第8章 アロー・ダイヤグラム法の使い方
8.4 挑戦計画立案のためのアロー・ダイヤグラム法の基本ステップ
8.4.2 挑戦計画立案のためのアロー・ダイヤグラム法の基本ステップ
前回のその4に続いて解説します。
Step 8:アロー・ダイヤグラム(Ⅰ)の作成
カードの仮止めが終わったところで、コピーしたものに結合点番号、作業カードの結線、ダミーの挿入、日程記入欄を記入して、この時点でのアロー・ダイヤグラムを完成させます。
作成担当はリーダーとし、要不測事態対応計画作成作業、外部関連作業、並行作業化可能作業などのマークに加え、要調査検討事項や作業の分割・統合・追加を必要とする作業とその理由などを、メンバーが見て分かるように記載します。
大変な作業ですが、このステップで諸確認を漏れなく行い、プロジェクトの全貌にち密な思考を重ねることにより、プロジェクトリーダーの責任感、達成意欲と自信が確固たるものになるので労を惜しまないことです。
【ポイント 1】結合点番号は先行結合点が後続結合点より小さいこと
作業カードの前(左)にあるのを“先行結合点”、後(右)にあるのを“後続結合点”と呼び、それぞれに与えられた結合点番号は、日程計算表などで作業を示すのに使います。すなわち、先行結合点番号が“3”で、後続結合点番号が“4”の作業は(3、4)のように表わすので、このルールがあると作業の前後関係が分かりやすくなります。
【ポイント 2】先行結合点番号が同じ作業は、後続結合点番号を共通にしてはいけない
これは、作業表示を(3、4)のようにするので、作業の区別がつかなくなるからです。このような場合は、合流する側の作業に後続点番号を新たに設けて、次に説明する“ダミー”で合流結線します。
【ポイント 3】後続結合点からの合流線は点線とし、これをダミーと呼ぶ。
これは、作業をカードで表わすアロー・ダイヤグラム法では特に必要ではないのですが、PERTでは大切なルールなので踏襲しています。というのは、PERTでは、作業を“アロー(→)”で表すことになっているので、先行作業が2つ以上のとき、メーン以外の後続結合点から後続作業に合流する矢線が実線だと作業との区別が紛わしくなるからです。そこで、そういった混同を避けるために合流線は“点線”とし、作業ではないという意味で“ダミー(dammy:ニセモノ)”と呼んでいます。
【ポイント 4】日程記入欄、余裕日数記入欄、作業所要日数などは下記要領で記入する
日程記入欄や余裕日数記入欄は、この段階ではまだ必要ないのですが、日程計算をした結果を記入するための欄で、前者の上段には“最早開始日程(ES:Earliest Start time)”を、下段には“最遅開始日程(LS:Latest Start time)”を、後者の左側には“全余裕日数(TF:Total Float)”を、右側には“自由余裕日数(FF:Free Float)”を記入します。
なお、日程記入欄のこの位置が結線などのため邪魔になるときは、結合点の下または、図8-1でいえば作業B側に寄せて書きます。
図8-1作業カード関連の説明
Step 9:抽出作業の総合チェック
アロー・ダイヤグラム(Ⅰ)を縮尺コピーして各部署に配布し、抽出作業のアロー・ダイヤグラム上でのチェックを総合的に行うステップで、リーダーが記載した内容に加えて、自職場担当の作業を中心に次のようなチェックを行い、次のミーティングに反映します。
- 先行作業の内容、タイミングなど確認事項と協力の可能性の有無。
- 後続作業の内容、タイミングなど確認事項と協力の可能性の有無。
- 担当作業遂行に力不足な点に対する対策と協力依頼事項。
- 日程短縮ニーズがあった場合の対応策。
- 以上の諸検討の結果生じる作業の追加・削除・分割・統合についてセクショナリズムを排除した提案。
【ポイント 1】プロジェクトの成功を第一義とした姿勢で検討すること
担当以外の作業内容に長けた人材を持っている場合は積極的な協力姿勢を示すなど、まずプロジェクトの成功を第一義とし、そのことによって生じる問題は、別途考えるといった姿勢が大切です。
【ポイント 2】日程に対する外的制約条件を把握しておく
PERTでは、次の3種類をあげています。
- 最早指定期日(Earliest Scheduled Date):外的制約(外注部品の入荷など)のため、この日からしか作業を開始できない。
- 最遅指定期日(Latest Scheduled Date):外的制約(工場移転など)のため、この日までに作業を終えていなければならない。
- 指定期日(Scheduled Date):外的制約(顧客の立会い指定日など)のため、その日、または、その期間に作業しなければ...