1.はじめに
オンリーワンの魅力ある商品やサービスを創出することは、永遠のテーマです。そのため、お客様の心の琴線を響かせるコンセプトが必須です。コンセプトの本質を考え抜くには、思考法の基本とされる「抽象化(目的展開または機能展開)」スキルを鍛えることが早道です。
2.コンセプトとは
コンセプトは、商品やモノゴトをできるだけ具体的な言葉で置き換える事とされています。マーケティングでは、売りたいモノ(コト)を売れる商品に変えるための概念のメッセージです。コンセプトは、様々なシーンで抽象的に使われています。マーケティングで使われるコンセプトは、主に、以下の3つの要素で表現されます。
- ・ターゲット(顧客の層)
- ・ニーズ(効用)
- ・差別化(セールスポイント)
例えば、花王の「ヘルシア緑茶」を、感覚的にモノとして考えるとどうでしょうか。何も言わずにこのお茶を飲んだら、「ただの苦めのお茶」です。このままでは売れません。そこに、コンセプトの3要素を付加してみます。「ただの苦めのお茶」が「ヘルシア緑茶」に変身します。
- ・ターゲット:中年太りを気にする男性
- ・ニーズ:体脂肪への効果
- ・差別化:権威ある機関のお墨付きのある成分を添加
みなさんが、具体的にコンセプトをまとめる練習をするために、もっとよい方法を紹介しておきます。次のようなコンセプトの構成要素を箇条書きに列挙すれば抜け漏れはなくなります。
- ・コンセプト-フレーズ
- ・企画背景
- ・ターゲット
- ・場所・シーン
- ・時間・時期
- ・使用目的
- ・機能・仕様
- ・価格
3.「目的展開」と「なぜなぜ展開」
図1に、問題や課題を定義し、目的展開(本質的な目的を探る法)となぜなぜ展開(根本原因を特定する方法)の基本的考え方を紹介します。
「なぜなぜ展開」とは、設定した問題に対して、なぜ?なぜ?を5回程度繰り返して根本原因を特定していく方法です。トヨタ生産方式の基本スキルとして有名です。
目的展開は、より広い視野で捉える、あるべき姿を目指した思考法です。反対に、なぜなぜ展開は、根本原因を追求する、改善を目的とした思考法です。言い換えると、前者が「恋人探し」で、後者が「犯人探し」になります。
図1 目的展開となぜなぜ展開
4.抽象化(目的展開)の実践法
図2で「文字を書く」を目的展開してみます。
文字を表示すること
目的展開は「抽象化(一般化)」だと述べましたが、どのように使うのかを図2に紹介します。目的展開とは、「~する」のように動詞表現する「機能展開」と同様の意味です。
② 文字を表示する目的は?
情報を表わすこと
③ 情報を表す目的は?
情報を伝えること
④ 情報を伝える目的は? 図2 目的展開(抽象化)の考え方
その時、意識的に上位の目的となるように記述していきます。各々の目的(機能)に対して、「手段は?」のように考えると、その目的を達成させる解決策が見つかります。図2の例では、「文字を書く」真の目的は、「情報を伝える」ということになります。
5.なぜなぜ展開の実践法
実際になぜなぜ展開を実行する前に、問題点を整理しておきます。データに基づいた現状説明、あるべき姿または改善目標値からのギャップをまとめます。次のように表現します。
① 今期の売り上げは、目標より20%低い
② 今回のソフトウェアの新規開発は、デザインレビューの予定より2ヶ月遅れている
③ この部門は、他部門と比べ、欠勤率が10%と高い
問題点の整理の後、発散しないように問題点を絞ってなぜなぜ展開を実施すると、根本原因がより明確になります。例えば、出勤率を向上させるための対応策を考えます。無断欠勤に問題点を絞ってなぜなぜ展開を実行してみましょう。
①なぜ、彼は無断欠勤したのか? 昨日、部員の前で彼を叱ったから
②なぜ、叱ったのか? 彼のミスが多かったから
④なぜ、ミスが多かったのか? 昨日、宴会で深酒したから
⑤なぜ、深酒したのか? 上司が認めてくれないから
⑥なぜ、上司は認めないのか? ...
6.琴線にふれたコンセプト創出の事例
もっと詳しく知りたい方は、「図解これで使えるTRIZ/USIT(日本能率協会)」または「SEのスピード発想術(技術評論社)」を薦めます。
図3 宅配便の事業コンセプト