プロジェクトマネジメントとPMBOK

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1. プロジェクトとは

 プロジェクトという言葉は良く耳にし、自分で使ったこともあるかと思います。プロジェクトですぐに思い出すのは、昔NHKで放送していた「プロジェクトX」です。番組では、大きな困難にであったチームが失敗を繰り返す中で、ふとしたことから解決のヒントをつかみ、苦労の末に大成功を収めるというパターンです。娯楽番組は面白くないと見てもらえないので、上記のようなストーリーにはめ込んで作りますが、ビジネス的にはダメダメパターンです。
 
 まずプロジェクトの定義とは、次の3つの要素を満たすものです。 
(1) 定められた期限
(2) 定められた新規目的
(3) 定められた資源
 
 いつ終わるとも知れず、行き当たりばったりの活動はプロジェクトではないわけです。成功すべく活動してきちんと期限に終わる必要があります。リスクの高いテーマは、たとえ製品や技術が完成しなくても、活動の過程で得られる知識、情報を目的にすればよいでしょう。また決算業務などのように、定期的に実施される活動もプロジェクトとは呼びません。「新規の」目的がないからです。新たな手順を使うとか、作業期間を半減するといった目的があれば、決算もプロジェクトとなり得ます。
 
プロジェクトマネジメント図1. プロジェクトの3要件
 

2. プロジェクト管理の要素

 死屍累々の失敗プロジェクトの経験を基に、成功しやすいパターンを専門家がまとめた体系がいくつか提案されており、最も著名なのが米国PMI(Project Management Institute)が出版するPMBOK (Project Management Body of Knowledge)です。多くの人が関係する大きなプロジェクトほど混乱しがちで、こういった体系が有効であり、大規模になりがちな建設や情報システムのプロジェクトで導入が進んでいます。
 
 第5版は600ページにも及ぶ大著で、中小製造業がこれをすべて理解して実行することは難しく、必要すらないでしょうが、その概要を知って参考とすることには大きな意味があります。5S導入、新規CAD導入などと、小規模なプロジェクトはしばしば発生するからです。
 
 PMBOKは図2のような10の観点を持っています。
 

プロジェクトマネジメント図2.PMBOKの構造

 
・コミュニケーション:トラブルの9割はコミュニケーションが起因するとも言われます。会議や報告体系を扱います。
 
・品質:成功の基準やその評価方法を扱います。
 
・リスク:失敗する可能性を事前に想定します。
 
・調達:すべてを内製する例は稀です。外部から獲得する部品、材料、サービスを定義し、管理します。 ステークホルダー:プロジェクトメンバー以外の社内外関係者です。クライアント、ユーザー、株主、サプライヤー、事業部長など様々です。
 
・要員:構成員に必要なスキル、選定などを扱います。
 
・スコープ:適用範囲のことですが、目的、成果物なども含まれます。
 
・タイム:日程です。
 
・コスト:活動の経費はもちろん重要です。
 
・統合:トレードオフになりがちな上記9要素をバランスよく高い次元でまとめあげる必要があります。
 

3. プロジェクトの進行手順

  PMBOKに示すプロジェクト進行手順は以下のようになります。

(1) 立ち上げ

 ここでは対象となるプロジェクトを定義します。誰が何のために何を目指してやるのか、不明確なままスタートするプロジェクトは意外と多いものです。さほど時間を取りませんので、目的、関係者、財源を文章でまとめて(特に指示者と)共有します。

(2)計画

 前述した9つの要素について詳細活動を計画します。ここで作成するWBS(Work Breakdown Structure:全般に渡る作業項目を網羅的にツリー形式で分解したもの)やPERT図は有効性が高いのですが、解説は次回に譲ります。

(3) 実行

 プロジェクト活動で消費される費用や工数の大半はこの実行段階ですから、その管理は大事なプロセスです。

(4)監視・コントロール

 プロジェクトが...

