設計開発部門の悩み 「設計工数の見える化」から始める業務改善(その1)

投稿日

 

1. 設計開発部門の悩み

 
 設計・開発部門(以下設計部門)は他部門から様々な要求を受けることが普通です。競争力のある商品(もちろん短期間で)、品質向上、コストダウン、営業部門の支援に至るまで、数え上げればキリがないでしょう。
 
 やることが多すぎて現状の人数では回らないというのが実情ではないでしょうか。人員増の要望が通る可能性もほとんどないため、人数を増やさずに品質向上やコストダウン等を実現させなければならないのです。
 
 しかし、設計の仕事は複雑かつ属人的であるため、業務改善は容易なことではないのです。何から手をつければよいのだろうと悩んでいる設計管理者も多いかもしれません。今回は「設計工数の見える化」から始める業務改善を解説します。
 
 

2. 「設計工数の見える化」の必要性

 
 筆者は「設計部門における未然防止・再発防止」というテーマでセミナー講師やコンサルティングを行っています。そのため受講者などに所属企業の諸事情をヒアリングさせて頂く機会が多いのです。そこで分かったことは、ほとんどの企業の設計部門が、設計工数を集計していないという事実です。すなわち、「設計工数の見える化」を行っていないということです。
 
 延べ100社以上にヒアリングを行いましたが、「設計工数の見える化」を実施している企業は1割以下でした。では「設計工数の見える化」の必要性について考えましょう。
 

(1) 品質の安定化

 
 限られた人数で多くの設計テーマを推進するためには、各設計テーマに適切な設計者、人数、期間、工数などを割り当てる必要があります。そのベースとなるのが設計工数の見積りです。見積りの精度が高ければ、特定の設計者・時期に設計負荷が集中することを避けることができます。
 
 負荷の平準化は設計者の集中力維持(=ポカミス防止)や、必要な検証や評価試験を意図的に実施しない「不正」を防ぐという点で非常に重要です。設計テーマでは想定外の不具合が発生したり、途中で要求事項が変わったりするなど、設計工数の見積りは簡単ではありません。しかし、見積り→設計工数集計→検証を繰り返すうちに、見積りスキルは向上していきます。
 
 逆に言えば、「設計工数の見える化」を実施しない限り、見積りスキルは決して向上しません。品質を安定させるためには、「設計工数の見える化」が不可欠なのです。
 

(2) テーマの優先順位付け

 
 以下の2テーマのうち、優先して実施すべきはどちらでしょうか。
 
表1. コストダウンテーマとその効果 設計
 
 表1だけで考えると、コストダウン効果が大きいテーマ①を優先すべきだと考えるでしょう。もちろんお分かりのように、これには設計工数すなわち設計者の人件費が考慮されていないのです。設計工数の見積りを表2のように考えた場合、コストダウン効果はテーマ②の方が大きくなるのです。
 
表2. 真のコストダウン効果
設計
 
 こんなことは当たり前だと思うかもしれません。しかし、前述したように、多くの企業が「設計工数の見える化」を実施していないのです。つまり、人件費も考慮した真のコストダウン効果が分からないまま、テーマを選定しているということになります。
 
 新商品開発、品質改善などでも同様です。テーマの優先順位を合理的に決めるためには、「設計工数の見える化」を避けることはできません。
 

(3) 設計部門の生産性向上

 
 多くの設計部門にとって、生産性向上は喫緊の課題です。生産性はアウトプット÷インプットで示されます。すなわち、少ないインプットで大きなアウトプット...
 

1. 設計開発部門の悩み

 
 設計・開発部門(以下設計部門)は他部門から様々な要求を受けることが普通です。競争力のある商品(もちろん短期間で)、品質向上、コストダウン、営業部門の支援に至るまで、数え上げればキリがないでしょう。
 
 やることが多すぎて現状の人数では回らないというのが実情ではないでしょうか。人員増の要望が通る可能性もほとんどないため、人数を増やさずに品質向上やコストダウン等を実現させなければならないのです。
 
 しかし、設計の仕事は複雑かつ属人的であるため、業務改善は容易なことではないのです。何から手をつければよいのだろうと悩んでいる設計管理者も多いかもしれません。今回は「設計工数の見える化」から始める業務改善を解説します。
 
 

2. 「設計工数の見える化」の必要性

 
 筆者は「設計部門における未然防止・再発防止」というテーマでセミナー講師やコンサルティングを行っています。そのため受講者などに所属企業の諸事情をヒアリングさせて頂く機会が多いのです。そこで分かったことは、ほとんどの企業の設計部門が、設計工数を集計していないという事実です。すなわち、「設計工数の見える化」を行っていないということです。
 
 延べ100社以上にヒアリングを行いましたが、「設計工数の見える化」を実施している企業は1割以下でした。では「設計工数の見える化」の必要性について考えましょう。
 

(1) 品質の安定化

 
 限られた人数で多くの設計テーマを推進するためには、各設計テーマに適切な設計者、人数、期間、工数などを割り当てる必要があります。そのベースとなるのが設計工数の見積りです。見積りの精度が高ければ、特定の設計者・時期に設計負荷が集中することを避けることができます。
 
