22)【出願日】平成6年(1994)3月4日 (71)【出願人】 【識別番号】591018534 【氏名又は名称】奥本製粉株式会社、
 
 要約としては、次のように記載されています。
 【要約】【目的】表面が滑らかであり、茹でると全体に透明感があって、うどん本来の適度なこしと良好な粘弾性が得られる。
 
 【構成】オーストラリアン・スタンダード・ホワイト小麦が100%の中力小麦粉94重量部と、500ミクロン以下で平均が300ミクロンの乾燥海苔の粉末6重量部とを混合し、これに水29重量部を加えて、真空ミキサーにより140mmHgの低圧力下で脱気しつつ、10分間にわたって捏和して麺生地とする。この麺生地を、プレス圧を90~110kg/cm2 としたダイスによって径1.5mmの麺線に押し出し成形し、温度55℃、湿度80%の雰囲気中で15時間にわたって乾燥する。
 
 この内容から、どうも粉末の海苔のサイズは平均粒径300ミクロン程度だとわかります。さらに、この特許の課題は次のように記載されています。
 
 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭63-148949号公報に開示された方法では、海藻をペースト状にするために、クエン酸ナトリウム等の海藻分解剤を添加しなければならず、自然食志向や健康食志向の人々にとっては好ましいものではない。
 
 この公報には、ペースト状の海藻を小麦粉に加えた麺生地を麺帯とし、得られた麺帯をこれを切り出すという常法によってうどんを製造する方法が開示されているが、このような方法によって得られたうどんは、柔らかいものとなり、良好な食感が得られない。さらに、デュラム小麦等にペースト状わかめと水とを加えて捏和して麺生地を製造し、得られた麺生地を変圧押し出し成形することによって、わかめ入りマカロニ製品を製造する方法も開示されている。しかし、このようにして得られたマカロニ製品は、強力粉、あるいは強力粉と同様にグルテンの強いデュラム小麦等を原料としているために、海藻との一体感が損なわれ、固い食感しか得られず、うどんとは異なった食感しか得られない。従って、このようなペースト状海藻と小麦粉との原料によって得られた麺生地からは、良好な粘弾性および適度なこしがあって独特の歯ごたえを有するうどんは得られない。
 
 どうも、食物に添加すると触感が良くない、余分な薬品を添加しなければならない という課題が有るようです。さて、ここからが技術者の頭を使わなければならないところです。
 
◆ 課題が自社技術で解決できるか、答えが見いだせそうか、
 
 微粒化が得意な技術者であれば、もっと海苔の粉末を微粒化できると考えるでしょう。そして、その方法は既存のセラミックス技術を応用して考えてみることができます。また、微粒子のサイズも300ミクロンと書いてありますが、セラミックスの世界では数~十数ミクロンの微粒化は容易に行われています。そして、さらに微粒化すると食感とか、消化吸収の効果がどうなるかということを考えるといいことがありそうです。実際にはやってみなければわからないのですが・・・。
 
 このように、自身(自社)の技術を他の分野に適用することで一気に新しい分野の商品につながる可能性があります。ぜひとも考えてみたい手法だと思います。
 

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この記事の著者

藤井 隆満

基礎研究から商品化まで一直線の開発。 目指す市場と技術のマッチング、知財戦略、バリューチェーンをどうするかということを論理的に考え、開発を加速させましょう。

基礎研究から商品化まで一直線の開発。 目指す市場と技術のマッチング、知財戦略、バリューチェーンをどうするかということを論理的に考え、開発を加速させましょう。


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