ISO9001:2015のもたらすもの (その1)

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 今回は、ISO9000の小規模企業での無駄のない取得方法について解説します。日本もグローバル化の中で、1990年代にISO取得ブームが巻き起こりました。あれから、25年以上たって、どうでしょうか?取得した企業は口をそろえて「役に立たない」「維持費用が高すぎる」と、否定的な意見が多く聞かれます。
 

1. 建設業界のISO事情

 
 下のグラフを見てください。2006年をピークに取得件数は減少傾向が続いています。
 
ISO9001
引用:日本における認証の実態(公益財団法人日本適合性認定協会)
 
 主な原因は、建設業界の取得が大幅に減少しているからです。建設業者がこのように当初ISO9001取得に向かったのは、公共工事の入札の問題があり、入札への影響を懸念する建設業者が一斉にISO取得に乗り出したのが、建設業者の認証が急増した理由です。受審業者の中には小さな会社が多く含まれており、社員が数10人程度の会社が次々とISO9001の認証を受けています。小さな会社が無理をしてISOを取り、メリットを出せず、経営を圧迫している点も大きな問題です。
 
 建設業は、公共工事を巡って行政に対し、大量の書類を作成し提出しています。このような会社がISO9001に取り組むと、近隣の業者から品質マニュアルや規定類を集めてきて、あっという間に同じものを作ります。しかし、ISO9001は仕事に合わせて書類を作るのが重要で、書類を先に作ってしまうと動けなくなります。自慢の機動力がアダになって、他社の丸写しの動かないシステムを作ってしまうのです。
 

2. ISO取得企業がなぜ不祥事を起こすのか

 
 次に下の図を見てください。ルールで決められたことを忠実に守り、守られているかどうかを監視する機能の確立、社員に対するルール順守の認識が高められているなら、このような問題は市場に出ないはずです。下表のような問題は、ISOの認証を受けたマネジメントシステムのもとで発生しており、一体何のためにマネジメントシステムを構築し、そしてまた、第三者機関は何のために定期審査を実施しているのでしょうか?
 
ISO9001
引用:日本における認証の実態(公益財団法人日本適合性認定協会)
 
 これらを見ると、ISOの取得は決して、消費者にとって、信頼に値するものでない事が証明されたことになります。では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?先ほどの入札に参加する目的だけの建設業界のように、各企業は単にライセンスをが目的だけで取得しているのでしょうか?いや、経営者は、「品質が向上するから」「マネジメントシステムが整備されるから」など、会社を良くしようとして、お金を掛けてでも取得しようと考えたに違いありません。
 
 では、なぜ当初の目的を達成できなかったのか?また当初の目的を達成するためには、どのような手順で、システムを構築し、どのようにそのシステムの維持管理を行っていけばいいでしょうか?
 
 以下、実際にある小規模企業で実施した例を示します。 
 
1. トップの考える会社の将来像(5年後、10年後のビジョン)を明確にする
2. 経営の基本となるトップの理念・行動指針を明確にする
3. 会社の将来像を見据えて、必要な業務や工程を明確にし、業務フローを作成する
  (例:市場開発部、多品種小ロット対応製造ライン、アフターサービス部など)
4. 組織図を作成する(各組織の役割、権限を明確にする)
5. 必要な人材像を明確にする(どんな技能や職務経験を持った人材が何人必要か)
6. 1年間(年度)の方針、目標を決める(経営計画書作成)
7. 方針、目標にそって、各組織の年度の目標と達成計画を立てる(業務計画書作成)
8. 業務計画実行の進捗度と、目標達成度を毎月レビューする
9. 必要な人材を育成するための教育計画を作成し、業務計画に加える
10. 以上1~9をルール化(規定化)する(ISO9000の品質マニュアルに相当)
 
 上記を見て、従来持っていた一般のISO9000の構築手順とはずいぶん違うイメージを持ったと思います。1~10まで...
 今回は、ISO9000の小規模企業での無駄のない取得方法について解説します。日本もグローバル化の中で、1990年代にISO取得ブームが巻き起こりました。あれから、25年以上たって、どうでしょうか?取得した企業は口をそろえて「役に立たない」「維持費用が高すぎる」と、否定的な意見が多く聞かれます。
 

