ほとんどの企業は、会計処理に市販の会計パッケージを使っていると思います。会計パッケージには安価なクラウド型から高価なERP型まで様々なものがあります。基本的な機能はほぼ共通で、次のような機能で構成されています。
「財務会計計算」
「資産・債権管理」
「支払管理」
「管理会計計算」
会計パッケージの中心用途は、財務(制度)会計です。税務署、株主、金融機関、取引先などに提出する決算書の作成を支援します。財務会計は決められた計算ルールにしたがって会計伝票を仕訳して計算されますので、会計パッケージ利用が適しています。
ただし、財務会計だけでは会計パッケージの差別化が難しいので、多くの会計パッケージは管理会計機能の充実さをアピールする傾向がありますが、この管理会計機能の利用には注意しましょう。管理会計とは経営管理や経営方針作成のために会計数字を用いることですが、財務会計とは異なり決められた計算ルールがあるわけではなく、企業によって管理内容は異なるのが一般的です。そのため会計パッケージをそのまま導入するだけでは適切な管理はできません。
たとえば、会計パッケージがカバーしている管理会計機能には、次のようなものがあります。
「部門別売上管理」
「部門別経費管理」
「部門別予算管理」
「部門別利益管理」
「原価管理」
売上管理、経費管理、予算管理は集計が中心なのでそれほど企業差を気にしなくてもいいのですが,利益管理と原価管理の利用には注意が必要です。原価や利益は計算の仕方がいろいろあり、計算方法によって数字が異なってきます。あらかじめ自社が必要とする原価(利益)計算の在り方を明確にしないで導入すると経営戦略が混乱する可能性があります。
たとえば原価管理の場合、個別原価計算で管理するのか、直接原価計算で管理するのか、さらに複雑なABC会計で計算するのかでは計算結果も重点管理内容は異なってきます。次に、個々の特徴を整理しておきます。
・個別原価計算
個別製品単位の原価と利益を計算して管理する方法。そもそもは価格決定のための計算方法であり、企業全体の損益管理には向いていない。
・直接原価計算
経費を固定費と変動費に分けて計算する方法。損益分岐点とか限界利益といったことばは直接原価計算の用語。企業の損益構造を把握するのに適している。
・ABC会計
共通経費を公平に部門や製品に配賦するために考え出された会計計算。具体的には活動を基準にして配賦する。共通経費負担が大きい企...