 負荷の平準化は設計者の集中力維持(=ポカミス防止)や、必要な検証や評価試験を意図的に実施しない「不正」を防ぐという点で非常に重要です。設計テーマでは想定外の不具合が発生したり、途中で要求事項が変わったりするなど、設計工数の見積りは簡単ではありません。しかし、見積り→設計工数集計→検証を繰り返すうちに、見積りスキルは向上していきます。
 
 逆に言えば、「設計工数の見える化」を実施しない限り、見積りスキルは決して向上しません。品質を安定させるためには、「設計工数の見える化」が不可欠なのです。
 

(2) テーマの優先順位付け

 
 以下の2テーマのうち、優先して実施すべきはどちらでしょうか。
 
表1. コストダウンテーマとその効果 設計
 
 表1だけで考えると、コストダウン効果が大きいテーマ①を優先すべきだと考えるでしょう。もちろんお分かりのように、これには設計工数すなわち設計者の人件費が考慮されていないのです。設計工数の見積りを表2のように考えた場合、コストダウン効果はテーマ②の方が大きくなるのです。
 
表2. 真のコストダウン効果
設計
 
 こんなことは当たり前だと思うかもしれません。しかし、前述したように、多くの企業が「設計工数の見える化」を実施していないのです。つまり、人件費も考慮した真のコストダウン効果が分からないまま、テーマを選定しているということになります。
 
 新商品開発、品質改善などでも同様です。テーマの優先順位を合理的に決めるためには、「設計工数の見える化」を避けることはできません。
 

(3) 設計部門の生産性向上

 
 多くの設計部門にとって、生産性向上は喫緊の課題です。生産性はアウトプット÷インプットで示されます。すなわち、少ないインプットで大きなアウトプットが得られれば、生産性が高いということができます。
 
 生産性を向上させるためには、現状の生産性把握、目標とする生産性と達成時期の設定、施策の実行という流れで業務改善を進めていくはずです。そのためには、インプットとアウトプットの数値化が不可欠になります。
 
 アウトプットは設計部門の特徴・役割によって異なりますが、インプットは設計工数を指標にすることが自然です。つまり「設計工数の見える化」を実施しない限り、まともな生産性向上対策もできないということになります。
 
 次回も続いて解説します。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

田口 宏之

中小製造業の製品設計の仕組み作りをお手伝いします!これからの時代、製品設計力強化が中小製造業の勝ち残る数少ない選択肢の一つです。

中小製造業の製品設計の仕組み作りをお手伝いします!これからの時代、製品設計力強化が中小製造業の勝ち残る数少ない選択肢の一つです。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その184) 妄想とイノベーション創出

  ・見出しの番号は、前回からの連番です。 【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「技術マネジメント」に関するセミナーはこちら!...

  ・見出しの番号は、前回からの連番です。 【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「技術マネジメント」に関するセミナーはこちら!...


アイディア創出 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その88)

  ◆ アイディア創出は時間と場所を選ぶ  みなさんは新しいビジネスや開発テーマのアイディアを出す時、どんなことに気を付けていますか?私...

  ◆ アイディア創出は時間と場所を選ぶ  みなさんは新しいビジネスや開発テーマのアイディアを出す時、どんなことに気を付けていますか?私...


製品設計におけるトレードオフのコントロール(その1)

 製品設計におけるトレードオフのコントロールを、今回と次回の2回に分けて解説します。   1.トレードオフを意識しながら製品設計するとは  製品...

 製品設計におけるトレードオフのコントロールを、今回と次回の2回に分けて解説します。   1.トレードオフを意識しながら製品設計するとは  製品...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
R&Dの価値創造力を高めるシンプルツール、iMapとは、

 技術経営とは、「企業の経営資源である技術を経営戦略の中核に位置づけ、顧客価値の創造へ向けて、その獲得・強化・活用を戦略的に行うことにより、継続的な企業の...

 技術経営とは、「企業の経営資源である技術を経営戦略の中核に位置づけ、顧客価値の創造へ向けて、その獲得・強化・活用を戦略的に行うことにより、継続的な企業の...


海外と積極コミュニケートを!

 ものづくりの世界において、大企業の製品はもちろんのこと、海外Makersの新製品情報も早々に目に入ってくるようになりました。KickStarter等のク...

 ものづくりの世界において、大企業の製品はもちろんのこと、海外Makersの新製品情報も早々に目に入ってくるようになりました。KickStarter等のク...


‐企業内に発生している問題点を徹底的に追求 ‐  製品・技術開発力強化策の事例(その3)

 前回の事例その2に続いて解説します。企業内では解決が容易でない様々な問題が生じています。しかし、これらの問題解決に取り組まない限り、競争に勝つことが出来...

 前回の事例その2に続いて解説します。企業内では解決が容易でない様々な問題が生じています。しかし、これらの問題解決に取り組まない限り、競争に勝つことが出来...