中国工場の実状を知る、日本人駐在員について 中国工場の品質改善(その14)

更新日

投稿日

 

中国工場

【第2章 中国工場の実状を知る】

【日本人駐在員について】

 前回のその13に続いて解説します。

(2)総経理・工場長として駐在

 日本人駐在員の問題点をその役職で見ていきます。総経理や工場長という工場のトップで赴任しているのは、日本本社で課長クラスの方の場合が比較的多いのではないでしょうか。課長ですから日本でも既に管理職でマネジメントの経験はあります。しかし、中国工場では経営トップになるのですからレベルの違うマネジメントを求められます。これは簡単なことではありません。

 また、日本にいたときは、自分よりも上の人間がしていた最終判断をトップですから自らしなくてはなりません。場合によっては、工場の成否を分ける判断をすることもあるでしょう。これも大変なプレッシャーとなります。

 これらの人たちが陥る失敗パターンは、その人数分だけあると思いますが、ここでは典型的な例を紹介します。

  • 中国人スタッフと信頼関係が築けなかった
  • 職位が上の人間の言うことは何でも従うと思っている
  • 日常業務に忙殺され、会社から課されたミッションが進まずに悩む

 

① 中国人スタッフと信頼関係が築けなかった

 この状態で仕事をするのは難しいと言えます。こちらから指示したことに対して、中国人スタッフは表面上言うことを聞きますが、実際にはやりません。逆に、中国人スタッフから情報が上がってくることもありません。

 

② 職位が上の人間の言うことは何でも従うと思っている

 自分は工場の中では一番上の人間だから、その人間の言うことや指示には無条件で従う。このように考えている日本人は少なくありません。しかし、実際はそのようなことはなく、信頼関係を築かなければ仕事は進められません。

 

③ 日常業務に忙殺され、会社から課されたミッションが進まずに悩む

 中国工場の総経理は、日本側で考えている以上に忙しい役職です。生産上のトラブルの最終判断や日本ではない外部との付き合いなど時間を取らる要素には事欠きません。そんな状態で、赴任時に会社から課されたミッションにはまったく手を付けられずに一人焦ってしまうのです。

 

 中国工場のトップとして駐在する人は、このようなことにならないようにしてください。では、上記①~③に対しては、どのように考え対処したらよいでしょうか。自分の周りにいる中国人、特に片腕となる中国人と信頼関係を築く努力をすることがとても大事になります。信頼関係は一朝一夕で築けるものではありませんが、相手を尊重する気持ちが大事です。ただし、仕事上の指示や依頼に関しては相手に遠慮する必要はなく、はっきり要求することが逆に重要になります。信頼を得るために日本人駐在員に求められることは、第3章に記した「中国工場での人材マネジメント」を参照してください。

 総経理は非常に多忙な業務です...

 

中国工場

【第2章 中国工場の実状を知る】

【日本人駐在員について】

 前回のその13に続いて解説します。

(2)総経理・工場長として駐在

 日本人駐在員の問題点をその役職で見ていきます。総経理や工場長という工場のトップで赴任しているのは、日本本社で課長クラスの方の場合が比較的多いのではないでしょうか。課長ですから日本でも既に管理職でマネジメントの経験はあります。しかし、中国工場では経営トップになるのですからレベルの違うマネジメントを求められます。これは簡単なことではありません。

 また、日本にいたときは、自分よりも上の人間がしていた最終判断をトップですから自らしなくてはなりません。場合によっては、工場の成否を分ける判断をすることもあるでしょう。これも大変なプレッシャーとなります。

 これらの人たちが陥る失敗パターンは、その人数分だけあると思いますが、ここでは典型的な例を紹介します。

  • 中国人スタッフと信頼関係が築けなかった
  • 職位が上の人間の言うことは何でも従うと思っている
  • 日常業務に忙殺され、会社から課されたミッションが進まずに悩む

 

① 中国人スタッフと信頼関係が築けなかった

 この状態で仕事をするのは難しいと言えます。こちらから指示したことに対して、中国人スタッフは表面上言うことを聞きますが、実際にはやりません。逆に、中国人スタッフから情報が上がってくることもありません。

 

