製造業の分野で働く技術者の方の中にも「技術士を今後取得しよう」と考えている方もいらっしゃると思います。そこで、そのような方に技術士を取得する意味を考えていただくため、今回の記事では、複数のケースに基づき技術士を取得する意味について書きます。
1. 技術士とは
まず、「技術士とは何か」を簡単にまとめます。
(1)国家資格である
技術士とは、技術士法で定められた国家資格です。
(2)名称独占資格である
名称独占資格とは、資格取得者だけがその名称を名乗ることができる資格です。資格がなくてもその業務に従事することはできますが、名刺に資格名称を印刷したり、資格名称を名乗ったりすることはできません。これに対して、医師、弁護士あるいは税理士などは業務独占資格です。これらの資格を持っていないとその業務に従事できません。
(3)技術士の技術部門
技術士の技術部門は、機械部門、電気電子部門、金属部門、建設部門、経営工学部門、総合技術監理部門など全21部門です。
(4)技術士になる方法
技術士第二次試験に合格し、かつ、合格後登録をすれば技術士になることができます。ただし、技術士第二次試験は、その受験資格を満たした人だけが受験できます。なお、技術士になる方法の詳細については、(公社)日本技術士会のウェブサイト注1)をご覧ください。
2. 技術士の取得が業務の受注に直結するケース
私は、以前、建設コンサルタント注2)の会社に勤務していました。建設コンサルタントの会社では技術士の取得が業務の受注に直結します。
注2):建設コンサルタントとは、社会資本の計画・設計などを行う技術者および技術者の集団(企業)のことです。社会資本とは、例えば、道路、鉄道、橋梁、トンネル、河川、上下水道、まちづくりなどのインフラです。すなわち、建設コンサルタントの会社の業務は公共事業に関するものです。
公共事業の業務を受注できるのは建設コンサルタント登録(国土交通大臣の登録)を受けている会社です(競争入札ですが)。建設コンサルタント登録を受けていない会社でも受注できる業務はありますがこのような業務は少ないです。
この建設コンサルタント登録を受けるためには社内に技術士が在籍している必要があります。そのため、技術士を保有した社員が会社に在籍していることが業務受注の条件です。
このように、建設コンサルタントの会社では、技術士の有無が業務の受注に直結します。建設コンサルタントの会社で技術士を取得することは重要であるとともに、その意味は大きいです。
3. 技術士の取得が業務の受注に直結しないケース
コンピューター関連の会社に勤務されている方(Aさんとします)からお聞きしたことを紹介します。
Aさんが勤務する会社では、その会社の業務の受注方法から、前述した建設コンサルタントの会社のように技術士の取得が業務の受注に直結しないそうです。そのような状況の中で、Aさんは、「人脈を広げ自分の技術の幅を広げたい」という目的で技術士を受験され数年前に合格されました。
Aさんは、技術士を取得したことで技術士の立場として日本技術士会内にある部会に入会できたそうです。これによって、部会での活動を通して多くの技術士の方々との人脈ができたそうです。「人脈ができた結果、他の技術士の方々からいろいろなことを学ぶことで自分の技術の幅が広がった。また、これは自分の仕事をするうえでも役立っている」ということを話されていました。
すなわち、Aさんの場合には、技術士の取得が業務の受注に直結しませんが、「技術士を取得したことで人脈ができたとともに自分の技術の幅が広がった」という重要な意味を持ちます。
4. 技術士を取得する意味を考える
これまで、技術士を取得することが「業務の受注に直結するケース」と「業務の受注に直結しないが、人脈ができたとともに自分の技術の幅が広がったケース」の2つのケースを紹介しました。
この他にも様々な「技術士を取得する意味」があります。例え...