事例 新QC七つ道具: アロー・ダイヤグラム法の使い方(その10)

 
【目次】
序論   ←掲載済
第1章  混沌解明とN7(新QC七つ道具)←掲載済
第2章  挑戦管理とN7の選択←掲載済
第3章  連関図法の使い方 ←掲載済
第4章  親和図法の使い方 ←掲載済 
第5章  マトリックス・データ(MD)解析法の使い方←掲載済
第6章  マトリックス図法の使い方←掲載済
第7章  系統図法の使い方←掲載済
第8章  アロー・ダイヤグラム法の使い方←今回
第9章  PDPC法の使い方←掲載済
第10章 PDCA-TC法の使い方←掲載済
 

第8章 アロー・ダイヤグラム法の使い方

 
 

8.5 事例に見るアロー・ダイヤグラム法の効用と使い方

 
 前回のその9に続いて解説します。
 

【事例説明1】多人数による生産準備作業の改善

 
 この事例は、「新QC七つ道具の企業への展開」(日科技連出版)に、筆者らの体験事例として紹介したものを、別の角度からまとめなおしたものです。
 

(1) 背景説明

 
 全長が80mある化学プラントの生産準備を10:30ラインスタート目標で12人が7:30から作業開始するのだが、10:30にスタートできる日は10%前後で、最大遅れは1時間半という状況の改善がテーマです。
 

(2) 改善経過の説明

 
 職場が険悪な雰囲気に包まれていた混沌状態は、約2カ月で脱したが、ラインスタート後のトラブル解消(次章の事例)も含め1年半かかりました。
 
 その間、10:30スタート100%達成にアロー・ダイヤグラム法がどのように貢献したかの経緯を、PDCA-TCにまとめたのが図8-4です。
 
  
図8-4 化学プラント準備作業改善PDCA-TC
 

※1 アロー・ダイヤグラム法が作業の全貌把握と計画立案を可能にした。

 
 2人作業、3人作業も含む65の作業を、12人に効率よく分担させるネットワーキングは至難を極めたが、2カ月後の第5版で、やっとCPタイムが176分となり、作業計画上で目標の180分を切ることができました。トラブル処理後の深夜からの作業ゆえ、担当係長が塗炭の苦しみを味わった上での快挙でした。
 

※2 第5版アロー・ダイヤグラムが明快で的確な作業指示を可能にした。

 
 この時点で、係長とリーダーが作業の全貌を的確に把握でき、指示が明快で的確になったといえます。すなわち、第5版は、“管理者用アロー・ダイヤグラム”といえる。達成率が42%にとどまったのは、作業者の理解不十分を物語っています。
 

※3 作業者の立場に立ったアロー・ダイヤグラムの作成。

 
 マン・タイムスケール・アロー・ダイヤグラムというのは、縦軸に作業者、横軸に時刻を配した(7:30~10:30を5分間隔で区切った)表の中で、第5版のネットワークから各作業を分解して作業者ごとに表示したもの(第6版)です。
 

※4 マン・タイムスケール表示が作業者による作業把握を可能にした。

 
 第6版のマン・タイムスケール表示により、作業者各人が、各自の作業を時刻管理できるようになったことが功を奏し、急ピッチで達成率が向上、100%となりました。すなわち、第6版は、“作業者用アロー・ダイヤグラム”といえます。
 

※5 マン・タイムスケール表示が係長を省力に向かわせた。

 
 作業密度の低さが歴然と分かるマン・タイムスケール・アロー・ダイヤグラムが、これ以上の時間短縮は不必要と知る係長を、省力計画に向かわせたといえます。
 

※6 有効な“隠し玉”こそ、管理者・スタッフの真骨頂。

 
 昼食時「2人減でよくやったなあ」と皆に声をかけたら「少々の無理をしても素人の応援は避けたかったので、渡りに舟だったのですよ」とご満悦でした。人手不足に限らず、やる気はあってもどうしたらよいか分からないとき、「こうすればよい」と “隠し玉”を示し得るのが、管理者・スタッフの真骨頂でしょう。
 

※7 手法は道具。使いにくかったら独自の工夫を加える気概が必要。

 
 オードリックスとは、日本能率協会のIEコンサルタントである門田武治氏のオリジナルによる「ライン作業や連合作業の効率化のためのデザインアプローチによる改善技法」でORDLIX(Organized Design for Line and Crew System)と書きます。その中で、具体的な改善を進める上での着眼点として提唱している、E(Eliminate:なくせないか)、C(Combine:統合できないか)、R(Rearrangement:組み替えができないか)、S(Simplify:簡素化できないか)の「ECRS」を紹介したところ、検討過程でA(Add:付け加えるものはないか)を独自に追...
加して成果に結びつけた係長のセンスには、大いに感心させられました。
 

※8 目標スタート時間遵守は100%になったが最終的な問題解決はPDPC法を必要とした。

 
 このラインの真の問題点はスタート後のトラブルであり、その解決にPDPC法をどのように活用したかは次章の9.4.2. Step 8で詳述します。
 
 次回は、アロー・ダイヤグラム法の使い方(その11) 事例説明2から解説を続けます。
 
【関連解説:新QC七つ道具】

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