② 職位が上の人間の言うことは何でも従うと思っている

 自分は工場の中では一番上の人間だから、その人間の言うことや指示には無条件で従う。このように考えている日本人は少なくありません。しかし、実際はそのようなことはなく、信頼関係を築かなければ仕事は進められません。

 

③ 日常業務に忙殺され、会社から課されたミッションが進まずに悩む

 中国工場の総経理は、日本側で考えている以上に忙しい役職です。生産上のトラブルの最終判断や日本ではない外部との付き合いなど時間を取らる要素には事欠きません。そんな状態で、赴任時に会社から課されたミッションにはまったく手を付けられずに一人焦ってしまうのです。

 

 中国工場のトップとして駐在する人は、このようなことにならないようにしてください。では、上記①~③に対しては、どのように考え対処したらよいでしょうか。自分の周りにいる中国人、特に片腕となる中国人と信頼関係を築く努力をすることがとても大事になります。信頼関係は一朝一夕で築けるものではありませんが、相手を尊重する気持ちが大事です。ただし、仕事上の指示や依頼に関しては相手に遠慮する必要はなく、はっきり要求することが逆に重要になります。信頼を得るために日本人駐在員に求められることは、第3章に記した「中国工場での人材マネジメント」を参照してください。

 総経理は非常に多忙な業務です。真面目な性格の人ほど自分1人でやろうとしてしまいますが、前述したように1人ですべてを切り盛りするのは不可能ですから、先ずこの認識を持つことが大事になってきます。そして、自分がやることと他のスタッフにやってもらうことを区分して他のスタッフにやってもらうことは、スタッフに任せるようにします。ただし、任せっぱなしはダメですから、途中の経過や結果をチェックすることは怠らないようにしてください。次回に続きます。

 【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行   筆者のご承諾により、抜粋を連載

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「人的資源マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
技術士を取得する意味を考える

 製造業の分野で働く技術者の方の中にも「技術士を今後取得しよう」と考えている方もいらっしゃると思います。そこで、そのような方に技術士を取得する意味を考えて...

 製造業の分野で働く技術者の方の中にも「技術士を今後取得しよう」と考えている方もいらっしゃると思います。そこで、そのような方に技術士を取得する意味を考えて...


期待に応える品質管理とは 中小製造業の課題と解決への道筋(その8)

  【中小製造業の課題と解決への道筋 連載目次】 1. 世界一の品質はなぜ生まれたか 2. 相次ぐ品質問題 3. モグラ叩きの品...

  【中小製造業の課題と解決への道筋 連載目次】 1. 世界一の品質はなぜ生まれたか 2. 相次ぐ品質問題 3. モグラ叩きの品...


中国工場のレベルを高める第1歩とは

 中国工場の品質管理体制の構築、品質改善の支援・指導について解説します。今回は、従業員教育についてです。従業員教育の始めは、現場の管理者や検査員を対象とし...

 中国工場の品質管理体制の構築、品質改善の支援・指導について解説します。今回は、従業員教育についてです。従業員教育の始めは、現場の管理者や検査員を対象とし...


「人的資源マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
人的資源マネジメント:B to Bの請負型製品開発の改善(その1)

 今回は、B to Bの請負型製品開発の改善事例として、開発上流での取り組みや、全体最適となる取り組みについて解説します。   1. 開発の...

 今回は、B to Bの請負型製品開発の改善事例として、開発上流での取り組みや、全体最適となる取り組みについて解説します。   1. 開発の...


自力で稼ぐことの再認識

 2016年4月14、16日は熊本を震源に大きな地震が来ました。突然の緊急地震速報アラームに驚きました。スマホで緊急速報を受けたのは初めてでしたが、正直大...

 2016年4月14、16日は熊本を震源に大きな地震が来ました。突然の緊急地震速報アラームに驚きました。スマホで緊急速報を受けたのは初めてでしたが、正直大...


現地人の忠誠心(フィリピン工場の事例)

 東南アジアでの工場操業で、日本人マネジメントの悩みの一つに現地人の会社へのロイヤリティ(忠誠心)があげられます。現地人は、虎視眈々と次の「少しでもいいサ...

 東南アジアでの工場操業で、日本人マネジメントの悩みの一つに現地人の会社へのロイヤリティ(忠誠心)があげられます。現地人は、虎視眈々と次の「少しでもいいサ...