1. 建設業界のISO事情

 
 下のグラフを見てください。2006年をピークに取得件数は減少傾向が続いています。
 
ISO9001
引用:日本における認証の実態(公益財団法人日本適合性認定協会)
 
 主な原因は、建設業界の取得が大幅に減少しているからです。建設業者がこのように当初ISO9001取得に向かったのは、公共工事の入札の問題があり、入札への影響を懸念する建設業者が一斉にISO取得に乗り出したのが、建設業者の認証が急増した理由です。受審業者の中には小さな会社が多く含まれており、社員が数10人程度の会社が次々とISO9001の認証を受けています。小さな会社が無理をしてISOを取り、メリットを出せず、経営を圧迫している点も大きな問題です。
 
 建設業は、公共工事を巡って行政に対し、大量の書類を作成し提出しています。このような会社がISO9001に取り組むと、近隣の業者から品質マニュアルや規定類を集めてきて、あっという間に同じものを作ります。しかし、ISO9001は仕事に合わせて書類を作るのが重要で、書類を先に作ってしまうと動けなくなります。自慢の機動力がアダになって、他社の丸写しの動かないシステムを作ってしまうのです。
 

2. ISO取得企業がなぜ不祥事を起こすのか

 
 次に下の図を見てください。ルールで決められたことを忠実に守り、守られているかどうかを監視する機能の確立、社員に対するルール順守の認識が高められているなら、このような問題は市場に出ないはずです。下表のような問題は、ISOの認証を受けたマネジメントシステムのもとで発生しており、一体何のためにマネジメントシステムを構築し、そしてまた、第三者機関は何のために定期審査を実施しているのでしょうか?
 
ISO9001
引用:日本における認証の実態(公益財団法人日本適合性認定協会)
 
 これらを見ると、ISOの取得は決して、消費者にとって、信頼に値するものでない事が証明されたことになります。では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?先ほどの入札に参加する目的だけの建設業界のように、各企業は単にライセンスをが目的だけで取得しているのでしょうか?いや、経営者は、「品質が向上するから」「マネジメントシステムが整備されるから」など、会社を良くしようとして、お金を掛けてでも取得しようと考えたに違いありません。
 
 では、なぜ当初の目的を達成できなかったのか?また当初の目的を達成するためには、どのような手順で、システムを構築し、どのようにそのシステムの維持管理を行っていけばいいでしょうか?
 
 以下、実際にある小規模企業で実施した例を示します。 
 
1. トップの考える会社の将来像(5年後、10年後のビジョン)を明確にする
2. 経営の基本となるトップの理念・行動指針を明確にする
3. 会社の将来像を見据えて、必要な業務や工程を明確にし、業務フローを作成する
  (例:市場開発部、多品種小ロット対応製造ライン、アフターサービス部など)
4. 組織図を作成する(各組織の役割、権限を明確にする)
5. 必要な人材像を明確にする(どんな技能や職務経験を持った人材が何人必要か)
6. 1年間(年度)の方針、目標を決める(経営計画書作成)
7. 方針、目標にそって、各組織の年度の目標と達成計画を立てる(業務計画書作成)
8. 業務計画実行の進捗度と、目標達成度を毎月レビューする
9. 必要な人材を育成するための教育計画を作成し、業務計画に加える
10. 以上1~9をルール化(規定化)する(ISO9000の品質マニュアルに相当)
 
 上記を見て、従来持っていた一般のISO9000の構築手順とはずいぶん違うイメージを持ったと思います。1~10までの手順は、経営の根幹を成す活動です。これがしっかりと実行できてルール化がされることが大前提です。これができていないまま、ISO9000を取得しても、全く意味がありません。経営者としての要求事項を実現させるためのマネジメント・システムのはずですからまずトップの考えを優先させるべきです。ISO9000の要求事項はその後に当てはめればいいのです。ISO認定機関は、あなたの会社の経営の事は全く考えてくれません。要求事項さえ規格が満足していれば認定証をくれます。しかも実行は伴っていなくてもいいのです。(記録類がでっち上げでもとがめられることはありません)これが、嘘がはびこる原因となっているのです。認証取得するには、ISO認証機関、ISO専門のコンサル会社に依頼する前にこのことをしっかり考えなければならないのです。
 
  

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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