1. プロジェクトとは

 プロジェクトという言葉は良く耳にし、自分で使ったこともあるかと思います。プロジェクトですぐに思い出すのは、昔NHKで放送していた「プロジェクトX」です。番組では、大きな困難にであったチームが失敗を繰り返す中で、ふとしたことから解決のヒントをつかみ、苦労の末に大成功を収めるというパターンです。娯楽番組は面白くないと見てもらえないので、上記のようなストーリーにはめ込んで作りますが、ビジネス的にはダメダメパターンです。
 
 まずプロジェクトの定義とは、次の3つの要素を満たすものです。 
(1) 定められた期限
(2) 定められた新規目的
(3) 定められた資源
 
 いつ終わるとも知れず、行き当たりばったりの活動はプロジェクトではないわけです。成功すべく活動してきちんと期限に終わる必要があります。リスクの高いテーマは、たとえ製品や技術が完成しなくても、活動の過程で得られる知識、情報を目的にすればよいでしょう。また決算業務などのように、定期的に実施される活動もプロジェクトとは呼びません。「新規の」目的がないからです。新たな手順を使うとか、作業期間を半減するといった目的があれば、決算もプロジェクトとなり得ます。
 
プロジェクトマネジメント図1. プロジェクトの3要件
 

2. プロジェクト管理の要素

 死屍累々の失敗プロジェクトの経験を基に、成功しやすいパターンを専門家がまとめた体系がいくつか提案されており、最も著名なのが米国PMI(Project Management Institute)が出版するPMBOK (Project Management Body of Knowledge)です。多くの人が関係する大きなプロジェクトほど混乱しがちで、こういった体系が有効であり、大規模になりがちな建設や情報システムのプロジェクトで導入が進んでいます。
 
 第5版は600ページにも及ぶ大著で、中小製造業がこれをすべて理解して実行することは難しく、必要すらないでしょうが、その概要を知って参考とすることには大きな意味があります。5S導入、新規CAD導入などと、小規模なプロジェクトはしばしば発生するからです。
 
 PMBOKは図2のような10の観点を持っています。
 

プロジェクトマネジメント図2.PMBOKの構造

 
・コミュニケーション:トラブルの9割はコミュニケーションが起因するとも言われます。会議や報告体系を扱います。
 
・品質:成功の基準やその評価方法を扱います。
 
・リスク:失敗する可能性を事前に想定します。
 
・調達:すべてを内製する例は稀です。外部から獲得する部品、材料、サービスを定義し、管理します。 ステークホルダー:プロジェクトメンバー以外の社内外関係者です。クライアント、ユーザー、株主、サプライヤー、事業部長など様々です。
 
・要員:構成員に必要なスキル、選定などを扱います。
 
・スコープ:適用範囲のことですが、目的、成果物なども含まれます。
 
・タイム:日程です。
 
・コスト:活動の経費はもちろん重要です。
 
・統合:トレードオフになりがちな上記9要素をバランスよく高い次元でまとめあげる必要があります。
 

3. プロジェクトの進行手順

  PMBOKに示すプロジェクト進行手順は以下のようになります。

(1) 立ち上げ

 ここでは対象となるプロジェクトを定義します。誰が何のために何を目指してやるのか、不明確なままスタートするプロジェクトは意外と多いものです。さほど時間を取りませんので、目的、関係者、財源を文章でまとめて(特に指示者と)共有します。

(2)計画

 前述した9つの要素について詳細活動を計画します。ここで作成するWBS(Work Breakdown Structure:全般に渡る作業項目を網羅的にツリー形式で分解したもの)やPERT図は有効性が高いのですが、解説は次回に譲ります。

(3) 実行

 プロジェクト活動で消費される費用や工数の大半はこの実行段階ですから、その管理は大事なプロセスです。

(4)監視・コントロール

 プロジェクトが進むと色々想定しなかったことが起こるので、当初の計画を変更する必要も生じます。進行を監視しながら、それらに対処していきます。

(5) 終結

 プロジェクトが完了してやれやれと思うだけでなく、次の機会に備えて反省し、教訓として記録しておくことが重要です。
 
 上記の手順も、あらゆる活動の基本形である「PDCA」ですね。これだけしっかりやれば成功するだろうと思うわけですが、一方考えただけで疲れてしまいそうでもあります。数人で数週間、数十万円予算のプロジェクトに上記をすべて適用したら、計画の時間、費用が実行のそれを上回ってしまうかもしれません。そんな時は、PMのエッセンスだけを考慮に入れて、柔軟に対応したら良いでしょう。   

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この記事の著者

熊坂 治

ものづくり革新のナレッジを広く共有、活用する場を提供することで、製造業の課題を解決し、生産性を向上します。

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